孤独感が強い。カッとなった後に自己嫌悪。自己肯定感が低い。いつも漠然とした不安がある...多くの人が抱えるネガティブな悩み。環境や会社、人間関係が原因と思われがちですが、本当の原因は別のところに。その解決方法を大人気心理カウンセラーが解説します。
※本稿は、池田由芽著『メンタル"ヤバめ"をやめられる本』(大和出版)の一部を再編集したものです。
第0感情を応援し叶えると、価値観はアップデートされる
唐突に出てきた「第0感情」。はて、第0感情とはなんぞや? それをお伝えするにあたって、はじめに人の感情の仕組みをお話ししますね。
感情はポジティブな感情とネガティブな感情に分けることができます。そして、ネガティブな感情群はいくつかの層になっているんです。
第二感情という意識の一番表層にある部分に、怒り・憎しみ・嫌悪・嫉妬・攻撃心といったちょっとトゲトゲした感情たちがあります。トゲトゲした感情とは他人に対して攻撃性を含んでいるものです。その第二感情の奥、第一感情に悲しみ・寂しさ・不安・恐怖といった、震えるような感情たちがあります。
第一感情という名前の通り、一番目に湧き出す感情。第二感情は、第一感情が原因となって次に湧き出す感情です。
つまり、すごくシンプルにいうと、人は悲しいから怒るんです。寂しいから憎むのです。
そのうえで、私はある時、感情をもっともっと掘り進めていくと、第一感情の奥にさらにもう一つ層があることを発見しました。
セルフカウンセリングをしていた時、第二感情から第一感情にどんどん掘り下げていくと、第一感情にも生まれた原因があることに気づいたのです。それが先ほどお伝えした、すべての悩みのキモである「第0感情」です。
人は第0感情が叶っていないから、悲しくて怒る
第一感情のさらに奥にある第0感情とは一体何なのか。これはズバリ「あなたの子ども時代の願い」です。
悩みを深掘りしていくとこんな構造になっています。
たとえば「人の成功を妬ましく思ってしまう」という悩みを抱えていたとしましょう。妬みはトゲトゲの第二感情ですね。
なぜ妬むのか、第一感情を掘り下げると、子ども時代に親に「お前にはできない、無理」と繰り返し否定をされた悲しみという第一感情が埋まっています。そして繰り返される否定によって「どうせできない」という価値観を形成してしまう。
すると、大人になって成功している人を見た時に妬ましくなるわけですね。だって「どうせ自分には無理」だから。この時、悲しみという第一感情の奥にさらに第0感情は「本当は親にこうしてほしかったのに」、つまり「本当は親は自分を否定せず、応援してほしかった」というものでしょう。
まとめますね。
本当は親に応援してほしかった(第0感情)のに、否定ばかりされた。
悲しいなぁ(第一感情)。やっぱり自分はできないやつなんだ(ここで価値観化)、だってお父さんもお母さんも私を否定してきたから。
あ、成功している人がいる。嫌だなぁ。ムカつくなぁ。失敗すればいいのに(第二感情)。
自分はどうせ成功できないから、あの人だけ成功するのは悔しい。ああ、こんなことを感じている自分は汚い(悩み化)。
悩みの根本原因が第0感情である子ども時代の願いが叶っていないから、というのは、こんなメカニズムになっていたのです。
ネガティブな感情は無理せず迎えに行こう
ネガティブな感情。これは第0感情が叶わなかったことによって、ただ拗ねて生まれたものにすぎません。悪者でもなんでもないのです。だから積極的に迎えにいき、吐き出してあげてください。
では、ネガティブな感情を吐き出すとは一体どういうことなのでしょうか。
これは、ネガティブ感情が自分の中に出てきたら「積極的に感じていく」ということです。不安を感じたら「不安だ!」と声に出していきましょう。
たとえばこう。「彼から連絡が来ないのが不安でしょうがない。嫌われちゃったかな、変なこと言ったかなとか、あれこれ考えすぎちゃう。なんにも起きていないのに勝手に余計なことばかりを考えてしまうよ~」とか。
ネガティブを感じすぎたらネガティブに呑み込まれて余計に辛くなっちゃうんじゃない? と感じるかもしれませんが、実はネガティブな感情は積極的に感じてあげることで小さくなっていくことがわかっています。
クモ恐怖症の人たちがこうなった
カリフォルニア大学ロサンゼルス校の3人の心理学者がこんな実験をしました。
被験者はクモ恐怖症の人たちです。研究チームは被験者を3つのチームに分け、それぞれのチームの前にクモを置いて、こんな対応をしました。
①クモが無害であることを説明する(楽観的思考)
②クモへの関心をそらす質問をする(経験の回避)
③今感じている気持ちを言語化するように指導(感情のラベリング)
③のチームの「感情のラベリング」とは感じている感情を言語化してあげるということ。積極的に「クモが怖いって感じていいよ」と言語化を促してあげたのです。結果はどうなったと思いますか?
①「楽観的思考」で無理やりポジティブに考えようとしたチームと、②「経験の回避」でクモを見て見ぬふりしたチームは不安が悪化。③「感情のラベリング」でネガティブを迎えにいったチームだけが不安が減少したのです。
「感情を抑制することがよりよい決断につながるというのは、間違いだ」とは、リスボン大学の神経学者・ダマシオの言葉。ネガティブは感じることで、小さくしてあげられるのです。
ネガティブはオールオッケー。ちゃんと感じて、ちゃんと吐き出してあげればいいのです。よく生きるために「自己承認」も大切です。自己承認とはあなたのどんな感情も悪者扱いせずに、認めてあげるということ。認めて、吐き出してあげただけ、あなたという気球は軽くなり、高く空に登っていけるのです。