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現代人の「物忘れの増加」は当然?...プロが指南する記憶力向上トレーニング

吉野邦昭(記憶力インストラクター)

2021年11月01日 公開 2024年12月16日 更新

現代人の「物忘れの増加」は当然?...プロが指南する記憶力向上トレーニング

思い出そうとしても、思い出せない…。「忘れてしまった」ということが増えていないだろうか?そんなとき、年齢のせいにしてしまいがちだが、記憶力インストラクターの吉野邦昭氏は、ITの発達によって、接する情報量が人間の処理能力を超えているからだと言う。

実は、「忘れてしまった」のではなく、情報過多のために集中力が分散してしまって、「覚えていない」のだ。脳のメカニズムと、その特性を活かした集中によって、記憶力を高める方法を聞いた。

※本稿は、吉野邦昭著『1日1分見るだけで記憶力がよくなるすごい写真』(SBクリエイティブ)より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

物忘れは、実は「そもそも覚えていない」が原因

人の顔と名前が一致しない。出掛けるときにカギやスマホが行方不明。出掛けてから、ガスの元栓を閉めたか、カギを掛けたかなどが不安になる。出先で傘やペンをよく失くす……。

このようなとき、多くの方は「物忘れがひどくなった」と思いますが、本当に「忘れて」しまったのでしょうか?

私の記憶法講座を受講する方にインタビューをしたり、行動分析をしたりすると、「忘れた」のではなく、「そもそも覚えていない」事例が多いことがわかります。

私たちは、五感を担当する感覚器――目(視覚)、耳(聴覚)、鼻(嗅覚)、舌(味覚)、皮膚・筋肉(触覚)を通じて外界からの情報を取り込みます。しかし、五感で感じたからといって、すべてを覚えられるわけではありません。

感覚器に入った情報は、神経を通って、それぞれの感覚器を担当する脳の部位に届きます。これを、「感覚記憶」といいます。

感覚記憶は、長くても数秒程度しか保持されません。その情報の一部が、海馬という短期記憶を担当している部位に届きます。

海馬の役割は、「長期記憶するかどうかを判断する」ことです。海馬は、ワーキングメモリーと力を合わせても、数秒から数時間程度しか記憶を保持できません。海馬で情報に重要度の重みづけがされて、長期記憶を担当する脳の各部位に情報が送られます。

例えば、見たモノの情報は目から脳に伝わりますが、意識していない情報だと短期記憶を担当する海馬に届かなかったり、海馬が重要度を低く判定したりしてしまいます。すると、長期記憶されなくなりますから、「そもそも覚えていない」という状況になるのです。

 

記憶力は「行動への集中力」

世界大学ランキング9年連続1位のMIT(マサチューセッツ工科大学)のポッター名誉教授の研究論文によると、画像情報を認識するためには0.1秒程度で十分だが、その情報を長期記憶に定着させるためにはさらに0.3秒かかると報告されています。

すなわち、何かを「見て覚える」ためには、最低でも0.4秒、注視しなければならないということです。

物忘れをしてしまったときに、「何で忘れてしまったのだろう」と思うかもしれませんが、実は、「行動への集中力」がなかったので、そもそも覚えていなかったのです。ダラーっと見ているだけでは感覚記憶止まりで、長期記憶に残らないということです。

2枚の絵を見比べて間違い探しをするクイズがありますが、このクイズが苦手な人は、往々にして全体をダラーっと見ている方が多いようです。まさに、認識すらできていないのです。

現代は、パソコンやスマホなどを通して、大量の情報がもたらされる時代です。それによって、人々の記憶が増えているかと言えば、そうではないでしょう。むしろ、「見たはずだけれども、思い出せない」ということが増えているのを実感されているのではないでしょうか。

それは、情報が多すぎて処理しきれず、集中力が散漫になることによって、かえって覚えられなくなっているからです。現代社会は、記憶力が低下する温床になっているのです。

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16分割写真が記憶力アップに効果的なワケ

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