明治大学や早稲田大学などで述べ1万人以上のZ世代の指導に関わり、300以上の企業や行政機関でコミュニケーションスキルを教える「伝え方のプロ」である、ひきたよしあきさん。ひきたさんによれば、若手を動かすカギとなるのは、リーダーの「伝え方」だといいます。
本稿では「若手の育成で言ってはいけない"10大NGワード"」を、書籍『若手はどう言えば動くのか? ~相手を「腹落ち」させたいときの伝え方~』よりご紹介します。
※本稿は、ひきたよしあき著『若手はどう言えば動くのか? ~相手を「腹落ち」させたいときの伝え方~』(日経BP)を一部抜粋・編集したものです。
若手の育成で言ってはいけない「10大NGワード」
上司は部下にどんな声かけをするか。その言葉を探った本『人を追いつめる話し方 心をラクにする話し方』(日経BP)を書いたのは2022年のことでした。コロナ禍から立ち直り、再び会社に通勤することが当たり前になり始めた頃でした。
しかし、ほぼ1年ぶりに会社に戻ってくると、上司の言い方にカチンとくる。毎日会っているときには気にならなかった言葉が、少し離れてみると「そこまで、言わなくてもいいんじゃないの? 」「何? その上から目線の言い方は?」と改めて気づいてしまった。そんな時代に調査結果をまとめて本にしました。
当時、部下から嫌われた言葉を3つほど紹介しましょう。
●「俺、聞いてないよ」
部下はちゃんと説明しているのに、都合が悪くなると聞いていないことにする。自分よりも先に誰かに説明していたことが判明し、嫉妬まじりに「あいつを優先したのか。俺はまだ聞いていないぞ」と言って圧をかける。ずるい人間の言葉として多くの人がこの言葉を挙げていました。
●「こうなると思っていたよ」
部下が失敗した瞬間に、「俺は口が酸っぱくなるほど言っていたのに、おまえが勝手に進めたからだ。おまえの責任だ」といわんばかりの言葉が「こうなると思っていたよ」。突然はしごを外された気になると不評の集まった言葉でした。
●「俺は、伸びしろがあると思うから、おまえを叱っているんだぞ」
怒っていることを正当化する言葉です。「俺が評価してやっているのだから、それに見合うように働け」という身勝手な言葉。部下のすべてを上司の尺度で測ろうとしています。げんなりしますよね。
3年前に書いた本では、相手のことを「おまえ」と呼ぶ上司が登場します。この言い方は、NGです。私の経験でも、大学生に向かって親しみを込めて「おまえさぁ...」と言ったら、きつい目で私を見て、「『おまえ』呼ばわりはやめてください。パワハラですよ」と吐き捨てられたことがあります。
バカにしないで! 比較しないで! 決めつけないで!
今の時代の上司は、「パワハラ」「セクハラ」になるのが怖くて、部下にどう話しかけていいか分からないと悩んでいるのではないでしょうか。こうした気持ちから、つい部下に猫なで声になってしまう。
あるいは、直接叱ることを回避しようとするあまり、皮肉っぽい話し方になってしまう。若手はこうした言葉に敏感に反応しています。ここでは、若い世代が語る「言われて嫌な気持ちになる7の言葉」を紹介します。
●「やる気がないの?」
経験の浅い若手は、目の前の仕事をどう進めればいいのか分からない。躊躇して手をつけられないでいると「やる気がないの?」と言われる。この一言で、本当に「やる気」がそがれた人も多数いることでしょう。
●「○○さんは、できたのに」
他者と比較されるのが大嫌いな若者たち。多様性を認め合い、自分らしさを大切にする教育を受けてきた彼らは、ライバルを提示されて奮起するとは限りません。むしろ、「あの人より劣っている」とレッテル貼りされた気になってしまいます。
●「普通、そんなことしないよ」
「 普通」と言われても、ビジネスの常識などまだ分からないのが若手というもの。さらにその「普通」が、会社や業界の「普通」でしかなく、自分のどこが、なぜいけないのかが分からない。若手を身勝手に「常識のない人」と決めつける言葉です。
●「分かった? 納得した?」
上司が部下に説明し終わった後に発する一言。言い方のトーンによりますが、「分かった?」「納得した?」と詰められると「分かっていない自分」に罪悪感を覚えるばかりで、逆に「分かりません」が言えなくなる。「分からないことある?」と言ってほしいのに...。
●「これ、前にも言ったよね」
分からないことを再度聞きに行くと、あからさまに嫌な顔をして、ため息をつかれる。「これ、前にも言ったよね」と言って、イライラし始める。これでは身動きが取れなくなり、不明なことがそのままになってしまいます。
●「こう言うとパワハラになるかもしれないけどさ」
この言葉を前置きすれば、どんなパワハラ的なことを言っても許されると思っている。「問題になるから強い言葉では言えないけれど、本音はこうなんだ」という本音が、ひどいパワハラになっている。許されません。
●「男だろ」「女だろ」
相手が若手かどうかにかかわらず絶対に言ってはいけないのは、男女を差別する言葉。特に若手の場合、ジェンダーに関する考え方は、上の世代とは根本的に違います。学生に「今の恋愛ドラマが面白くない点」を尋ねると、「恋愛対象が異性に限定されているところ」という答えが多数返ってきます。
総じて言えるのは、部下の気持ちの中には「バカにしないで! 比較しないで! 決めつけないで!」というプライドがあるということ。私が大学で教えている学生たちは、学校をサボらず、ほぼ毎回出席し、リポートも期日までにしっかりと書いてきます。そしてやる気のある子が大半です。
大切なことは、「今の若い子はダメだ」などと、決めつけないこと。若手の価値観も1人ひとり違います。尊重して向き合いたいですね。