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「厄年」の起源は平安時代? 人生の転機を示す先人たちの知恵

マーク・矢崎(日本占術協会認定占術士/日本占術協会理事)

2023年03月22日 公開 2024年12月16日 更新

 

世界各国の厄年、厄落とし

厄年は、もともと仏教と共に入って来た考え方で、仏教国であるタイや中国にも厄年や、厄除けのような風習がある。

たとえば、タイでは9歳、19歳、29歳のように9のつく年が厄年とされている。それとは別に、25歳が大厄のような、特別に気をつけなくてはならない年とされ、仏教寺院で八種類のお供え物をして、厳格な厄除けの儀式を受ける。

中国の厄年は、12年周期で訪れる。日本では年男とか年女と呼ばれるような、めでたい、生まれ年と同じ干支の年が厄年(!)とされている。

厄年の人はその年の1年間、厄除けの意味で赤い下着や服を身にまとい、金ピカのアクセサリーを身につける。また春節のお祝いの1週間は、赤い衣をまとって家に閉じ籠り、新年を迎える行事に参加できない。

これはお正月を二度して、厄年を早く終わらせようとする日本の考え方と同じように、春節の祝いをしないことで、厄年を迎えないという意味があるように思う。

おもしろいことに厄年は、仏教国ではないトルコやエジプト、そしてヨーロッパ各地にもあり、厄落としのような風習も行われている。

たとえばトルコの厄年は、3のつく年で、女性は13歳、33歳、53歳。男性は23歳、43歳、63歳とされ、厄年の人は、自分の身につけていた服を身代わりの泥人形に着せて、その人形を誰かに頼んで川に流してもらう。これは身代わりを使った厄落としの風習だ。

エジプトでは4歳から4年ごとに48歳まで厄年があるとされ、厄年になると、近所の老人を訪ねて古い布をもらい、それを縫いつなげて長い布にして、厄年の間、その布を身に巻きつけるという風習がある。

これは厄をみんなで分けて、災厄を小さくする、という日本の風習と同じ考え方。もらった布を長く縫いつなぎ身に巻きつけるのも、厄年の人にネクタイやスカーフなどの長いものを送る日本の習慣とよく似ていて、とても興味深い風習だ。

キリスト教国であるイギリスでは、男性は4のつく年、女性は7のつく年を厄年とされ、厄落としには、イギリスのシンボルツリーであるオークの実や、オークアップルと呼ばれる虫こぶを年の数だけ集めて、三日三晩、軒下につるす。

そのあと、ご近所の人たちを集めてそのオークの実や虫こぶを庭先で燃やすのだ。たくさんの人に見てもらうほど、厄落としの効果が強いとされ、厄をみんなで分けて小さくするという風習なのだ。

スペインでは、女性は14歳と34歳、男性は24歳と44歳が厄年とされ、厄落としには、家族や友人の見守る中で、年の数だけ調理した馬肉を食べる。

そのあと一昼夜、眠らずに踊り明かすとされている。見届ける人たちにもご馳走が振る舞われ、パーティーが繰り広げられるので、これもご馳走を振舞い、厄をみんなで分けて小さくするという、日本の厄落としと共通した考え方。

人種や文化は違っていても、厄年や厄落としの考え方は、万国共通。厄年は、人が健康で幸せな人生を強く生き抜くための、先人の残してくれた知恵なのではないだろうか。

 

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