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「侵入犯罪」に狙われる戸建ての特徴は? 安全に見えてリスクの高い構造

須下幸三(バイオニクス株式会社 代表取締役)

2024年11月20日 公開 2024年12月16日 更新

セキュリティを突破し、家屋に侵入してくる「侵入犯罪」の件数は、警視庁のデータによれば、平成中期から令和4年まで減少していた。しかし、令和5年になるとそれは増加へと転じている。

あらゆるものに関する「セキュリティ面」が話題にあがるこの時代、私たちがこういった「侵入犯罪」に対して投じることのできる解決策とはどのようなものなのか。「血流認証」の開発を進める、バイオニクス株式会社の須下社長の話を聞いた。

 

侵入しやすい住宅と侵入しにくい住宅の違い

まず、戸建ての住宅については、はっきりと侵入しやすい住宅と、そうでない住宅に分かれます。これは、防犯のプロも分析しています。

侵入するポイントについては、玄関であることは少なく、大抵は窓を破っての侵入が多いのが現状です。庭に面しているような大きなガラスドアを破壊して侵入するという事例も見られます。

侵入されやすい戸建て住宅の代表的な特徴として、高い塀で囲まれた要塞のような外観が挙げられます。一見すると安全に見えるこのような構造は、人目を遮ることでかえって侵入を容易にし、また経済的な余裕を感じさせることで標的になりやすい傾向があります。

さらに、手入れの行き届いていない庭も危険信号となります。生い茂った植栽による視界の悪さに加え、庭のごみや管理状態から居住者の煩雑さが推測可能となり、防犯意識の低さを示唆する可能性があるためです。

鍵がかけられておらず、ドアも開いたままかもしれません。鍵を閉めていても、警備会社と連携していないお宅もたくさんあります。このような様子からくみ取れる"気持ちの面での隙間"があると、犯罪者に狙われやすいと考えます。一方、侵入されにくい住宅は、敷地全体の見通しが良く、周囲からの視認性が高いことが特徴です。

集合住宅においては、二階以上の住戸はベランダからの侵入リスクが比較的低いとされています。人目もあり、怪しまれやすいのが大きな理由です。また、オートロック式の鍵を導入している集合住宅もあります。これは一見、安全そうに見えますが、住人が入る時に一緒に侵入できてしまうというリスクを持っています。さらに、玄関は主にピッキングによる侵入被害が多く、近年普及しているスマートロックシステムでは、車盗難時と同様に電波のハッキングによる侵入リスクも指摘されています。

そもそも、鍵が物体として存在しているということは、鍵が複製されるリスクをはらんでいます。鍵を複製されてしまえば、「鍵を開ける」という違和感を抱かせない普通の動作で侵入できてしまうので、周囲から怪しまれることは少ないでしょう。鍵の複製は、対象となる鍵の番号を見つけさえすれば、それを問合せすることで簡単に行うことができてしまうのです。

実際、管理会社に勤めていた人物が、鍵の番号を把握していて、管理会社を辞めてから、こっそり複製してしまうというケースもあります。警備会社含め、業者の関係者に鍵を複製されてしまうリスクもあるのです。

 

被害を防ぐために今、私たちが出来る行動とは?

被害を防ぐためにはまず、帰宅時に周りに不審人物がいないかどうか、注意深く見ておくということが非常に大事なります。後ろをつけられて、家の近くまで気づかれないように一緒にやって来て、急に後ろから脅され、「鍵を開けろ」などと言われる事例もあります。

不審な気配を感じたら、すぐ知人に連絡を入れ、「変な人がいるので、来てくれないか」などと相談することや、直接帰宅せず回り道をして帰る(例えば、コンビニやカフェに寄り道したりする)ことも効果的でしょう。こういう行動により相手は、"気づかれたかもしれない"と思い、侵入の意思を削がれてしまうケースもあります。

また、新居に入居する際に、管理会社に対して「鍵は変えられているか」「使いまわしをしていない新品であるか」ということを確認することが大事であると考えます。経費削減のため、他の物件で使用していた鍵を再利用している管理会社も存在するためです。

できるだけ近所の人と顔見知りになっておくことも、防犯対策として効果的でしょう。犯罪者は、近所の顔を知らない、付き合いが無い状況というのは好条件となります。最近は「個人情報」を理由に、人と人とのつながりを避ける傾向が見られますが、これは防犯上、望ましくありません。

もしご近所付き合いがきちんとしていたら、「変な人がいる」というような情報が入ってくることもあります。また、近所でコミュニティが出来上がっていると、不審者がいるとわかりやすい利点もあります。ご近所づきあいとして、日ごろから挨拶をしておくことが大事であると考えます。

 

戸建て住宅は、庭の手入れや玄関周りの対策が必須

物理的な防犯対策としては、戸建て住宅では周囲からの見通しを確保することが重要です。敷地内をきれいに保ち、ゴミを放置せず整然と保つことも大切です。また、家屋内に高額な物を置かないことも、防犯上の重要なポイントとなります。

また、玄関周りのケアも不可欠です。人感センサーや監視カメラの設置は、侵入を抑止する効果が期待できます。できるだけ防犯性の高いカギを使用することも好ましいと考えます。最近では、我が社でも開発を進めている「血流認証」のような生体認証システムが普及し始めており、玄関周りのセキュリティ機器を充実させることで、より安全性を高めることができます。

何より、不審に感じることがあった場合は、警察に連絡することが大切です。警察は捜査が空振りに終わったとしても怒るようなことはありません。自宅の周りを自転車で巡回してもらったりすると、侵入者側からも警戒されていることが分かるでしょう。日ごろから防犯意識を高めることは、きわめて重要なことなので意識して行動することをお勧めします。

著者紹介

須下幸三(すした・こうぞう)

バイオニクス株式会社 代表取締役

大阪府大阪市出身。関西大学経済学部卒業後、ニチメン株式会社(現:双日株式会社)入社。NY転勤、渡米した先で生体認証システムと出会い、研究へと傾倒する。
また、ふと読んだ論文から「血流認証」が複製不可能な生体認証となり得ることを見出す。
2001年にバイオニクス株式会社を設立。血流認証装置の製品化に成功してから、何度も改良を重ね、誤認証が1人たりとも生じないシステムを目指している。現在は99%の精度を誇る装置の開発まで成功している。

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