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「空き家があったら住みたい」大塚寧々さんを虜にした“長屋”の正体

大塚寧々(女優)&畠山健二(作家)

2022年03月18日 公開

 

おけら長屋の住人は家族と同じ

【畠山】どんな時に「おけら長屋」を読まれますか?

【大塚】いつでも読んでいたいです。ベッドサイドに常備しています。

【畠山】ありがたいなあ。読者の方に意見や励ましをいただくことが、一番うれしい。プレッシャーもありますが、続けるモチベーションになります。大塚さんは、こういう話が読みたいとか希望はありますか。

【大塚】女性陣の活躍する話でしょうか。八五郎夫婦の娘・お糸ちゃんや、居酒屋の看板娘・お栄ちゃんがメインのお話が印象的で。14巻の「きれかけ」で、お糸ちゃんは幼馴染みにちょっと酷いことを言われたときも、本当は辛いだろうに優しく接していて。昔からのファンとしては、成長したなあってうれしくなりました。それから、お栄ちゃんの啖呵には痺れましたね。

【畠山】13巻の「ゆうぐれ」ですね。お栄も、最初はここまでのキャラクターに育つとは思っていなかった。今では、なくてはならない存在です。

【大塚】おけら長屋のおかみさんたちが井戸端で集まって、どやどやどやっと話すところなんて、すごくリアル! あの女同士の会話が本当に面白いです。

【畠山】女性にはずいぶんと振られましたから、気持ちがわかるのかもしれませんねえ。それに、「おけら長屋」は女性ファンが多いんです。とくにお染は、憧れ的な存在として人気だとか。

【大塚】私もお染さん、大好きです。

【畠山】ファンの中でよく話題になるのが、「映像化するなら、誰に演じてもらいたいか」らしいです。以前、知り合いから電話があって、近所の飲み屋でファンが鉄斎役は誰がいいかで揉めてるから来てくれと言われて。駆けつけて割って入ったら、「お前は黙ってろ!」って怒鳴られた。僕、原作者なんですけど……。

【大塚】あははは、面白い。

【畠山】みなさんに愛されて育ててもらって、もうこれ以外の作品は書かないかもしれません。書けるものなら一生、「おけら長屋」を書いていたいです。

【大塚】私も、100巻までとか読みたいです。

【畠山】ほかの作品を書いても、こんなに感情移入できないと思います。万松、鉄斎やお染は分身というか、家族と同じ。じつは今、20巻まで書いたらいったんお休みして、スピンオフで鉄斎が主役の話を書こうかとも考えています。

【大塚】お休み!? やめてください~、そんなの耐えられない! 「おけら長屋」が読めなくなったら、私、泣いちゃいます。

【畠山】スピンオフで、万松を旅に出してみたいなと思っていまして。二人では心配だから、鉄斎が付いていく。ただその前に、万造とお満には決着をつけようかと。

【大塚】ええっ! どうなるんですか? 結ばれるんですよね。

【畠山】それは、まだ言えません(笑)。20巻は少しインパクトのあることをしようかなと。

【大塚】毎巻、インパクトは十分です!! 私は、例えば嫌なことがあっても、「おけら長屋」を読めば、人間っていいなと思えるんです。世の中、捨てたもんじゃないと。パワーをもらえるんです。

【畠山】もし長屋の住人を不幸にしたら、抗議が殺到しそうだなあ……。僕も大塚さんにほめてもらえて、ガソリンが満タンになりました。また走り続けられそうです。三月二十五日に新刊が出ますので、ぜひ読んでください。

【大塚】もちろんです! 楽しみにしています。 

 

(大塚寧々)1968年生まれ、東京都出身。日本大学藝術学部写真学科卒業。『HERO』『Dr.コトー診療所』『おっさんずラブ』など数々の話題作に出演。2002年、映画『笑う蛙』などで第24回ヨコハマ映画祭助演女優賞、第57回毎日映画コンクール主演女優賞受賞。写真、陶芸、書道などにも造詣が深い。夫は俳優の田辺誠一。一児の母。

(畠山健二)1957年東京都目黒区生まれ。墨田区本所育ち。演芸の台本執筆や演出、週刊誌のコラム連載、ものかき塾での講師まで精力的に活動する。著書に『下町のオキテ』(講談社文庫)、『下町呑んだくれグルメ道』(河出文庫)、『超入門! 江戸を楽しむ古典落語』(PHP文庫)など多数。2012年『スプラッシュ マンション』(PHP研究所)で小説家デビュー。時代小説『本所おけら長屋』(PHP文芸文庫)が好評を博し、人気シリーズとなる。

 

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