「本を読んだら放置すると…」読書の効果を最大化する“記憶の技術”
2021年03月09日 公開 2024年12月16日 更新
本を読んでも、それをアウトプットにつなげることができなければ意味はありません。でも、読んでも内容をほとんど思い出せない人も多いはず。
内容を血肉にしたければ、読んだあとすぐに何かアクションを起こしてはいけません。ある種の意図的な「発酵」の段階が脳には必要なのです――『一度読むだけで忘れない読書術』を上梓した世界記憶力グランドマスターの称号を持つ池田義博氏はいう。日本記憶力選手権で6年連続日本一にも輝いた同氏に聞いた。
※本稿は池田義博著『一度読むだけで忘れない読書術』(SBクリエイティブ)より一部抜粋・編集したものです。
「何もしない」は読書に重要
ここで紹介する読書法を「ほったらかし読み」と名付けましょう。この「ほったらかし読み」、何をするかといえば、実は何もしません。
何もしないとはどういうことか。本を終わりまで読んだら一旦何もせずに放っておくということです。ただこの手法はオールマイティーというわけではありません。目的は限定されます。例えば実用書などから情報を得て、すぐにその具体的な方法などを使いたい場合にはこの手法は向いていません。
ではどんな目的にこの手法が向いているかといえば、その本が伝えているテーマや主張や考え方などを自分の中に取り込んで、その概念の枠組みを自分のものにしたい場合や、その本からヒントを得ることによって、オリジナルのアイデアを生み出したい場合などにこの手法は向いています。
しかしなぜ読み終えてすぐに何らかのアクションを起こしてはいけないのでしょうか。その方が記憶はフレッシュな状態なので効率がいいように思えます。
東大・京大で一番読まれた本として有名な『思考の整理学』の中で著者の外山滋比古氏はこの何もしないでおく状態のことを「発酵」という言葉で言い表しています。手に入れた情報は、すぐに利用するのではなくしばらく寝かせておく、つまり発酵させることにより、新たな価値を生み出すのだと説明しています。
論文のテーマを何にしていいのか分からないと相談に来た学生に対して、まずは何もなければ始まらないのでまずその種、つまり素材となりそうなものを参考文献からピックアップしなさいとアドバイスします。
ただその時点ではその素材はそのままテーマにはなり得ないというのです。その素材を自分のテーマとして昇華させるためには発酵が必要だというわけです。参考文献をただこつこつ読み続けているだけではいつまでたってもテーマにはならないと。
原本に対して内容を理解したとしても、すぐにその内容を利用しようとすれば新しいものは生まれない。そこで時間をおいて頭の中でその内容を寝かせることで脳がそれを消化し新しい価値を持ったものに変化するのだと外山氏は言います。
これと同じようなことは過去の識者たちも唱えてきました。よいアイデアを生み出すためには当初、一生懸命考えるという過程は必要であるけれど、脳に負荷をかけて必死に考えた後はしばらく放っておく。そうすることによって脳内である種の化学反応が起こり新たなアイデアというものが生まれるのだと。