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「やってはいけない」と言われてもやり続ける、中国の「お国柄」

2020年03月05日 公開

高口康太(ジャーナリスト)&西谷格(ノンフィクションライター)

西谷格 高口康太IT企業アリババがつくった近未来型ホテル

テクノロジーにより百花繚乱のサービスが成り立つ中国。しかし、私たちはデジタル消費の「現場」を知らない。また、新たな技術に対する「チャレンジ精神」は、日中のあいだで大きな違いがあった――。中国に精通する気鋭のジャーナリストと、体当たりルポを敢行したノンフィクションライターが語り尽くす。

本稿は月刊誌『Voice』2020年4月号、高口康太氏&西谷格氏の「デジタルチャイナは幸福か」より一部抜粋・編集したものです。

聞き手:大隅元(PHP研究所)

 

李白の時代から「吹いていた」中国人

――西谷さんの新刊『ルポ デジタルチャイナ体験記』(PHPビジネス新書)は、アリババが経営するデジタルホテルや無人コンビニなどに潜入調査。キャッシュレス社会が進む中国経済のリアルに迫るべく、文字どおり体を張った意欲作です。

【高口】 デジタル消費の現場が丁寧に描かれていて、とても楽しく読みました。

【西谷】 高口さんをはじめ現場を見ている中国ウォッチャーには「周知の事実」かもしれませんが、多くの日本人は現在の中国において、アリペイやウィーチャットなどを使ったキャッシュレス決済がこんなにも普及しているとは想像できないかもしれません。

じつは、ここ数年のデジタル化のスピードに驚いているのは、当の中国人も同じです。

本書でレポートしましたが、国内の無人店舗をめぐる「デジタルショップツアー」なるものが人気を博したり、「シェア○○」と付けて“いまっぽさ”を演出したサービスが多く生まれたりしている。もちろん、玉石混交ではあるのですが……。

【高口】 その点、本書は賞賛だけでなく、「このサービス、イマイチじゃないか?」と正直に書かれている。まさしく嘘偽りのないルポですね。

【西谷】 現地に足を運ぶと、「すごい!」と思うサービスもあれば、その逆で粗が目立つものもありました。日本のニュースにもとり上げられている「無人コンビニ」は、じつは開店休業状態の店も少なくない。

書店に設置されている「顔認証ゲート」は、出入りから会計まで顔認証で管理できるとして導入されましたが、マシンの反応が悪く、結局は人の手が必要でした。

【高口】 私もときどき「デジタル先進国・中国の最新事例についてレクチャーしてください」と言われますが、やや違和感を抱きます。

「いや、そんなにスゴイものばかりじゃないぞ」とツッコミを入れたくなることもありますよね(笑)。

【西谷】 感覚の差が生まれるのは、日本だと中国に関するニュースが決まって大げさに報じられてしまうからかもしれませんね。

そもそも、中国では物事を大きく言う傾向があって、その「吹いた」発言を日本のメディアが拡大解釈して伝えてしまう。かつて話題になった中国食品の危険性や「反日デモ」にしたって、言い過ぎと思える記事は少なからずありました。

【高口】 「白髪三千丈」(唐代の詩人・李白の五言絶句「秋浦歌」第一五首の冒頭の一句。長年の憂いが重なって白髪が異常に長く伸びるさまを誇張した故事)という言葉もありますからね。

これは良し悪しの問題ではなく、背景には、メンツを保つためだけではなく、ビジネス戦略の意味合いもある。「自分たちは最先端のビジネスを押さえている」とアピールすることで、内外からの投資を得やすくなるのです。

【西谷】 たしかに、採用面接から日常会話まで、中国では過度な自己アピールをする傾向がありますね。

私も中国で取材をするときには、意識のチャンネルを切り替えることがあります。「このメディアは日本一なんです!」と言って、インタビューをとり付けたり(笑)。

【高口】 そういった「お国柄」を理解していないと、中国からのプレスリリースを見て、安易に「すごいことが起きているぞ!」と目を奪われてしまうのです。

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