1. PHPオンライン
  2. マネー
  3. コロナ禍も生き延びたラーメン店の「知られざる工夫」とは

マネー

コロナ禍も生き延びたラーメン店の「知られざる工夫」とは

藏本猛Jr(ラーメンプロデューサー・一般社団法人国際ラーメン協会代表)

2021年06月25日 公開 2021年07月05日 更新

コロナ禍も生き延びたラーメン店の「知られざる工夫」とは

新型コロナウイルスの流行という嵐に襲われた外食産業は、緊急事態宣言中は時短営業を強いられたり、衛生面を担保するための追加投資が必要になったり、何よりも客が激減するといった苦境に直面することになった。

しかし、このような状況でも「ラーメンプロデューサー」藏本猛Jr氏の元には、ラーメン店投資への問い合わせが相次ぎ、コロナ禍に開業した店はずっと黒字を続けているという。ラーメン店はコロナ禍をどう乗り切ったのか? また、コロナ禍にかかわらず、売れているラーメン店はどのような工夫をしているのか? その秘密を解き明かす。

※本稿は、藏本猛Jr著『400店以上を黒字に導いたプロが教える ラーメン店投資術』(PHPエディターズ・グループ)より一部抜粋・編集したものです。

 

外食がダメなら中食を

コロナ禍以前から、世界的な傾向として、自宅で調理をする内食が減少し、調理済み食品を購入する中食が増加していました。外食産業はゆるやかに成長を続けていましたが、コロナ禍によって現在、打撃を受けています(ワクチンの接種が進めば、再び成長曲線に戻るものと私は考えています)。

「今、外食が駄目なら、中食に活路を見出そう」と、テイクアウトや宅配に力を入れたラーメン店がたくさんありました。ウーバーイーツや出前館と契約したお店もありますし、近所に限って自分たちで宅配を始めたお店もあります。

これまで、ラーメンはテイクアウトや宅配とは相容れないものでした。なぜかといえば、運んでいる間に麺がスープを吸って伸びてしまうからです。しかし、新型コロナウイルスでお客様が外食を制限されたこともあり、ラーメン店はおいしさを保つ宅配方法を試行錯誤し始めました。

やはり繁盛するお店というのは、お客様ができるだけおいしく食べられるように、自分たちで独自に研究を重ねているものです。ラーメンの宅配が好評なお店は、麺とスープと具材とをすべて別々の容器に入れて、それらをお客様が電子レンジで温めてから混ぜ合わせる方式をとっていました。

また、容器にも無駄が出ないように、どんぶり型の容器に中ブタをつけて、一つの容器でも麺とスープと具材をバラバラに入れられるようにしていました。このやり方であれば、できたてほやほやとはいきませんが、宅配でもかなりおいしくラーメンを食べてもらうことができます。

私はこのやり方を、プロデュースしているラーメン店に伝えて、外食が制限されている状況下ですから、積極的にテイクアウトに力を入れるようにお願いしました。

その結果、いろいろな店舗がさらに研究を重ねてくれて、細かい改良アイデアがたくさん寄せられました。宅配ビジネスによって、コロナウイルスの流行で下がった売上が補われるようになり、多くのラーメン店が一息つきました。

もちろん、政府の支援もおおいに助けになりました。たとえば「Go To Eat」キャンペーン事業は、客単価の低いラーメン店にとっては大変な追い風になりました。また、朝にラーメンを食べる「朝ラー」を目論んで、早朝営業を始めたお店もあります

 

サイドメニューは「手間をかけずに無駄をなくす」

一人のお客様が支払う客単価を上げるためには、サイドメニューの充実も必要です。ラーメン自体は、トッピングをのせて高くしても1000円程度ですから、どう考えても薄利多売のビジネスです。

しかし、ここに餃子や唐揚げやビールやライスなどのサイドメニューが加われば、客単価が上がって投資効率を良くすることができます。サイドメニューのコツは、できるだけ手間をかけないことです。なんだかんだ言っても、ラーメン店の売りはラーメンそのものです。

メインのラーメンの出来が良ければ、お客様もサイドメニューには多くを求めません。そこで、ラーメンは適正な原価率でしっかりとおいしくしておいて、サイドメニューはできあいの加工食品に少し手を加える程度とし、利益を上げることが考えられます。

ラーメン店のサイドメニューといえば、餃子とチャーハンが人気です。私がプロデュースするラーメン店では、餃子は推奨していますが、チャーハンはオーナーさんのこだわりがない限り、メニューからは外しています。

というのも、餃子はラーメンを作りながら片手間で焼くことができますが、チャーハンを作るとなると、その間一人がずっとご飯を炒めなければならないので、人手が取られてしまうからです。

しかし最近は、自動チャーハン焼き器などを導入して提供する店舗が出てきています。性能も向上し、機械化してもおいしくできていますので、これを使うならチャーハンを提供してもよいでしょう。

また、豚肉のかたまり状態のチャーシューをラーメンにのせるために薄切りにしていくと、どうしても端の肉が余ります。形が悪くて、ラーメンにはのせられないからです。

このチャーシューの端肉は、細かく切ってサイドメニューとして提供することができます。そのまま「チャーシューのつまみ」としてもいいですし、ご飯にのせて「チャーシュー丼」にしてもよいでしょう。捨てずにサイドメニューとして活用することで、無駄をなくすことができるのです。

次のページ
スープの量がちょうどいい「どんぶりの形」

関連記事

×