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医師が考える「悔いがない最期」を迎える人の60代からの心がけ

和田秀樹(精神科医)

2023年12月07日 公開 2024年12月16日 更新

60代を迎えて体の不調が徐々に出現し、残りの人生を消化試合のように考えている人がいます。しかし、悔いの残らない人生を送るには「やりたいこと」に思いっきり注力することが重要なのです。和田秀樹さんが60歳からの生き方について語ります。

※本稿は、和田秀樹著『60歳からは、「これ」しかやらない』(PHP研究所)より、一部を抜粋・編集したものです。

 

お金は、使わないほうがもったいない

日本人は昔から、好きなことにお金を使うことを、悪いことのように思う傾向があるようです。きちんと節約して、蓄えに回すことを美徳とする考え方です。若いころならば、それも必要でしょう。自分自身が生活していく資金や、子どもを養っていく資金に備えていかなくてはならないからです。

しかし、60歳を過ぎれば、もうその責任を負う必要はありません。にもかかわらず、高齢者の財布の紐は、必要以上に固いようです。

2023年9月に日銀が発表した「資金循環統計」によると、同年6月末時点での個人金融資産は約2115兆円と、過去最高を記録したそうです。日本人の個人金融資産は年々増えていますが、うち6割を、60歳以上の高齢者が持っていると言われます。

お金は、本当に貯め込むばかりでいいのでしょうか?

60歳を過ぎたら、お金に対する考え方を変えてほしいと思います。お金は、持っているより、使うことに価値があります。頭も体もしっかりしているうちに使わないと、人生を楽しめません。

人生の残り時間は、おそらく向こう数十年。頭と体がしっかりしている時間は何年あるかわかりませんが、限りある時間であることは確かです。その時間を楽しんで、味わって過ごさないほうが、はるかに「もったいない」のではないでしょうか。

 

貯蓄は1500万円程度あれば十分

高齢者の医療に携わっているとわかることですが、頭と体が動かなくなってからは、使うお金が減ります。寝たきりや認知症になれば移動が難しくなりますから、外に出てお金を使う機会が少なくなるのです。

ですから、体が動くうちにお金を使って、少々資産が減っても問題ありません。

とはいえ、一文無ではさすがに心配でしょう。では、最低限、どれくらい貯めておけばいいのでしょうか。ジャーナリストの荻原博子さんと対談した際に、おっしゃっていた目安を紹介しましょう。

介護を受けている人にかかった費用の総計は、平均約600万円だそうです。とすると、夫婦二人で1200万円あれば大丈夫です。医療費は、高額療養費制度などがあるので、200万円で十分。そこへ、お墓代に100万円を足せば、合計1500万円。だいたいこれくらいの貯蓄があれば、あとは全部使っていいとのことでした。

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お金持ちより幸せなのは「思い出持ち」

著者紹介

和田秀樹(わだ・ひでき)

精神科医

1960年、大阪市生まれ。東京大学医学部卒業。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、米国カールメニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在、立命館大学生命科学部特任教授、川崎幸病院精神科顧問、一橋大学経済学部非常勤講師、和田秀樹こころと体のクリニック(アンチエイジングとエグゼクティブカウンセリングに特化したクリニック)院長。著書に、『医学部にとにかく受かるための「要領」がわかる本』(PHP研究所)、『老いの品格』『頭がいい人、悪い人の健康法』(以上、PHP新書)、『50歳からの「脳のトリセツ」』(PHPビジネス新書)、『感情的にならない本』『[新版]「がまん」するから老化する』(以上、PHP文庫)、『70歳が老化の分かれ道』(詩想社新書)、『80歳の壁』(幻冬舎新書)、『自分は自分 人は人』(知的生きかた文庫)など多数。

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