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心理学者が教える「優秀な若手が勝手に育つ」チームの作り方

渋谷昌三(目白大学名誉教授)

2023年01月17日 公開

 

結果だけではなく、プロセスも重視する

部下が伸び悩んでいるときには、部下に「自己効力感」を持たせるような言葉をかけてあげることも有効です。

心理学でいう自己効力感とは、「自分はある結果を生み出すために必要な行動をうまくとれる」という実感を持つことです。一般的な言葉でいえば、「自分なら、やればできるだろう」という気持ちを持っているということです。

効力感を持っている人は、自分が努力すれば、さらに好ましい結果が出てくるという確信を持っているため、仕事に対して積極的です。

反対に、効力感を持っていない人は、「何をやってもムダ」「どうせ自分にはできない」と思ってしまって、無気力であきらめの気持ちを抱いています。

効力感を持っている人と、持っていない人では、仕事に対する張り合いや意欲が違っているため、さらに大きな差がついてきます。

リーダーは、部下が効力感を持てるように工夫をしてあげることが必要だといえます。

効力感を持たせるためには、「やればできる」という自信をつけさせてあげることです。どんな分野でもいいですから、「できる」という実感を持たせることが重要です。

新入社員や若手社員には、リーダーが「君ならできるよ」と何度も声をかけてあげることも心理的な支えとなります。

それでも、最終的に何か結果が出てこないと、本当に自信を持ってもらうことはできません。ですから、若手社員には、簡単なことでもいいですから、ともかく、何かをやらせてみて結果を出させましょう。

そのようにしていけば、自信もついてきて、「もっと努力すれば、もっとできる」という気持ちになってくれるはずです。

それでも、どうしても結果を出せない部下に対しては、プロセスをきちんと見てあげて、ノウハウを教えたり、知識を教えたりして、できるようになるまでじっくりとサポートしてあげることも、効力感を高めるために大切なことです。

 

新入社員には「次の目的地」を示す

新入社員たちは、新しい職場に入って4月のうちはとても緊張しています。が、一生懸命に職場に適応しようと頑張りすぎて、フッと緊張感が抜けたころに、意欲が失われてしまうことがあります。

これは、重い荷物を運んで、目的地に着き、荷物を下ろして一息入れたときに立ち上がれなくなる現象と似ていることから、「荷下ろし症候群」と呼ばれています。

また、新入社員の場合は、5月ごろに、このような症状になる人が多いことから、「五月病」と呼ばれることもあります。

新入社員は入社前、ずっと慣れない就職活動を続けてきています。知らない人の前で自分を上手にアピールしなければならないため、緊張の連続だったはずです。また、会社に入ると、学生時代とはまったく違った環境になります。

服装、挨拶、マナーなど基本的なことを教えられ、連日、業務研修も行われます。そのような緊張が続いた状態から、少し会社に慣れ始めて余裕が出てくると、目標喪失感が生まれて、無力感を抱いたり、出社拒否をしたりするのです。

荷下ろし症候群のサインとしては、寝付きが悪くなり、新聞やテレビを見る気がしなくなるということが挙げられています。

新入社員が入ってきたら、誰もが荷下ろし症候群になる可能性があると仮定して、4月のうちから対策をとっておくことが必要です。

「あこがれの会社に入る」あるいは「就職する」という目標は達成されてしまったのですから、その次の目標が持てるように、リーダーは、新入社員の夢ややりたいことをじっくりと聞いてあげましょう。

「この会社ではどういうことがやってみたいの?」と聞いて、「それはいいね。うちの会社なら、それができるよ」と言ってあげたり、実際にその仕事をしている先輩と話をさせてあげるなど、会社内でのあこがれや目標を持てるように支援をしてあげると効果的です。

新入社員の定着率が低い今の時代には、特にこうした配慮が必要といえます。

 

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