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生き方

他人から“不毛なマウント”を取られずに済む人の特徴

マウンティングポリス(マウンティング研究家)

2024年03月15日 公開

SNS上で繰り広げられる「マウンティング合戦」。直接的なものから、自虐に見せかけてさりげなく立場の高さや生活の充実ぶりを匂わせる「ステルスマウンティング」まで、さまざまな事例が日々観測されている。

本稿では、3万以上の事例を収集・分析してきたマウンティング研究家がその知見をまとめた『人生が整うマウンティング大全』より、不毛な競争から自由になるために、マウンティング欲求を味方につける方法を説いた一説をご紹介する。

※本稿はマウンティングポリス(著)『人生が整うマウンティング大全』(技術評論社)を一部抜粋・編集したものです。

 

「他人と比較するな」論に振り回されるな

人間というのは、ついつい自分と他人を比較してしまう生き物である。この意見に対して、「自分と他人を比較するのではなく、過去の自分と現在の自分を比較しよう」といった助言がなされることがある。筆者自身も、知人から相談を受けた際に似たような回答をしたことがある。

この類のアドバイスは、一見すると建設的で、もっともらしく聞こえる。しかし、現実問題として、自分と他人を比較せずに「過去の自分と現在の自分を比較する」などといった高度な芸当を成し遂げられる人がどれほど存在しているだろうか。

それに「他人ではなく過去の自分と比べよう」というアドバイスを正しく理解し、実行することができるのであれば、私たちはとうの昔にマウンティング欲求から解放されていることだろう。

そう考えると、「自分軸を持つ」「他人と比べない」は、単なる机上の空論にすぎないのかもしれない。私たちは、自身の価値基準よりも他者との比較を優先してしまう性質を生まれながらにして備えている。人間は何かと比較しないと幸福感を感じられない生き物なのだ。

 

マウンティング欲求を理解し、うまく使いこなす

自分らしく満ち足りた人生を送るためには、自身に内在するマウンティング欲求を正確に理解し、意識的にコントロールすることが必要である。

一方で、人間の行動の大半はマウンティング欲求によって支配されており、マウンティング欲求から完全に逃れることは不可能である。そもそも、人間が社会的な動物である以上、私たちがマウンティング欲求を持つこと自体、ある意味で仕方がないことと言える。

ゆりかごから墓場まで、マウンティングは続いていく──これは我々に課せられた、どうしようもない「宿命」なのだ。

ただ、だとしたら、マウンティング欲求を一方的に否定するのではなく、むしろ肯定的に捉えることによって、人生を切り拓くための武器として有効活用したほうが得策なのではないだろうか。

マウンティング欲求を自覚できずに振り回されてしまうような事態は、できる限り避けるべきだ。しかし、マウンティング欲求は、うまく使いこなすことさえできれば、私たちの人生におけるかけがえのない友人にもなりうるのだ。

 

マウンティング欲求を「味方につける」

マウンティング欲求を持つことは、一般にはネガティブな事象として捉えられる傾向がある。しかし、マウンティング欲求は人間に備わった「本能」の一種であり、それ自体は決して否定されるものでも忌み嫌われるべきものでもない。

そもそも歴史を振り返ってみれば、太古の昔から現在に至るまで人間の行動の大半は、マウンティング欲求に支配されてきた。時代背景によってマウンティングの方法はさまざまに変化してきたものの、筆者が観察する限り、人間に内在する根源的なマウンティング欲求が社会から消え去ったことは一度もない。

最近は、マウンティング欲求を含む俗世的な欲求を持つこと自体を否定する若者が増えているという。しかし、人生の早い段階でそういった欲求を放棄し、「達観フェーズ」に入ってしまうと、人生そのものがスケールしなくなってしまう可能性も大いにありうる。

多くの人にとって、マウンティング欲求を否定すべきフェーズはまだまだ先であり、私たちはマウンティング欲求に対してもっと素直になるべきなのだ。

そのためには、マウンティング欲求を「手放す」のではなく、マウンティング欲求を「味方につける」ことを意識することから始めてみるといいだろう。

 

「比較されない立ち位置」を見つけ、マウント競争から自由に

現代社会においては、自身に内在するマウンティング欲求に自覚的に向き合わなければ、不毛な「マウンティング競争」に巻き込まれてしまうリスクがある。そのリスクを回避するためにはどうすればいいのか。

最善の方法の1つは、「自分だけのマウントポジションを確立すること」であると筆者は考える。

1つの軸でマウンティング競争をしようとしても、上には上がいて、その先には消耗するだけの人生が待ち受けている。しかし、いくつかの「マウント要素」を組み合わせ、自分だけの「マウントポジション」を確立することで、だれからもマウントを取られなくなる。

複数の「マウント要素」の組み合わせのパターンとしては、次の例がある。

・ウォーレン・バフェット型「投資家」×「質素」
・ナタリー・ポートマン型「セレブ」×「読書家」
・ひろゆき型「評論家」×「パリ在住」

独自の「マウントポジション」の確立を目指す際には、ぜひとも参考にしてみてほしい。

すでに述べたように、人間は社会的な動物であり、他人との比較から逃れることは現実的には難しい。そのため、「比較しない」ではなく「比較されない立ち位置を見つける」ことが、人生100年時代における人生戦略としては重要となる。

「他人と比較するな」という言葉に惑わされることなく、「他人と比較されない」立ち位置を築くことによって、「マウントフルネス」の状態を実現することができるのだ。

 

マウンティングを理解することは、人間を理解すること

ビジネスパーソンの中には、資格取得などのスキルアップに熱心に励む人がいる。MBA(経営学修士)などの学位取得にチャレンジする人も少なくない。そういった社会人による学び直しはキャリア形成にプラスに働く可能性があり、それ自体は否定されるべきものではない。

しかし、人工知能(AI)が発達し、英語、ファイナンス、プログラミングといったスキルが陳腐化するこれからの時代においては、そのようなスキルよりも、人間が抱える内面的な心理や欲求を深く洞察する「人間理解」のスキルのほうが圧倒的に重要となる可能性がある。

そのようなスキルを身につけるためにはどうすればいいのか。一番の近道は「マウンティングリテラシーを鍛えること」であると筆者は考える。なぜなら、「マウンティングを理解することは、人間を理解すること」そのものだからだ。

年々激化するマウンティング競争によって、多くの人々が疲弊し、人生の指針を見失っている。そんな「80億総マウント社会」においても、マウンティングを新たな「教養」と捉え、マウンティングリテラシーを鍛えることによって、私たちは幸福に満ちた人生を手に入れることができる。

不毛な「マウンティング競争」を逆手に取り、自分だけの「マウントフルネス」を手に入れることで、理想の人生をつかみ取ろう。

「マウンティング欲求」から自由になることはできないが、「マウンティング競争」から自由になることはできる。

マウンティングを制する者は人生を制するのだ。

 

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