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血判状を持った社員が押しかけ...稲盛和夫の「アメーバ経営」が生まれた背景

大賀康史(フライヤーCEO)

2023年03月09日 公開 2024年12月16日 更新

ビジネス書を中心に1冊10分で読める本の要約をお届けしているサービス「flier(フライヤー)」(https://www.flierinc.com/)。
こちらで紹介している本の中から、特にワンランク上のビジネスパーソンを目指す方に読んでほしい一冊を、CEOの大賀康史がチョイスします。

今回、紹介するのは『アメーバ経営』(稲盛 和夫 著、日経BP・日本経済新聞出版)。この本がビジネスパーソンにとってどう重要なのか。何を学ぶべきなのか。詳細に解説する。

 

アメーバ経営の目的

改めて説明する必要はないでしょう。著者は、松下幸之助と並んで経営の神様として尊敬を集め、昨年他界された稲盛和夫です。

京セラらしさを代表する、そしてKDDIやJALにも活かされた「アメーバ経営」を詳しく解説した本書は、様々な類似のコンセプトの経営理論が生み出された今でも存在感があります。

2006年に出版されて以降、文庫化などの変遷を経て、数あるビジネス書の中の定番となり、多くの方に読まれています。

「アメーバ経営」は、長年の苦労をもとに独自で築き上げられ、京セラの高収益経営の根幹をなすものなので公開するべきではない、という意見も社内にあったようです。

それでも「日本経済の発展のために」という使命感によって、本にまとめられたといいます。

「アメーバ経営」とは、まさに生物のアメーバのように、細分化した組織が自律的かつ柔軟に形を変えて、細胞分裂を繰り返して広がっていく様子をイメージされた言葉です。

まず初めに「アメーバ経営」の目的について紹介します。本書の該当の部分を引用します。

第1の目的 「市場に直結した部門別採算制度の確立」
第2の目的 「経営者意識を持つ人材の育成」
第3の目的 「全員参加経営の実現」

私はこの中でも第2と第3の目的に稲盛さんの願いが込められていると感じます。多くの人がリーダーとなってまず感じることは、スタッフとして関わっていたときと全く違う次元のコミットメントが求められるということではないでしょうか。

特に著者は全身全霊で経営をされた方なので、きっと周りのメンバーにも同じような気持ちで働いてもらいたいと考えられていたように想像します。「アメーバ経営」の基となる思想を抱かれた背景から紹介していきます。

 

アメーバ経営考案の背景

京セラを創業して2年目、採用した新入社員10人から、彼らがやっと仕事を覚えてきたころに、血判状を作り最低いくらの昇給とボーナスを将来にわたり保証せよ、という要求があったそうです。

話し合いは著者の自宅にまで持ち込まれ、三日三晩続いたといいます。稲盛さんが経営者としての覚悟を伝え、ようやく従業員は納得したものの、会社を運営する使命について深く考える契機となりました。

技術者の夢の実現のために立ち上げた会社に入社する社員は、人生をかけていました。第1に従業員の幸せを目指すと考えを固めて、京セラの経営理念を「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、人類、社会の進歩発展に貢献すること」と定めました。

その後、社員が数百名になったころ、著者自身がほぼ全てを一人で見ていたことに限界を感じて、すべての従業員が経営に参画できる仕組みとして「時間当たり採算表」を考案しました。

この表は端的に言えば、緻密に導き出される部門別損益により、アメーバ内の社員1時間当たりの付加価値を最重要KPIとして経営を行う仕組みとなっています。

リーダーを責任者として「時間当たり採算表」を10名前後からなるアメーバごとに持って運営します。現場のメンバーにもこの表が開示され、簡単に理解できることから、全員参加型になりやすいという特長があります。

そしてリーダーは経営者と似た役割を担うため、経営者育成に活かしやすい面もあります。実際に危機に直面した著者が考案して、長い年月をかけて磨き上げられてきたこの仕組みは、京セラの躍進の土台になっていきました。

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前提となる3条件

著者紹介

フライヤー(flier)

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