定年退職後、退職金はどう管理すべきか、投資を始めるべきなのか...不安を感じている方も多いのではないでしょうか。本稿では近著『65歳からは、お金の心配をやめなさい』が話題の経済ジャーナリスト・荻原博子さんにお話しを聞きました。
定年退職後、いつまで働く?
――老後資金に不安を抱えている方は多いはずです。65歳以降も働き続けるべきでしょうか?
自分の苦にならない程度に働き続けるのが良いと思います。例えば夫婦でそれぞれ5万円程度でも稼げば、十分生活の足しになります。実際、65歳以上の男女の6割、70歳以上の男性の4割が就労しています。
また、働くことはお金だけの問題ではありません。サラリーマンは定年退職すると、何もすることがない人がとても多いです。かつての部下との繋がりも切れ、友達もおらず、孤独を感じてうつ病を患う方だって珍しくありません。
ローンを支払い終えていて、子育ても終わっていれば、貯金と退職金で何とか食べていけます。自分がこれまでやりたかったなと思うことを仕事にしてもいいですし。何でもいいから少しでも働いていた方が生きがいのある老後になると思いますよ。
――退職金の使い道について悩む方もいると思います。まず退職金を貰ったら、どうするべきでしょうか?
まず、使わないことです。多くの方が増やそうとしますが、どうせ増えないのでやめた方がいいです。投資に使うのではなく、銀行に入れておきましょう。
これまでの貯金が1000万円、退職金が2000万円、トータルで3000万円あるという方は、1500万円は介護・医療費用に取っておいて、残りの1500万円を年間100万円ずつ、旅行などに楽しく使えばいいのではないでしょうか。
――銀行にお金を置いておかず、NISAなどの投資に回す方がベターという論調が強まっていますが...。
株が好きで、これまでも株をやってきた方や証券会社に勤めていた方は投資をすればいいと思います。退職金を投資につぎ込んで、もし失ってしまったら老後の計画が崩れてしまいます。老後にお金を失うと、これまでのようには稼げませんから二度と元に戻りません。少なくとも、銀行に預けておけばお金はなくなりませんよ。
――お金の管理というと、最近ではキャッシュレス決済も普及してきていますがメリットはあるのでしょうか?
キャッシュレスだと想定よりお金を使ってしまうことがあります。1万円の買い物をするにも、ピっとタッチすれば気軽に買えてしまいますが、現金で1万円札を財布から出して買い物をするのって結構勇気がいりますよね。そういうリアルな現金の感覚を持っておくのは重要です。
目の前に3万円があって、これから年金の支給日までに5日あるなと思ったら、その3万円をどう使おうかって考えられるじゃないですか。キャッシュレスで、そういった目途を立てるのは難しいものです。いまの年金生活者の方にとっては現金の方が馴染んでると思いますし、お金の計画も立てやすいと思います。
子どもに家を残すのは「ありがた迷惑」
――書籍『65歳からは、お金の心配をやめなさい』には"子どもに家を残しても、子どもは困るだけかもしれない"ということが書かれていました。
住宅価格は都心は上がっていますが、全国で見たら軒並み下がっていますし、空き家の増加は深刻です。東京都ですら10軒に1軒は空き家という状況です。地方に行くと誰も住まないような廃墟が山のようにあります。
都会に住んでいる人限定で言えば、子どもが家の相続を望んだとしたら、親子で同居すればいいでしょう。そうすると相続税が安くなります。
ただ物件の価値もピンキリで、麻布の一等地にある一戸建てだったらある程度の財産になるので相続について考えておく必要がありますが...普通の家ですと、子どもたちの中で誰が住むのか決めておくぐらいのことですよね。
誰も住まない家ですと、最近の自治体は物納もさせてくれません。昔は自治体にあげればよかったのですが、今では壊すのにもお金がかかるので受け付けてくれないところもあります。
特に別荘がひどくて、0円物件が山のように存在する別荘地もあります。リノベーション工事の諸経費を払うから持っていってくれ、なんていうやり取りもされています。
――誰も住まない家の場合は、処分の方法を考えておかないといけませんね。
処分するのにも、100万、200万円かかります。お金がかかるケースは想定に入れておいた方が良いでしょうね。子どもに相続するという場合は、揉めないように準備をしておきましょう。
(取材・編集 PHPオンライン編集部 小林実央)