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初期の認知症の人が「音読」したら...精神科医が教える脳を活性化させる習慣

保坂隆(精神科医)

2025年08月25日 公開

初期の認知症の人が「音読」したら...精神科医が教える脳を活性化させる習慣

女優の森光子さんは90歳近くまで舞台に上がり続けましたが、何十年も風邪一つひかなかったそうです。その健康の秘訣として知られるのは、毎日欠かさず塩水で鼻うがいをし、高齢になってからも、スクワットを何十回もしていたこと。さすがですね。

さまざまな世界で長く活躍されている方たちは、皆さん、健康に対する意識が高く、それぞれ努力をされています。もちろん、現役で仕事をされている責任感もあると思いますが、「何歳になっても健康で過ごしたい」と願うのは誰でも一緒です。

では、健康で、病院や薬の世話にならない生活を送るためには、どうしたらいいのか? 実はそのほとんどが、それほど難しいものではなく、日常の小さな改善の積み重ねにあります。

本稿では、日常の中でちょっとした心がけで脳を活性化させる方法「素足で過ごす」「本を音読する」について精神科医の保坂隆さんに解説して頂く。

※本稿は、保坂隆著『精神科医が教える 心と体の「老後のイキイキ健康術」』(PHP文庫)より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

足の裏を刺激する──「素足で過ごす日」をつくってみよう

「いやぁ、この間、足つぼマッサージに行ってみたら、もう痛いの、痛くないのって」
「どっちなんだい?」
「ものすごく痛かった......」

経験した方はご存知でしょうが、足つぼマッサージでは、体調や押される場所によって、思わず「痛い!」と声をあげてしまうようなことがあります。

痛みを感じるのは、足の裏にたくさんの"ツボ"があるためです。それぞれのツボは体全体とつながっていて、刺激されたことで痛みを感じるときもありますが、その後で、血行がよくなって体調が改善されることもあるそうです。

「足の裏なんて......」と、多くの人は、あまり気にすることもないでしょう。しかし、中国では2千年以上も前から、健康の維持には欠かせない体の部位として注目されてきました。

日本人が長寿なのは「素足でいることが多いからだ」とする説もあります。

欧米人の生活とは違って、日本では家の中で靴を脱ぎますし、夏になるとサンダルや下げ駄たで出かけます。靴下もはかないので、足の裏はさまざまな刺激を直接受け、それが全身の血流を促し、健康につながっているというわけです。

そういえば、園児たちを素足で遊ばせるようにしたところ、風邪をひきにくくなったという報告が全国の幼稚園や保育園から寄せられています。やはりこれも、足の裏にあるたくさんのツボを刺激することで、免疫力などがアップしたと考えられますね。

「そんなにいいものなら、足つぼマッサージへ行ってみよう」
と思うかもしれませんが、わざわざお金を出してマッサージを受ける必要はありません。週に1度、素足で過ごす日をつくるだけで十分です。

試しにやってみると、今までは気がつかなかった畳や床の凸凹、ザラッとした砂やホコリなどを感じたりするはずです。その感触や刺激によって、脳は大いに活性化します。

足の裏で、とくにシニアに注目してほしいのが「湧泉(ゆうせん)」というツボです。足の裏のほぼ真ん中、足の指を曲げるとくぼむところで、親指と人さし指の間から、かかとに向かって5~6センチほど離れたところにあります。

このツボは、老化防止や集中力、やる気の向上に効果があるとされるので、手の親指の腹や、階段のへりなどを使って押してみてください。

足といえば、あちこちで「足湯」を見かけるようになりました。
足には太い血管が通っているため、足湯に入るだけで全身の血流がよくなり、脳にも新鮮な血液が大量に運ばれます。これが脳にとっても、いいことなのですね。

もちろん、普段の生活で足湯を楽しむのもけっこうです。バスタブに足が浸かる程度のお湯を張って、縁に腰かけていてもいいでしょう。

時間の目安としては、15分ほど。脳に新鮮な血液が大量に送られ、頭が冴えてくるのを感じられるはずです。

 

「集中力の低下」に悩んだら、新聞や本を音読してみよう

ある人から、こんな相談を受けました。

「リタイアしたら思いきり読書をしようと思っていたのですが、実際に読み始めると5分もしないうちに飽きてしまって、まったく読み進められないんです」

たしかに、読書には、思いのほか集中力がいるものです。しかし、集中力は歳を重ねるとともに低くなっていきます。そのため、ある程度の年齢になった人、なかには40代で集中力の低下に悩む人もいるようです。

訓練で集中力を取り戻すこともできますが、読書というせっかくの楽しみのために、つらい思いをするのは本末転倒のような気がします。

そこで私は、このような悩みをもつ人には、「他人に迷惑のかからない場所で、15分ずつ音読してみてはいかがですか」と勧めています。

言うまでもなく、音読とは声を出して活字を読むこと。簡単なようですが、いざやってみると、これがなかなか難しいのです。

漢字や登場人物の名前の読み方、文章全体がもつ意味などをしっかり理解していないと、納得のいくような音読にはなりません。しかし、それだけに、うまくできたときの満足感と、脳への効果には大きなものがあります。

黙読では、文字情報は「目→脳」という一方通行です。しかし、音読をすると「目→脳→発声器官→耳」と複数の器官を使うため、脳は著しく活性化するのです。

音読をすると、ミラーニューロンという特殊な神経細胞が活発に働きます。これまで、ミラーニューロンは体を動かすのに深く関わっている脳の運動前野という領域に存在すると言われてきました。しかし、それが感情や思考などに関わる前頭葉にもたくさん存在するとわかったのです。

音読でミラーニューロンを活性化させれば、運動能力だけではなく、脳の働きそのものがよくなる可能性が高いというわけですね。

「声に出しただけで、そんなに違いがあるのか?」と驚く人がいるかもしれません。

しかし、ある老人施設で、認知症の初期症状が見られるお年寄りに1日15分間、本を音読してもらったところ、1ヵ月後にはオムツが要らなくなる人が続出したという結果も出ています。このオムツ離れは、音読が脳にとってよいトレーニングであることの証と言えるのではないでしょうか。

ただし、いくら脳の活性化やトレーニングによいからといって、朝から晩まで音読をし続けるといったことはやめておきましょう。

音読は脳を活性化させますが、それだけに脳の疲労も伴ないます。一度にする音読の時間は15~30分程度。それ以上はかえって逆効果です。

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