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愛猫の死を「自然に任せる」って? 必ずやってくる“看取り”のための心構え

粟田佳織

2025年02月26日 公開


 

飼い猫の多くは飼い主を置いて先立ちます。それは不幸なことではなく、自然なこと。ただ、特にはじめて猫と暮らしているという人にとって、愛猫の命が残りわずかだとは到底納得できないし、がんばって受け入れたとしても、今度は大きな不安に陥ることでしょう。そして考えます。「愛猫の最期をきちんと看取ることができるのか」。はじめてのことは不安がいっぱい。ことは愛する猫の、世界にひとつだけの命。心配するのも当然です。

以下、『まんがで読むはじめての猫のターミナルケア・看取り』(猫びより編集部・編/日東書院本社)より、いつか来る「そのとき」のために知っておきたいことをまとめました。

イラスト:小野崎理香

 

亡くなる前のようす

どんなに手を尽くしても「そのとき」はやってきます。余命宣告・看病を経て死を迎える場合、獣医師の「今日明日では」という診断には、それなりの根拠があるのです。

本来の病巣だけでなく、副作用、貧血、栄養不足など、末期になると猫の体の中ではさまざまなことが起こり、それらと闘う体力が残っていない場合、どんな治療も薬も効果が期待できません。

体温が下がり、心拍数もおち、意識も薄れる。目を開けているのに虚空をみていることも。亡くなる数時間前から呼吸が速く、あるいはゆっくりになり、反応がなくなります。「自然に任せる」のは、そのまま見守ることです。亡くなる前の数分間、発作のような状態になり叫び声を上げる子もいます。

リンパ腫に多い衰弱死は、意識が次第にうすれ、そのまま息をひきとります。見た目には緩やかですが、やせ細った体は痛々しいもの。病気によっては相当苦しそうな状態になることもあります。

心疾患は呼吸困難、腎疾患の場合は尿毒症から激しい痙攣を起こすことも。いずれにせよ愛猫の苦しむ姿は、みている飼い主さんをも苦しめます。ただ、そのときの猫さんの意識はかなり混濁しているため、人間側がみているほど苦しさの自覚がないともいわれています。

 

愛猫の死と向き合う

できれば病院ではなく、自宅で看取りたい。そう考える飼い主さんがほとんどだと思います。でも入院には何かあったときに早めの対処ができるメリットがあります。酸素室などの設備や静脈点滴の処置などで、身体的負担が軽くなる可能性もあるので、病状によっては入院も視野に入れてもよいでしょう。

もうひとつ「安楽死」という選択肢があります。苦しむ姿をみていられない、もう楽にしてあげたい、あるいは飼い主の物理的事情といったものもあるかもしれません。安楽死の是非については、それぞれ考え方があるので獣医師が介入することは多くありませんが、病状によっては勧める場合も。たとえば肥大型心筋症の致死的症状のひとつ「血栓症」の場合、過酷な痛み・苦しみを伴うので、安楽死を検討することもあります。

「死」は、猫に限らずすべての生き物に唯一共通する宿命です。喪失感が生じるのは当然ですが、愛猫が自分のそばで天命を全うしてくれたのは、ありがたいことではないでしょうか。

突然死や不慮の事故で亡くなったり、先天性疾患などで子猫のうちに亡くなったりすることも。そのときの飼い主さんの心痛ははかりしれません。ただ突然死や事故死は闘病というプロセスを踏んでいないぶん、猫さんの負担は少なかったともいえますし、若くしてなくなる子の場合は、辛い時間が短かったという考え方もあります。

そして生きていたときの幸せな時間は揺るぎない確かなものでしょう。
世の中には人知れず亡くなっていく名もなき猫もいます。すべての猫を幸せにすることはできませんが、縁あって自分の前に現れてくれた子の最期には、可能な限り寄り添いたいですね。

 

そばで看取るだけが正解じゃない

看取りは、多かれ少なかれ飼い主の心になんらかの悔いをもたらしがちです。とくに耳にするのは、旅立ちの瞬間、猫さんのそばにいなかったというケースです。

では、そばで看取ることだけが正解なのでしょうか。生き物は自らの意志で死に方やタイミングを選ぶことができません。どんなに思いが深くても、死は人知のおよばない領域であり、いつ、どこでといったタイミングもそれぞれの天命によってちがうものです。

そう思えば、看取りの瞬間のことを飼い主さんがいつまでも思い悩むのは、猫さんも本意ではないのでは。それよりも、生きていっしょに過ごしていた時間のほうがずっとずっと大切だということを、ぜひ元気なうちにかみしめていただきたいと思います。

もちろん、悲しみや寂しさはあって当たり前。無理に抑えるより、自然な感情にまかせてよいと思います。

また、ペットの死はお子さんに命の尊さを伝えるでしょう。ただ、年齢や性格によっては心の傷になるかもしれないので、配慮を心がけてくださいね。

 

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