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ため息、棘のある褒め言葉...「遠回しに攻撃してくる」ずるい人の心理

大鶴和江(心理セラピスト)

2024年05月16日 公開 2024年05月16日 更新

既読スルーをされた、ミスや失敗をしたとき、大きいため息をつかれた、皮肉や嫌味を言ってきたあとで「冗談です」と笑って誤魔化される...これらをされると、多くの方がモヤモヤしたり、どうしていいのかわからない気持ちになるでしょう。

実はこれらは、不満や怒り、否定といった感情を遠回しに示す立派な攻撃。延べ1万人以上の心の悩みを解決してきた心理セラピストの大鶴和江氏は、この攻撃を「目に見えにくくわかりづらい、ずるい攻撃」と呼んでいて――。

※本稿は、大鶴和江著『既読スルー、被害者ポジション、罪悪感で支配 「ずるい攻撃」をする人たち』(青春出版社)を一部抜粋・編集したものです。

 

目に見えにくくわかりづらい、遠回しな攻撃をする人たち

「今日はかわいい服だね。いつもと全然違う」
「すごいね、あなたでもできるんだね」

こういったわかりにくい棘のある言葉やコミュニケーションを取る人は周りにいないでしょうか。
これらをされたら、きっと多くの人が、モヤモヤするでしょう。

たとえ相手に聞き返しても「え? あなたの勘違いじゃないかな。意地悪のつもりはないし」などと誤魔化されて反論しづらい状況になり、相手にどう接していいかわからなくて困惑した。そんな経験はないでしょうか。

これらは「受動攻撃(Passive aggressive behavior)」と呼ばれるものです。不満や怒り、否定といった感情を直接相手にぶつけず、遠回しで受け身でいながら、わかりにくい消極的で否定的な態度や行動を示すことを指します。

シンプルにいえば、受動攻撃は、「目に見えにくくわかりづらい、遠回しな攻撃」で、私はこれらを「ずるい攻撃」と呼ぶこともあります。

先ほど挙げたもの以外にも、
・相手を困らせるためにワザとミスをする
・控えめな言葉や態度でマウントを取ろうとする
・「あなたのせい」と被害者を装い、罪悪感を与える
・SNSを使った匿名での嫌がらせ
・物を返さない、納品をワザと先延ばしにして連絡すらもしない
などがあります。

 

「何もしない」が新たな攻撃を呼び込む

なぜ、「ずるい攻撃」なのか? その理由は、一見すると「自分に対しての攻撃」と明確にはいえず、反論も抵抗も難しいからです。仮に「さっきのあれ何なんですか?」と言っても、「え? なんかしたっけ?」「きにしすぎじゃない?」など、いくらでもノラリクラリと言い逃れされてしまいます。

言い逃れ可能な範囲の攻撃だからこそ、それを指摘しにくく、指摘すると関係が悪くなりそうで、やられたほうはモヤモヤを感じながらも、何も手を打てないという状態になってしまう傾向にあります。実際、「ずるい攻撃」を受けたことがあっても、何もしない、何もできないという人が多いのです。

こういった攻撃をする人は非常に多く、された側は一方的に疲れますし、逃げられない環境だと精神的にも追い詰められて抑鬱状態になる人もいます。そして最も恐ろしいのは、この「何もできない」「何もしない」ということが、さらなる攻撃を呼び込む行動だと気づいていないことなのです。

 

「ずるい攻撃」を放置してはいけない

パワハラやいじめなどの「目に見えるわかりやすい攻撃」と、間接的な嫌がらせなどの「目には見えないわかりにくい攻撃」では、後者のほうが対処しづらい傾向があり、困っている方も多いのではないでしょうか。

目に見えるわかりやすい攻撃や、法律に反するものに関しては、対処方法がある程度存在します。しかし、見えにくくわかりにくい攻撃は、攻撃かどうかもわからない曖昧な行為、言動が多く、どう対処していいかわからないものも多々あります。

そして、現実的に加害行為に遭っているのにもかかわらず、自分の思い違いではないか、相手に責められたら怖い、自分が飲み込んで黙っているほうがいい、そのようなことをされる自分が何か悪いのかもしれないと罪悪感を抱えたりもします。

また、波風を立てずにいたらその場が収まり平穏を保てるという考え方も強いです。私が接する人々の中にも「自分さえ我慢していたら平穏で安全なんだ」という一時的な平和を保つために、自分の心を殺していく人も多数存在します。

一時的な平穏を保つために自分の心や気持ちを抑えて我慢していると、心が疲弊し、やがて麻痺してしまい、気力も奪われ、心を病んでいくことになるので注意が必要です。

見えにくくわかりにくい「ずるい攻撃」に悩み苦しむ人たちにまず必要なことは、「これは攻撃である」と認識すること。そして、受動攻撃を含む「ずるい攻撃」をする人たちの心理や攻撃傾向を知り、その対処の仕方を理解することです。

相手の攻撃に圧倒されてのまれてしまうのではなく、冷静に分析判断して、攻撃から抜け出すための知識を身につけ、対処できるようになることが重要なのです。

 

著者紹介

大鶴和江(おおつる・かずえ)

心理セラピスト

心理セラピスト、心理分析、心理セラピー講師。大分県生まれ。児童養護施設で8年間過ごした体験から、さまざまな心理学や心理療法を学び、2005年に独立。延べ1万人以上の心の悩みを解決し、現在も長野と東京を拠点として活動している。独自の心理療法「リトリープサイコセラピー」を考案。問題の利得にフォーカスしたセッションは、「悩みがリバウンドしなくなる」と評判。著書に『自分を縛る"禁止令"を解く方法: 見えない「利得」に気づくと、すべての問題は解決する』(大和出版)などがある。

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