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初対面より「二度目」が緊張する...人見知りでも会話がスムーズにできる方法

鳥谷朝代(一般社団法人あがり症克服協会代表理事)

2024年08月23日 公開

人と楽しく会話をしたくても、緊張して頭が真っ白に......。『PHPスペシャル』2024年9月号では、一般社団法人あがり症克服協会代表理事の鳥谷朝代さんに、コミュニケーションの悩みを克服する方法についてお話を聞きました。(取材・文:林加愛)

※本稿は、『PHPスペシャル』2024年9月号より内容を抜粋・編集したものです。

 

あがり症の人は意外と多い

「人見知りで、うまく話せない」と悩んでいる皆さん。じつは私も、昔は極度の人見知りでした。

中学校一年生のとき、国語の授業で音読をして声が上ずり、あがり症を発症。就職後は、電話を取るのが怖くて逃げ回ったり、お茶出しで手が震えたりと、緊張してしまう自分に悩んでいました。にも関わらず、30歳のときに「人前で20分間の発表をせよ」と命じられ、まさに絶体絶命のピンチを迎えます。

わらにもすがる思いで「話し方教室」に入会したところ、それが転機となり、あがり症を克服。学んだ内容以上に大きかったのが、「人見知り仲間」との出会いです。

年齢や職業、性別を問わず、多くの人があがり症に悩んでいる。「自分だけじゃないんだ」という発見は、心強い支えになりました。そして、その人たちも私も誰でも人見知りとあがり症を改善できると知りました。

皆さんも、きっと克服できます。対策方法を学んでいきましょう。

 

人見知りをするのは、どんな人?

「人見知りさん」に共通する特徴を知って、原因を探りましょう。

 

・自信が持てない

自己肯定感が低い人が多く、自分を「ダメだ」と思い込んでいる傾向があります。過去に人間関係でつらい目にあった、失敗したなどの苦い経験によって、自信をなくしている場合も。

 

・一人で過ごす時間が長い

会話を避けるために、「人と会わないようにする」「人と接さない仕事を選ぶ」などの傾向が強め。話さない時間が長いと、いざ会話をするときに声が出ず、緊張もMAXになってしまいます。

 

・相手からの評価を気にする

自信がないため、周りから自分がどう見られているかが気になり、不安に陥ってしまいます。「こんなことを言ったら、嫌な人だと思われるかも」などと考えすぎて、言葉が出てこなくなるのです。

 

・自分のことで精一杯

意識を自分にばかり集中させてしまい、話しながら相手を観察する余裕がありません。会話の糸口は、相手に興味を持つことで見つかるもの。話題探しに難航することが多いです。

 

・小さい声で話してしまう

「話すと声が上ずるから」と考えて、声が小さくなりがちです。すると、せっかく話しかけても相手に声が届かないことも。「挨拶したのに、無視された」などと落ち込み、さらに声を出せなくなります。

 

2STEPで! あがらなくなる会話術

スムーズに会話ができるようになるために、準備と実践の2つのSTEPにわけて、会話術を紹介します。

 

【STEP1 緊張しないマインドと体をつくろう】

まずは、落ち着いて話せるように準備をしましょう。

 

・声をかけて成功体験を積む

まずは周りを観察してみてください。たとえば電車に乗っているとき、どんな乗客がいるでしょうか? 観察は相手に興味を持ち、会話の糸口を探す練習になります。そして、もしご高齢の方や妊婦さんが立っていたら、勇気を出して席を譲る声がけを。「自分から話しかけて、役に立てた」という成功体験につながりやすく、自己肯定感がアップします。

 

・リズム運動で体と心を整える

緊張しやすい人の9割以上に、運動不足の傾向が見られます。そこで、散歩やウォーキング、自転車、ダンスなどの運動を日々の習慣に取り入れてみましょう。とくに、リズム感のある動きがおすすめ。

日常的に一定のリズムで体を動かすと、リラックス効果のある「セロトニン」が分泌されます。運動するのが苦手なら、よく噛んで食べるだけでも、気持ちを落ち着かせる効果大です。

 

・ストレッチと呼吸法で声を出しやすくする

緊張すると体が固まりがちで、とくに上半身に力が入りやすくなります。そこで、毎晩寝る前に背伸びをして体を左右に倒したり、指先を肩につけたまま腕を回したりしてください。

また、お腹から声を出せるようになるために、腹式呼吸の練習もしましょう。「お腹がペタンコになるまで口からゆっくり息を吐く→鼻からゆっくり吸う」を繰り返してください。自律神経が整い、セロトニンの分泌も促進されてリラックスできます。

 

・自分のいいところを探す

人からの評価が気になるときは、優劣をつけて考えないようにするのが一番。「あの人のほうが明るくて好かれている」と思うのではなく、「あの人にはあの人の、自分には自分の、いいところがある」という考え方にシフトしてください。

「人見知りな自分に、いいところなんてない」と思うかもしれませんが、「無口」とは穏やかさでもあり、「気にしすぎる」のは優しいからだとも言い替えられます。そんな自分の持ち味を、どんどん肯定してあげましょう。

 

【STEP2 いざ、話をしてみよう】

実際に会話をするときに、次のことを意識してください。

 

・「シタシキナカ」で話題づくり

エレベーターなどで知り合いと一緒になったときに過ごす無言の時間は、つらく感じるもの。そんなときのために、話題を用意しておきましょう。使いやすいのは、「シタシキナカ」の話題です。

