作家の有川真由美さんは「人を変えるのは、小さな習慣の力」だと語ります。私たちが一瞬一瞬、積み重ねていく言葉や行動は、心の習慣になっていくのです。本稿では書籍『いつも機嫌がいい人の小さな習慣』より、"時間の使い方を変えて、 幸せ時間をつくる習慣"をご紹介します。
※本稿は、有川真由美著『いつも機嫌がいい人の小さな習慣』(毎日新聞出版)を一部抜粋・編集したものです。
生活の優先事項を3つ以内に絞る
現代人はほんとうに忙しい。社会生活を送っていると、「やらなきゃいけない」と感じることがつぎつぎに押し寄せてきます。いい仕事をすること、家族サービスをすること、人と交流すること、学ぶこと、運動をすること、服に気を使うこと......。情報をたくさん集め、1日に多くの予定を詰めることが「充実している」と思うかもしれません。
しかし、「たくさんのことをするのがいい」という価値観や時間の使い方は、そろそろ卒業しませんか? あれもこれもと、あきらめない姿勢は、一見、パワフルに見えますが、現実は、どれも中途半端で不満が残り、疲れてしまうはずです。なにより、ほんとうに大切なことがわからなくなってしまうでしょう。
それよりも、自分にとって大切な優先事項を3つ以内に絞って、「あとは適当でいい」と手放してしまったほうが、幸せを実感できます。
私たちが「やらなきゃいけない」と思っていることのほとんどは、実は「やらなくてもいいこと」なのです。やることを広げるよりも、やることを絞って深めていったほうが、「自分はなにを大切に生きるのか?」という自分の軸ができて、充実感も、満足感も得られます。
手放したものは、永遠になくなるわけではありません。「いまは、これを大事にしたい」でいいのです。だれがなんと言おうと「いまは趣味が第一。あとは適当でいい」という人もいるし、「夢に向かって生きる」「家族ファースト」という人もいます。
自分の大切なものをちゃんと理解している人は、幸せで魅力的に見えます。優先事項を絞る習慣で、人生の時間を大切にできるようになるのです。
テレビやスマホをオフにする時間をつくる
長年、多くのビジネスパーソンたちを見てきた占い師の友人が「成功する人の条件」としてあげていたのが、「テレビをつけっぱなしにしていない人」でした。「時は金なり」。彼らは、その行為がどれだけリスキーなのか、よくわかっているのです。
テレビをつけるのはBGM代わり、寂しくないから、情報が得られるからと、なんとなくの習慣。ですが、一度スイッチを入れたら、なかなか消せないのでは?
それもそのはず。テレビとは、頭のいい制作のプロたちが「いかにして長い時間、テレビにくぎ付けにするか?」と知恵を絞ってつくっているからです。
昨今は、スマホのアプリやSNSなどのほうが危険かもしれません。求めるものを提供してくれる"快感"があるために、ダラダラと中毒的に求め続けてしまう......。
多くの人は、テレビやスマホ、いえ、その製作者たちに無意識にコントロールされて、大切な人生の時間を奪われ続けていることに気づかないのです。しかも、情報が入ってくるほど、それを処理するために頭は疲れていきます。
試しに、1〜2時間からテレビ、スマホから離れる時間をつくってみてください。最初は落ち着きませんが、すぐに「時間が増えた」という感覚になるはずです。
家族と会話したり、食事を味わったり、読みたかった本を読んだり......と、大切なことに目が向くようになります。流れてくる情報を処理するだけの受け身の姿勢ではなく、自分で感じること、考えること、気づくことが増えてきます。
さらに「決めたものだけ見る」「決めた時間だけ見る」という習慣ができれば、驚くほど膨大な時間を取り戻せます。時間を無駄にしたという罪悪感を手放し、自分の誇りを取り戻せます。時間の使い方で重要なのは、自分が時間の手綱を握ることなのです。
毎日繰り返される時間を、丁寧に味わう
かつての私の生活は、仕事に明け暮れ、ただ寝に帰るだけという毎日でした。つねに時間に追いかけられているようで、食事は10分ほどで流し込み、お風呂もちゃちゃっと入り、仕事はやってもやっても終わらない......。「いつまでこんな暮らしが続くのか。いつ幸せになれるのか」と出口の見えないトンネルにいるようでした。
しかし、いま、あのときを振り返ると、いいか悪いかはともかく、「あれはあれで、一生懸命で充実していた」とも思うのです。ただ、若かったので、そのことにまったく気づかなかった。「幸せというのは、"なる"ものではなく、"気づく"ものだ」とわかったのは、ずっとあとからです。
もし、あのころの自分に声をかけてあげられるとしたら、「せっかくだから、毎日繰り返される一つひとつの時間を、丁寧に味わってみない?」ということ。
朝起きたときは、キラキラした日差しを喜ぶ。料理をするときは、それを楽しむ。食事をするときは「美味しい」と感じながら食べる。お風呂に入るときは体の疲れを洗い流すようにつかる。寝るときは幸せな気分で眠りにつく......というように。
一つひとつを丁寧にしても、ちゃちゃっとやっても、時間は大きくは変わりません。特別なことで幸せになるのではなく、毎日繰り返されることで幸せになれるのなら、こんなに幸せな暮らしはないと思うのです。
余計なことは考えず、せっかくだから目の前のことを楽しもう、丁寧に味わおうとするだけで、いつもの日常がぜいたくな時間になり、心に余裕が生まれます。日常の些細な幸せを見つけることこそが、笑顔で生きる"知恵"ではないでしょうか。