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現代人の「物忘れの増加」は当然?...プロが指南する記憶力向上トレーニング

吉野邦昭(記憶力インストラクター)

2021年11月01日 公開 2024年12月16日 更新

 

16分割写真が記憶力アップに効果的なワケ

イギリス・ダラム大学のフィンドレー博士とブリストル大学のギルクリスト博士の研究によると、精細な視覚情報を取り込めるのは、視野5度程度と報告されています。

すなわち、目からパソコンや手に持った書類までの距離を45cmとすると、精細な視覚情報を取り込めるのは直径約8cmの範囲しかないということです。これは、A4サイズの紙だとわずか8%、全体の面積の13分の1になります。

そこで、私の記憶術セミナー受講生に、各コマが視野5度以下になるよう16分割した写真を、1コマずつ順に見るという実験に参加してもらいました。このとき、覚えるというよりも「注視する」ことに意識をしてもらいました。

その結果、実験に協力してくれた1082人のうち96.4%の人が「記憶力向上に何らかの効果を実感した」と回答しました。

これは、ここまで解説したように、記憶力がよくなったのではなく、記憶のプロセスに入る前に欠落していた情報を、「見る」という行動に意識を集中することで、記憶のプロセスに届くように躾けた結果なのです。

 

記憶力のみならず、プラスアルファの効果も

私たちの脳は、対象物に意識を集中しなければ、記憶や判断などの処理をすることができません。その、「対象物に意識を集中する」という行動への集中力を、16分割写真を1コマずつ見るクセづけでトレーニングしているのです。

これを業務に応用すると、パンフレットや書類の校正チェックだけでなく、お客様へのプレゼンや部下への指示・指導の際に、相手がきちんと資料を理解してくれているかの予想がつくようになります。

相手の目線が資料の上で静止せず、ダラーっと動いているだけだと、その資料から情報を取り込んでいないと推測できるわけです。そのような場合は、指で重要なポイントを指すことで、相手の目線を誘導すると良いでしょう。

また、日常生活においても、「方向音痴が治りました!」「掃除が上手になりました!」という報告が多数届いています。

方向音痴の人は、漫然と見て進んでいた街並みを、意識して分割して見ることで、従来はなんとなく「高いビルのある方向」程度の認識だったものを「○○ビルではなく□□ビルの方向」と認識できるようになったのです。

掃除が上手になりましたという方は、いわゆる机を丸く拭く、掃除機を丸くかける方だったのですが、「机や部屋に頭の中で分割線を引くクセがついて、隅まできちんと掃除できるようになった」とのことです。

このように、「記憶力」はもちろんのこと、業務や私生活面においても、自身が予想していない形で改善効果を実感できる、正に一石二鳥の効果をもたらしてくれます。

記憶力は、年齢に関係なく高められます。「自分は記憶力が悪いから」や「もう歳だから」など、記憶力に対して自信を持てない方も、諦めずに、まずは「記憶する」ということの捉え方を変えることからトライしてみてはいかがでしょうか?

 

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