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社会

ゾウの乱獲を防いだ「プラスチック」発明の歴史と、150年後に訪れた深刻な問題

木口達也(日本シーム株式会社 代表取締役CEO)

2026年04月24日 公開

ペットボトルやレジ袋など、プラスチックは今や私たちの生活に深く入り込んでいます。その普及の歴史をひもとくと、便利さの裏で拡大してきたごみ問題や、マイクロプラスチック汚染との切り離せない関係が見えてきます。プラスチックの誕生から高度経済成長期までをたどりながら、私たちの暮らしとの関係を考えます。書籍『僕が使ったペットボトルはどこへ行く? 13歳からのサーキュラーエコノミー超入門』より解説します。

※本稿は、木口達也著『僕が使ったペットボトルはどこへ行く? 13歳からのサーキュラーエコノミー超入門』(クロスメディア・パブリッシング)より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

ゾウを救った!? プラスチックの歴史とは

プラスチックの発明は、象牙(ゾウのキバ)を守るために役立ったと言われています。

いまから150年以上前、1870年ごろのアメリカでは、ビリヤードの玉に象牙が使われていました。象牙はとても高価なため、ゾウの乱獲にもつながっていました。

そのころに登場したのが、象牙の代わりになる人工素材「セルロイド」です。これは、天然由来の材料をもとに人の手でつくられた「人類初のプラスチック」でした。

しかし、もともとは動物の保護に役立ったと言われていたプラスチックが、やがて、海や陸で分解されないまま何十年、何百年も残ってしまう「プラスチック汚染」などのさまざまな問題を生むことになろうとは、当時の誰も想像していなかったのです。

 

合成プラスチック時代の幕開け

セルロイドの開発から40年ほど経った1907年、ベルギー生まれのアメリカの化学者レオ・ベークランドが、世界で初めて「合成ポリマー」からプラスチックをつくることに成功しました。

その名も「ベークライト」。

熱に強く、電気を通さず、さまざまな形に加工できるという性質を持っていて、電話機やスイッチ、ラジオの部品などに広く使われるようになりました。「合成プラスチックの時代」は、ここから始まったのです。

ちなみにベークライトは、1950年代にポリプロピレンなどのより性能のいいプラスチックが普及するまでの間、多くの製品に使われることになります。

 

【豆知識】
「ポリマー」とは、「モノマー」と呼ばれるとても小さな粒(分子)が数百〜数万個以上もつながってできた、分子量の非常に大きい「高分子化合物」のこと。そして、石油などを原料に人工的に合成された高分子化合物を「合成ポリマー」と呼びます。

 

プラスチックの黄金時代

その後、20世紀前半から中盤にかけての約30年間は「プラスチックの黄金時代」と呼べるほどの発明ラッシュが続きます。

・1920年代: ポリスチレン(発泡スチロールなどの原料)がポリマーとして認識される
・1930年代: ポリエチレン(レジ袋やボトル類)、ナイロン(衣類)などが発明される
・1940年代: ポリエステル、アクリル、ビニールなどが次々と開発される
・1950年代: プラスチックは安くて軽くて便利な「夢の素材」となり、その用途は食品容器・家庭用品など生活の中に一気に広がる

わずか30年ほどの間に、私たちの暮らしを大きく変える素材が次々と生まれたのです。

 

第2次世界大戦期は軍需品として重宝される

この時代の最も大きな出来事は、なんといっても戦争です。

第2次世界大戦(1939~1945年)の期間中、プラスチックは軍需品として大量に使われるようになります。
金属が不足する中で、軽くて加工しやすいプラスチックは、兵器や飛行機、通信機器の部品として重宝されたのです。

そして戦後、プラスチックはさらなる転機を迎えます。技術が広く民間へと移り、プラスチック製品が一気に家庭に広がっていくことになります。

 

高度経済成長期が普及を加速した

家庭にプラスチックが大きく普及していくきっかけとなったのが、高度経済成長期でした。

日本における「高度経済成長期」とは、一般的に1954年(昭和29年)ごろから1973年(昭和48年)のオイルショック直前までの約20年間を指します。この時期、日本は戦後の復興を終え、年平均で実質10%前後の経済成長率を記録しながら、世界有数の工業国へと成長していきました。

そしてその中で、次のような生活基盤がどんどんできていったのです。

・大規模なインフラ整備(新幹線・高速道路)
・大量生産・大量消費社会の始まり
・家電の「三種の神器」(テレビ・冷蔵庫・洗濯機)の普及
・スーパーマーケットの普及

 

いつの間にか、身の回りにあふれたプラスチック

この便利な暮らしは、次のような3つの流れを生み出しました。

 

①家庭用プラスチック製品の登場と普及

この時代に、ポリエチレンやポリプロピレンなどの合成樹脂を使った家庭用品が急増しました。もともと木や金属、ガラスなどでつくられていた洗面器やバケツ、コップ、弁当箱、おもちゃなど、身の回りの多くのものがプラスチックに置き換わりました。

②使い捨て文化の定着

「衛生的」「軽い」「安い」という理由から、食品包装・レジ袋・使い捨て容器の使用が急拡大し、プラスチックが、一度使ったらすぐ捨てる「消費スタイル」の中心となりました。

③大量生産・大量消費・大量廃棄の時代へ

「早く、安く、たくさんつくる」という価値観が社会全体に広がり、プラスチック製品が毎日のように消費されることが「当たり前」となりました。

 

「夢の素材」が「捨てることが前提の社会」をつくってしまった

このように、プラスチックは一時期、「豊かさの象徴」でもあり、「夢の素材」として歓迎されました。けれど、その裏で、「捨てることが前提の社会」が着々と形づくられていったことも確かです。

『昭和60年版環境白書』によると、東京都で集められたごみの中でプラスチックの占める割合は、高度経済成長期の1965年から1970年のわずか5年間で、3.8%から10.1%へと一気に3倍近くに増加していたとのこと。

高度成長期はプラスチック社会の始まりでした。同時に、いま私たちが直面している「ごみ問題」や「マイクロプラスチック汚染」も、この時代からすでに始まっていたのです。

 

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