「やりたいことがない」と悩む娘に母親が放った“意外な一言”
2021年09月03日 公開 2022年07月27日 更新
できないことはがんばらない
私にはできないことがいろいろある。というか、できないことのほうが圧倒的に多い。そして、がんばったところで、それらができるようになるとも思えない。できないことをがんばって、できるようになるのはすごいことだが、それでも、もともとできる人にはかなわないのが現実だと思っている。
たとえば、ピアノを弾けない人ががんばって練習して、血のにじむような努力の末に、ある程度うまく弾けるようになったとしても、生まれつきの天才ピアニストには絶対にかなわないだろう。もちろん、そこそこうまくなれればいいのであれば、がんばる意味はあると思うが、もし、その世界で一番になりたいのだとしたら、その凄まじいがんばりは報われないだろう。それは、すごく酷なことだ、と私は思う。
それならば、少ない努力でそこそこのものになれる道を選ぶほうが、無駄 な労力とストレスをかけずに生きられるのではないだろうか。できないことをがんばるよりも、少しでも自分が長けていること、得意なものに時間を費やすほうが、生き方としては効率がいいし、できないことを悲観せず、自己肯定感も得られて一石二鳥どころか、三鳥なんじゃないかと思う。
得意だと思えることがあまりなくても、あるけど大したものではないと思っていたとしても、「これしかできない」ではなく、「これならできるかも」と考え方を変えて、それを伸ばすことに意識を向けてみることをすすめたい。
同時に、その得意なことをどう生きる術に結びつけるか、平たくいえば、どうお金に換えられるのかということも考えることができたら、いまの時代ではよりベストなのかなと思う。
私自身はそこまで考えて行動していたわけではないけれど、結果論としては、ひとりでアフリカに行った経験が世の中ではめずらしいものとなって、それが徐々に価値となって、いろいろな仕事へとつながっていった。
たとえば、2021年現在のコロナ禍ではフォトグラファーとして思うように撮影はできなくなったが、そんな時期でも、アフリカでの経験をトークイベントで話すというような仕事が成立した。私の経験そのものが商品価値のあるコンテンツとなって、本業とはまた違ったカタチで展開していくことができたりする。
私はフォトグラファーとして、「唯一無二」と言ってもらえる機会があるのだが、それは決して写真の技術などによってではなく、単純にアフリカの奥地にひとりで行って、演出をかけて少数民族の写真を撮る人がほかにいなかったからだと思う。
自分の好きなことや得意なことを伸ばしつつ、その間の経験で自分が何を得ることができたのか。それにはどんな市場的価値があるのか。自分自身の体験や経験をどう「商品化」できるかを客観的に見つめてみることができたら、より生きやすくなる近道になるかもしれない。