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無印良品が取り組む「産地直送」...地域との関わりを持ち続ける意味

長田英知(良品計画執行役員)

2022年12月06日 公開

 

諸国良品で取り扱っている商品群

諸国良品で取り扱っている数多くの商品の中から1点ご紹介をさせて頂きたいと思います。まずご紹介したいのは、柑橘を栽培されている増田農園です。この農園が所在する伊方町瀬戸地区は海に面しており、潮風があたる段々畑で太陽の光を目一杯あびて育てられています。

海に面しているということは、海からの強風も同時に受けるということでもあります。

防風垣は設置されているものの、特に厳しい冬の季節風から柑橘果実を守ることは難しいため、果実が実っている枝を1本ずつ紐で誘引して、果実が枝に当たって痛まないような工程を手掛けられています。この誘引紐の長さはなんと全長10㎞にもなるそうです。

また果実が鳥に食べられないようにする工夫として、増田農園では実の一つずつに袋をかけるという手間をとっています。袋掛けする果実は毎年約10万個。この作業だけで約一か月間かかるといいます。

さらに収穫の際には、1つずつ目と手で成熟度合いを確認した上で出荷を行っています。果実に傷をつけないために選果機などの機械も使用せず、最後まで徹底した手作業による行程を経て、消費者の方々へ届けているのです。

そして増田農園さんのさらにすごいところは、数年間の試行錯誤を繰り返した結果、独自の超長期鮮度維持技術を開発したということです。これにより今では夏場でも生の果実をお届けできるようになっているのです。

また最近では季節の果物を単にECサイトで販売するのではなく、自治体と連携してプロモーションするような取組も開始しています。

ちなみに今年は長野県と連携して、新品種のぶどうであるクイーンルージュを使ったカクテルメニューを3種類開発し、MUJI Hotel GINZAに併設するバーで提供するという試みも行っています。

 

地域への土着化を目指す

無印良品は、土着化というキーワードのもとに、地域の暮らしに深く携わっていくことを目指しています。都市生活者にとって、生産現場である畑や農場、漁場は遠い存在となり、商品は単に消費されるだけのものとなりました。

多くの人々は生産者を知らず、それらを育んだ大地も海も知りません。諸国良品は、都市の生活者の眼にこれまで届いていなかった商品に光を当てて、その生産の背景を丁寧に説明していくことで、生産者や生産現場と自身との関係を再度見つめなおすきっかけを作りたいと考えています。

 

【著者紹介】長田英知(ながた・ひでとも)
東京大学法学部卒業。地方議員を経て、IBMビジネスコンサルティングサービス、PwC等で政府・自治体向けコンサルティングに従事。2016年、Airbnb Japanに入社。日本におけるホームシェア事業の立上げを担う。2022年4月、良品計画に入社。同年9月よりソーシャルグッド事業部担当執行役員に就任。社外役職として、グッドデザイン賞審査委員(2018~2021)、京都芸術大学客員教授(2019~)等。著書に『たいていのことは100日あれば、うまくいく』(PHP研究所)、『ワ―ケーションの教科書 創造性と生産性を最大化する「新しい働き方」』(KADOKAWA)などがある。

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