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宇都宮徹壱 サッカー日本代表「終わりの始まり」

2018年06月06日 公開
2018年06月06日 更新

宇都宮徹壱(ノンフィクションライター)

「自分たちのサッカー」でW杯に挑んでよいか

6月15日(日本時間)に2018FIFAワールドカップロシア大会が開催される。日本は初戦の対コロンビア戦を19日に控えているが、5月30日のガーナとの親善試合では0-2で敗北するなど、西野朗監督率いる日本代表の前途は多難だ。ノンフィクションライターの宇都宮徹壱氏は、「西野ジャパン」をどう分析するのか。ハリルホジッチ氏解任騒動から振り返る。

※本記事は、『Voice』2018年6月号、宇都宮徹壱氏の「サッカー日本代表『終わりの始まり』」を抜粋、編集したものです。宇都宮氏の有料ウェブマガジン『宇都宮徹壱WM』はこちら

西野技術委員長(当時、左)が同席したハリルホジッチ監督の会見 ©tete_Utsunomiya

 

ツッコミどころ満載の会見

異変があったのは、4月8日の日曜日の夜。いきなり電話が鳴った。いつも仕事をしている、ニュースサイトの編集長からである。

たまたま視聴していた民放のニュース番組で「明日、日本サッカー協会(以下、JFA)でヴァイッド・ハリルホジッチ監督の去就に関する会見が行なわれる」と速報が入ったとのこと。「そちらで何か掴んでいますか?」という問い合わせであった。

もちろん、そんな心当たりなどない。W杯(ワールドカップ)の本大会まで、あと2カ月というタイミングで監督解任など、常識的には考えられないことであった。

とはいえ何やら胸騒ぎもするので、慌ててツイッターを確認すると、すでに私のタイムラインはこの件でざわついていた。明けて午前0時12分、ヤフーニュースで「電撃解任」の第一報が入る。しかし、テレビニュースはNHKをはじめまったく言及なし。JFAからのリリースもなかった。

結局、NHKで速報が入ったのは9日朝の7時17分のこと。すでにネット上では「ハリル解任」は既成事実となっていたが、その後もしばらくJFAのリリースはなし。これまで7人の代表監督の「去り際」を見届けてきたが、今回のように報道先行で正式リリースが遅れるケースは初めてである。

9日の16時、東京・御茶ノ水にて、田嶋幸三JFA会長による、ハリルホジッチ監督解任に関するメディア会見が行なわれた。多くの報道陣が詰めかけるなか、田嶋会長はあらためてハリルホジッチ監督の解任と、後任に技術委員長の西野朗氏が就任することを明らかにした。

田嶋会長の会見の要旨は、4つのポイントに集約される。

①解任を決断した理由は、3月にベルギーのリエージュで行なわれたマリ戦、ウクライナ戦において「選手とのコミュニケーションや信頼関係が多少薄れてきた」こと。

②上記の問題については、個人名は挙げなかったものの「直接、選手からも話を聞いたことがある」こと。

③後任監督に西野氏を選んだのは、技術委員長として「ハリルホジッチ監督を最後までサポートしてきた」から。

④その上で「1%でも、2%でも、W杯で勝つ可能性を追い求めていきたい」としている。

はっきりいって、ツッコミどころ満載の会見である。その理由は後述するとして、まずはハリルホジッチ氏が日本代表監督に就任した経緯から振り返ることにしたい。

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