「本を読んだら放置すると…」読書の効果を最大化する“記憶の技術”
2021年03月09日 公開 2024年12月16日 更新
本の内容を忘れないだけでなく、応用できる
実際私も今までこの脳の性質を使ってたくさんアイデアを生んできました。これは心理学的にも正しいのです。このメカニズムを「レミニセンス現象」といいます。
皆さんは初めて自転車に乗れたときのことを覚えているでしょうか。たぶん一人で乗れるようになるまでは親などに後ろを持ってもらいながら練習したのではないでしょうか。
初めのうちは手を離された途端転ぶというパターンの繰り返しです。そういうことを毎日繰り返しているうちにある時、突然乗れるようになったのではないでしょうか。
なぜ急に乗れるようになったか分かりますか。たぶん、なぜだかは分からないけれどいつの間にか乗れるようになったというのが本音でしょう。
他にもスポーツをやっている方なら分かると思いますが、練習で何度やってもうまくいかないテクニックがあり、もうこのテクニックは自分には無理だなどと半ば諦めかけていると、あるとき何でこんなことができなかったかと思うくらいすんなりできる瞬間がやってきたりします。
楽器をやっている人もしかり。また勉強においても同様な現象が起こります。勉強すれどもさっぱり理解できなかったことがある日、まるで頭の中の霧が晴れたようによく理解できたりすることがあります。
レミニセンス現象とはこういった現象のことを指すのです。つまり学習したことが時間を経ることによって、その内容が高度化するという現象が起こり得るということです。
寝てる間も脳は働いている
練習したり学習したりすれどもなかなかすぐに成果が上がらない期間が必ずあります。その期間中というのは実は脳の中で情報を整理して利用できる形に整えている作業が行われている期間なのです。学習内容の熟成期間を経ることでその情報が単なる知識ではなく使える情報に生まれ変わることになるのです。
これも以前説明した記憶の仕組みによるものです。寝ている間に記憶が整理されてその後の学習を促進させたというわけです。
つまり学習したことがこのレミニセンス現象によって十分な効果を発揮するためにはある程度の時間が必要になるということなのです。直前に覚えた知識よりも、数日たった知識の方が整理されていて脳が使いやすい形に変わったということです。
さらに近年では、何もしていないぼうっとしている時間が実は脳にとっては重要なことであることが分かってきました。ぼうっとしている状態というのは頭が働いていないと思いがちですが、そんなときでも脳は働いているのだそうです。
その脳の状態をDMN(デフォルト・モード・ネットワーク)と呼びます。このDMNは先ほどの睡眠と同じく脳内の情報整理の機能を持っているそうです。
このDMNが働くことにより脳内の情報がきちんと整理されて蓄えられた情報同士が結びつきやすくなり、新しいアイデアが生まれるというメリットもあるようです。
これらの脳や心理学上の特性から本から得た情報もすぐに活かそうとするのではなく、覚えてから睡眠を挟んで数日たってからの方が、情報が熟成の過程を経て脳にとって利用しやすいものに変わるということなのです。
もし新しいアイデアが必要な場合は、本を読み終わった後に数日おいてみてください。するとある日突然ひらめきが起こるというわけです。脳の偉大さが分かる瞬間です。