今日、職場で何回人と雑談をしましたか?
日本人は世界でも特に「幸福感が低い」ことで有名ですが、この大きな要因のひとつが、「人とのつながり」の希薄化です。また、幸福感や健康を決定づける第一の要因は、お金でも仕事でもなく、「人とのつながり」であることもわかっています。
つながりがあるかどうかは、心臓病やがんの予後、血糖値、肥満度にまで影響を与えます。職場でのつながりや地域社会でのつながりがますます希薄化しているのは問題です。
つながりのための雑談は必ずしも上手に話す必要はなく、単に話してみるかどうかです。話しかけるという行動を起こすだけで幸福度は大きく変わり得ます。
シカゴ大学のニコラス・エプレイは、イリノイ州のホームウッド駅を利用している通勤客97名にお願いして実験に参加してもらいました。エプレイは、通勤中に知らない人に「近所の人と話をするように」話しかけるようお願いしました。
目的地の駅に着いたところで結果を尋ねてみると、知らない人に話しかけても、平均して14.2分と割と長く話せて、「とても楽しく会話できた」と答え、「幸せで気持ちがよかった」と言ったのです。
また、心理学者の内藤誼人氏は次のように述べています。
「スーパーやデパートで買い物をするときには、レジ係の人に、『ここのお惣菜って、本当においしいんですよね』と一言だけ話しかけます。いきなり話しかけられてビックリする店員さんもいるかもしれませんが、たいていは笑顔を見せて、『ありがとうございます』などと返事をしてくれます。
友人などいなくとも、知らない人と、ちょこちょこと話すようにすれば、それで十分です。別に友人をつくろうとしなくとも、軽いコミュニケーションを意識してぜひあなたもトライをしてみてください。きっといつもと違う気分を感じることができるはずですから」。
(「スーパーのレジ係と話すだけで十分幸福度は高まる」プレジデントオンライン2023.4.8)
職場においても、業務上の話をするだけではなかなかつながりはできません。プライベートにかかわるような話をしてはじめて相手の人となりがわかり、つながりができるのです。
そう考えると、雑談力を磨くことはビジネス上のメリットに留まらず、幸福度を高めることにつながるということに気づきます。一日の活動時間のうちの大半をすごす職場だからこそ、そこでのつながりは幸福度や健康を大きく左右するのです。
【相原孝夫 (あいはら・たかお) 】
人事・組織コンサルタント、作家。株式会社HRアドバンテージ代表取締役社長。早稲田大学大学院社会科学研究科博士前期課程修了。マーサージャパン株式会社代表取締役副社長を経て現職。コンピテンシーにもとづく人材の評価・選抜・育成および組織開発に関わる企業支援を専門とする。 職場で他者の模範となり、継続的に高い成果をあげている人材である、ハイパフォーマーへのインタビューを30年以上続けており、これまで延べ3,000人以上を調査・分析している。 著書に『人望が集まるリーダーの話し方』(かんき出版)ほか多数。