シ→趣味、タ→旅、シ→仕事、キ→気候、ナ→仲間、カ→家族の話です。

このうち最も無難なのが、気候の話題。よく知らない間柄でも、「暑いですね~」と言い合うだけで、場が持ちます。

 

・声は相手の調子に合わせて

相手の声のトーンに合わせて声を出しましょう。相手が沈んだ声で話しているならこちらの声も低めに、明るい語り口調なら明るいトーンで応じてください。テンションが揃っていると、お互いに話しやすくなります。

難しいのは、ハイテンションな人と話すときです。その場合は、「今だけひと頑張り」と考えて。その場だけスイッチを入れて乗り切り、用事が済めばスイッチオフに。帰宅後はのんびりして、頑張った自分をいたわりましょう。

 

・質問の答えを繰り返す

人の話を聞くときに、つい質問を重ねてしまうことはありませんか? 質問攻めにならないようにするには、相手の言葉を繰り返すのがコツです。

たとえば、好きな食べ物を尋ねたときに、相手が「甘いものが好きなんです」と答えたとしたら、いったん「へぇー、甘いものがお好きなんですね」と、同じ言葉で受け止めましょう。そのあと、「とくに何が好きですか?」と次の質問に移ればスムーズに、かつ和やかに会話が続きます。

 

・好きなものの話をする

相手の好きなものについて興味を持つことが、相手への関心を表す極意です。まずは簡単な質問をして、何に興味があるかを探りましょう。たとえば「お休みの日は何をしているんですか?」と聞いて、「映画を観ています」と返答があったら、おすすめの映画の話などに掘り下げられます。

たとえ相手が人見知りだったとしても、好きなことについての質問には喜んで答えてくれることが多いものです。相手が関心を持っている話題を見つけて、会話を深めましょう。

 

こんなとき、どうしたらいいの?

人見知りさんならではの、「しまった」「困った」「どうしよう」を一挙解決!

 

Q. 初対面のときよりも、二度目に会うときのほうが緊張します。初対面なら自己紹介をすればいいですが、二度目は何を話せばいいのでしょうか?

A. 次に会うとき、二度目以降は、プライベートに踏み込んだ話題を意識してください。「シタシキナカ」で言えば、「仲間」や「家族」などに関する話をするといいでしょう。学生時代の部活や、アルバイトの話題もおすすめです。相手からプライベートの話を聞き出すことに抵抗があるなら、まずは自分の話をしてみてください。もし「話してもいい」と思ってもらえたなら、相手もプライベートな話をしてくれるでしょう。

 

Q.「自分の話が相手の気に障ったかも」と思ったときは、どうフォローすればいいですか? すぐに謝れず、いつも後悔してしまいます。

A. 相手に謝るのがベストとは限りません。相手のコンプレックスに触れるようなことなら、蒸し返さないほうが無難なこともあります。大事なのは、その後悔をひきずらないことです。紙に書き出したり、信頼できる人に話したりして区切りをつけ、「次」に意識を向けましょう。今後その人に誠意をもって向き合えば、それが一番のフォローになります。

 

Q. 職場で電話を取るのが苦手です。うまく対応できるか不安で声が上ずり、その声を周囲に聞かれるのも恥ずかしくてたまりません。

A. 私も電話が苦手だったので、よくわかります。解決策は、自分や職場の人を気にせず、電話口の相手に集中することです。「どんな人なのかな?」「何に困ってる?」「私ができることは何だろう?」と、相手のことだけを考えましょう。焦って早口にならないように、ゆっくり聞き取りやすい声で話すようにすれば、緊張は徐々におさまります。

 

人見知りにもいいところがある

人見知りには、いい面もたくさんあります。たとえば内向的であることは、深く物事を考えられるという長所でもあります。物事を気にしやすいのも、「こうありたい」という理想を目指す誠実さの証。対人関係で緊張するのも、その根本には気遣いがあります。つまり、人見知りの人は「いい人」なのです。

私の教室にもこれまで多くの人見知りさんが来られましたが、生徒さん同士のトラブルは20年間一度もありません。人が集まる場でいっさいもめごとがないというのは、めったにないことです。

そんな生徒さんたちが唯一言い合うとしたら、「私のほうが人見知りよ」ということです。「自分が一番ひどい人見知りだ」と、それぞれが思っているんですね。

昔の私も、こんなに人見知りな人間は自分だけだと思っていました。30歳でようやく「自分だけではない」と知ったのは、最初にお話しした通り。皆さんも「見えないところに仲間がいる、ひとりじゃない」ということを忘れないでください。

そして今後、人見知りを克服しても、人見知りだったことを否定しないでください。話せなくてつらかったからこそ、話せるようになった幸せを、より強く味わえるのですから。これからも、持ち前の誠実さと優しさはそのままに、人とのコミュニケーションを大いに楽しみましょう!

 

著者紹介

鳥谷朝代(とりたに・あさよ)

一般社団法人あがり症克服協会代表理事

株式会社スピーチ塾代表取締役。全国各地のカルチャーセンター、学校、企業で年間200回以上の講演活動を行ない、あがり症の克服へと導いている。『30ステップで人見知りさんがどこでもラクに過ごせるようになる』(明日香出版社)など著書多数。

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