いてもたってもいられない不安や恐怖がおそってくる。そんな強迫症からの脱却法はあるのか。強迫観念が浮かんできたときに、誰でもできる対処法を精神科医の野間利昌氏が具体的に紹介する。
※本稿は野間利昌監修『強迫症/強迫性障害をワークで治す本』(大和出版)から抜粋したものです。
強迫観念が浮かんだときは、これで対処しよう。
強迫観念が浮かんだとき、それにまじめに反応し、強迫行為で打ち消そうとするのは強迫症の思うつぼ。いつまで経っても悪循環から抜け出せません。
「いてもたってもいられない不安や恐怖」を無視するには、散歩、料理などで体を動かしたり、読書など興味のあるものに関心を向けたりすると良いでしょう。
人の声を聞くとそちらに注意が向くので、ラジオのトーク番組も効果的です。また、浮かんできた強迫観念はギャグや替え歌、ドラマや漫画の決め台詞などで茶化すのも有効。
強迫観念が浮かんだときにやることをできるだけ具体的にリストアップしておくと役立ちます。
やることリストをつくる
強迫観念が浮かんだときに、すぐにできることをリストアップしておく。このとき内容を具体的に書き、考えずにそのまま行動に移せるようにしておくのがコツ。
家のなか、外出中、起床時、寝る前など場面を想定し、やることを決めておく。
ラジオをかける
人の話し声は、つい耳をそばだててしまい、話を聞いているあいだは別のことを考えづらくなる。ラジオやオーディオブックのように、声のメディアなら、横になっているときでも、移動中・作業中でも話し声を聞くことができる。
音楽だと聞き流してしまいがち。語りや会話がベスト。
おなかをへこませ、30秒間キープ
体の一部に意識を向ける。たとえばおなかをへこませ、30 秒間キープする(呼吸はそのまま)。すると、他のことに意識が向きにくくなり、強迫観念から気がそれて、強迫行為をやめやすくなる。
日頃意識していない部分に意識を向ける。ゆっくり呼吸するなどでもよい。
舌でABCDを書いてみる
口を閉じたまま、舌を使い、口のなかでA~Zまでアルファベットを空書きする。舌をうまく動かすのは難しいので、他のことが考えられない。
A~Zまでできたら、Z~Aへ。それもできたら小文字に挑戦。
連想ゲームをする
強迫観念にとらわれ、考え続けてしまうときには連想ゲームをするのがおすすめ。家族や友だちと、もちろんひとりでも楽しめる。言葉に集中するので、他のことを考えなくて済む。また、連想ゲームで思考を飛躍させるのも楽しい。
連想ゲームの言葉に引っ張られ、頭のなかは沖縄のビーチのイメージになってもOK。
ギャグやユーモアで切り替える
強迫観念をまじめに受け止めないようにするため、一発ギャグを思い浮かべる。不安や緊張が高まったときに、ギャグを何度か頭のなかで言っていると、シリアスなことが考えられなくなる。自分が好きなギャグを探してみよう。
お笑いタレント小島よしおさんのギャグを5 回頭のなかでくり返して、強迫観念から気をそらす人も。
強迫観念・強迫行為を替え歌で実況中継
強迫観念が浮かんできたり、強迫行為をしかけたりするときに、自分の好きな歌のメロディにのせて替え歌にしてしまう。即興で歌にするのはなかなか難しい。真剣に替え歌をつくっているうちに、気持ちも変化する。
童謡や流行歌など、パッと思いついた歌に言葉をのせてみたり、声に出せない場面では、頭のなかで歌ってみる。
決め台詞で決別する
決め台詞で強迫観念と決別する方法もある。漫画『北斗の拳』の台詞「おまえはもう死んでいる!」をもじって、強迫行為の対象、たとえば鍵を何度も確認してしまう人は「鍵」に向かって「おまえはもうしまっている」と言ってみる。するとばかばかしくなって、強迫観念が薄れていく。
「何やってんだ、自分は…」とばかばかしさを実感することが大切。