お金持ちより幸せなのは「思い出持ち」
お金を使うとは、「思い出をつくる」ことでもあります。人生がいよいよ終わりに近づいている方と接していると、しばしば、こんな切実な声を聞きます。
「死ぬまでに、楽しい思い出をもっと残しておけばよかった」
世を去られたあとに、ご遺族から「『ケチケチせずに使えばよかった』と悔やんでいました」と聞くこともあります。
体が動かなくなったあと、ベッドに横たわりながら強い後悔に駆られる。これはあまり知られていない、老いの現実の一つです。「元気なうちに、やりたいことをやっておけばよかった」という思いは、私たちが想像する以上に痛切なものでしょう。
逆に言うと、やりたいことをやっておくと、体のままならなくなった時期の、心の支えができます。「あのとき、楽しかったな」という数々の思い出です。患者さんも、幸せに旅立っていかれる人は総じて、亡くなられる直前まで、素敵な思い出の話を楽しげに語られます。死ぬ前の最大の財産は、お金ではなく、思い出なのです。
今のうちから「思い出貯蓄」を始めましょう。それが、60代からの幸福な生き方です。
自分専用の「やりたいことリスト」を作る
60歳から死ぬまでの期間を、「消化試合」のようにとらえるのは間違いです。さまざまな責任を果たし終え、ここからはもう、どう生きるも自由。お金も、自分の好きなこと、したいことに使いましょう。
私の好きな映画に、『最高の人生の見つけ方』という作品があります。ジャック・ニコルソンとモーガン・フリーマン扮する、余命宣告を受けた二人の老人が、死ぬまでにしたいことを一つひとつ実践していくお話です。同作品の原題はThe Bucket List。「死ぬまでにやりたいことリスト」です。
みなさんも、「やりたいことリスト」を書いてみてはいかがでしょうか。
お金の使い方に「正解」はありません。みなさんの「したいこと」は百人百様、それぞれ違うからです。
行きたいところ、食べたいもの、会いに行きたい人、経験したことのない趣味、買ってみたい車、着てみたい服、試してみたい美容法、興味のある分野の勉強......。何でもいいので、関心事を書き出していきましょう。
すると、おのずから、自分専用の、最適な使い道がわかってきます。あとは、それを実践するだけです。