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しんどいけど自由...「フリーの温泉ライター」を生業にする人のリアル

高橋一喜(温泉ライター)

2023年09月05日 公開 2024年12月16日 更新


(画像はイメージです)

温泉の魅力にハマったことをきっかけに、「温泉めぐりをしたい」という思いで退職に踏み切った高橋一喜さん。現在では温泉ライターとしてフリーランスで活動されています。世間ではまだまだ「稼ぐのが難しい」という印象が強いフリーランスですが、実態はどうなのでしょうか。高橋さんが語ります。

※本稿は、高橋一喜著『こだわるから、とらわれない—温泉が教えてくれた心地いい生き方—』(ICE[インプレス])より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

フリーランスという生き方

終身雇用や年功序列といった日本的経営が崩れた今、ずっとひとつの会社で働くケースは少数派になる可能性がある。転職は当たり前だし、場合によっては、自ら起業したり、フリーランスとして独立したりといった選択肢もある。

もはや会社員だからといって、一生安泰だと安穏としてはいられない。そう意味では、会社員であってもフリーランスと同じような覚悟をもって働く必要がある。

人生100年時代を世に知らしめた『ライフシフト』(東洋経済新報社)の著者であるリンダ・グラットンが提唱するのが「マルチ・ステージ」というモデルだ。

20歳前後で社会に出てからは会社勤め、フリーランス、学び直し、副業・兼業、起業、ボランティアなど、さまざまなステージを並行・移行しながら生涯現役であり続けるというモデルだ。

これまでのように、学校を卒業後、ひとつの会社に定年まで勤めて、残りの老後を過ごす、つまり「教育→仕事→引退」という単線的なモデルは過去のものになろうとしている。いまや誰もがフリーランスとして働く可能性がある、ということだ。

あらためてフリーランスについて説明しておこう。

会社や団体などに所属せず、仕事に応じて自由に契約する働き方のことだ。2020年に内閣官房日本経済再生総合事務局が発表した「フリーランス実態調査結果」によると、日本のフリーランス人口は約462万人。アメリカはフリーランスで働く人が多く、労働者全体の36%、5900万人がフリーランスとして働いているといわれる(2021年)。

近年、日本でも注目されている「ジョブ型雇用」は、企業が人材を採用する際に従業員に対して職務内容を明確に定義して雇用契約を結ぶもので、これまでの日本企業が「人に仕事をつける」雇用体系だとすれば、ジョブ型雇用は「仕事に人をつける」ということができる。ジョブ型が当たり前になれば、専門性をもったフリーランスが活躍する場も広がると予想される。

私が3016湯の旅を終えて、フリーランスとして働き始めた頃は、今ほど市民権を得ていなかったと思う。もちろん、フリーランス的な働き方をしている自営業はいたが、フリーランスという言葉は浸透していなかった。

会社を辞めたときに、年金や保険の手続きで役所を訪れたときのこと。窓口の年配の職員さんに「職業は?」と尋ねられた。「フリーランスです」と答えたところ、「はっ?」という怪訝な顔をされたので、具体的に「フリーライターです」と言い直したところ、「フリーターですね?」と職員さん。

それくらいフリーランスという働き方は、世間的に認知度が低かった。親にも「フリーランスって、フリーなんでしょう。そんなので食べていけるの?」とへんてこな心配をされたものだ。

 

「何を重視するか」で選択する

フリーランスとは、雇用関係を持たずに個人で仕事を請け負う働き方を指す。その名の通り、フリー(自由)な働き方ができる立場だ。

自分のやりたい仕事や得意な仕事に絞って請け負うこともできるし、本当にイヤな仕事であれば断ることもできる。実際、私も「この人とは相性が悪い」「この分野は不得手だ」という仕事は、もっともらしい理由をつけてお断りしたこともある。

そういう意味では「自由」な立場である。「好きなように仕事ができていいね」と言われることもある。

たしかに自由な面もあるが、その半面、責任をともなう。受けた仕事は責任をもってやり遂げないといけないし、そもそも仕事を獲得できなければ収入を得ることができない。稼げるかどうかは、自分の腕しだいである。病気やケガで働けなくなれば、会社員と違って、何の保証もない。健康管理もきちんとしなければならない。

15年間フリーランスの立場で活動してきた経験からいえば、正直しんどい。自由でラクな面もあるが、それ以上にのしかかるプレッシャーも大きい。会社員とフリーランスのどちらがよいかは個人差があると思うが、どちらも経験した立場からいえば、どちらも苦労は絶えない、ということだ。

会社から独立して、起業したりフリーランスになったりすれば、すべてうまくいくというのは過度な期待で、幻想にすぎない。それが現実だ。

大切なのは、何を重視するか。

私の場合は、組織に依存せずに、個人の自由を担保することを重視している。だから、仕事がたてこんでも不満はないし、孤独にも耐えられる。

反対に、チームで仕事をすることに喜びを感じたり、安定感などを重視したりするなら会社で働くという選択をしたほうが幸せだろう。

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