他人からの攻撃でストレスをためこみ、無駄に傷つかないように、嫌な印象を持たれずに言い返す方法をマスターしましょう。コミュニケーショントレーナーの司拓也さんが教える「嫌われずに言い返す方法」を、『PHPスペシャル』10月号よりご紹介します。(取材・文:洪愛舜)
※本稿は、『PHPスペシャル』2024年10月号より内容を抜粋・編集したものです。
合気道のように嫌な言葉をかわそう
悪意のある言葉を投げつけられても、言われっぱなしで我慢してしまう......そんな経験はありませんか?
とくに上司や同僚、ママ友、家族など、簡単に縁を切ることができない相手だと、なおさらかもしれません。その根底にあるのは、「嫌われるといけないから、攻撃を受けても言い返してはならない」という思い込みです。しかし、言い返すと本当に嫌われるのでしょうか?
たしかに、自分の主張を押し通したり、相手を論破するような反論をしたりすると、嫌われることがあるかもしれません。でも、嫌われずに言い返す方法はあります。
それは、真正面から相手に反発するのではなく、合気道のようにスルッとかわしてから言い返す、という方法です。「言うのは簡単だけれど、本当にできるの?」と思われるかもしれませんが、本稿で紹介するテクニックを使えば、誰でもできるようになります。
嫌味や悪口、マウンティングなどのハラスメントを仕掛けてくる人(ハラサー)からあなたが攻撃されている姿を、周りの人たちは案外よく見ています。もしあなたがその攻撃をうまくかわすことができれば、「あの人は攻撃されてもああいう態度をとれるんだ」「なかなかの大物だな」「ブレない人なんだな」と、周りからの評価が上がることでしょう。
また、同じようなハラスメントを受けている人が、あなたの行動を見て、「あんなふうに対処すればいいんだ」とお手本にすることもできます。このように、あなたが嫌な言葉をかわせるようになることで、ハラスメントを封じる環境づくりにもつながっていくのです。
ハラサーに狙われているかも?
1つでも当てはまる人は、攻撃されやすいタイプです。
□素直な性格だと言われる
□自分が悪いと考えがち
□あまり反論しない
□嫌われたくないという思いが強い
□とっさに言葉が出てこない
□言葉を飲み込むことが多い
めんどくさい相手の策略を暴く!
言葉の攻撃をかわすには、相手を知ることが必要です。ハラサーは、次に挙げるような心理テクニックを使って、あなたを支配下に置こうとします。身を守るために、相手の策略を理解しましょう。
・ニラハラ
怖い視線や冷たい目つきで相手をにらみつけて委縮させる「にらみハラスメント」。一度でもニラハラをされると、にらまれたときの恐怖心を拭い去ることが、なかなかできません。関わるたびに、「また攻撃されるかも」という不安を抱えながら対峙することになります。
・ダブルバインド
「わからないことがあれば、なんでも聞いてね」と言ったのに、いざ質問されると「少しは自分の頭で考えたら?」など、矛盾したことを言ってくるハラスメント。質問をしてもしなくても批判されるため、混乱したり罪悪感を覚えたりしてしまい、強いストレスを感じます。
・メモリーハック
相手の記憶や認識を改ざんし、操作するテクニックです。あやふやになっている記憶に対して、「自分はたしかにそう言った」「本当にちゃんと覚えているのか」「メモはあるのか」などと、強気で押し通してきます。それにより記憶に自信が持てなくなり、ハラサーの都合のいいように事実をゆがめられてしまうのです。
・ドナハラ
大きな声で相手を威嚇する「怒鳴りハラスメント」。相手にプレッシャーをかけることで何も言い返せないようにさせる、パワハラの一種です。とくに普段から声が小さい人は、このハラスメントを受けやすい傾向があります。
・社会的集団圧力
「あなた以外のみんなが、私と同じAを選んでいる」などと、多数がハラサーに賛同しているように思い込ませることで、相手を孤立させます。実際には全員がAを選んでいなくても、言われた側が少数派であるように錯覚させられると、意見を主張しにくくなってしまいます。
・ストローマン論法
議論中に相手の意見をわざとねじまげて不正確に表現し、それに基づいて反論する「言いがかり」的な手法です。たとえば「子供を道路で遊ばせると危ない」という意見に対して、「じゃあ、ずっと家に閉じ込めておけってこと!?」と反論するなど、誇張して表現するケースが多く見られます。
・ネガティビティバイアス
ポジティブな情報の中に、ネガティブな情報が一つでもあると、そちらに注意が向いて記憶に残ってしまうという心理現象のことです。それを悪用し、ネガティブな情報を相手へ意図的に伝えます。言われた側は、不安をあおられることで判断能力が鈍ってしまい、正常な考えができなくなるのです。
ハラスメントする人の正体
ハラサーは、生まれつき攻撃的な性格をしているとは限りません。じつは、ハラサー自身もハラスメントを受けてきた被害者であることが多々あります。
親や上司、先輩など、自分よりも強い立場の人からハラスメントを受けると、ストレスがたまり発散したくなることがあります。そんなとき、自分よりも弱い立場の人に無意識にハラスメントをして、ストレスのはけ口にしていることがあるのです。そのためハラサーは、「自分より弱い人」をハラスメントの対象に選んでいます。言い返してこない、言いなりになりそうなタイプの人を常に探しているのです。