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有本均・元ハンバーガー大学学長のモチベーションメソッド

有本均(ホスピタリティ&グローイング・ジャパン社長)

2013年01月16日 公開 2021年07月12日 更新

 

 運・不運に左右されない努力ポイントを見つける

自分が周囲に比べて遅れをとっているように感じて、モチベーションが下がった時期もあります。80年代のマクドナルドは店舗数が急拡大していて、店長を3~5年経験したらスーパーバイザーに昇格していく人が大半でしたが、私は8年間も店長のままでした。

若いころは出世欲もありますから、ほかの店長たちがどんどん昇格していくのをみれば、落ち込むのも仕方がありません。

そのとき、自分にしかない強み、それも運・不運に左右されない強みをもつことで、自信を取り戻そうと考えました。

店長は当然、売上げや利益で評価されます。マクドナルドでは、それに加えて、別の評価基準も重視します。それが「QSC」、つまり「品質(Quality)、サービス(Service)、清潔さ(Cleanliness)」です。

売上げや利益は、「近くに競合店ができた」などといった運・不運に左右されますが、QSCは店長の実力をそのまま反映します。ですから私は、QSCで圧倒的な強みを発揮できる店長になろうと決意し、それをモチベーションの源泉にしたのです。

品質については店舗によって差はあまり出ませんが、サービスと清潔さは、店舗によってかなりの差が出ます。そこを強みとし、会社や上司に評価されるようになってからは、再び高いモチベーションで働けるようになりました。

もう1つ、いまでも私が心がけているのは、つねに短期の目標を設定し、それに集中するということ。「10年後や20年後を見据えた長期の目標をもちなさい」という人もいますが、それだけだと「10年後はこうなりたいが、いまはまだやらなくていいだろう」と思ってしまう。

今日の目標や今週の目標といった短期の目標を設定し、それを必ず達成していくという積み重ねによって、モチベーションを高いところで安定させることができるというのが私の考えです。

たとえば店長時代には、QSCを高めるための大きな目標を小さく分解し、毎日の目標に落とし込む作業をしていました。

「お客様へ商品を提供する時間を短縮する」というのが大きな目標だとしたら、現状では注文を聞くのに何分かかっているか、コーヒーやバーガーを出すのに何秒かかっているか、といったところまでブレイクダウンしていきます。

すると、どこで時間がかかっているのかがみえてくる。コーヒー用の砂糖を出すのに時間がかかっているとわかれば、「今日はその時間を短縮しよう」という短期の目標が設定できます。

その目標を達成したら、また翌日は別の目標を設定し、それをクリアするために集中する。これを繰り返していれば、高いモチベーションを保てるはずです。

 

有本流 仕事のモチベーションの上げ方

(1)苦手な上司と真剣に仕事の話をする
ウマが合わない上司に当たると、モチベーションが下がるもの。しかし、上司を避けるわけにはいかない。自分から真剣に仕事の話をすることで、上司との関係性を変えていく必要がある。

(2)運・不運に影響されない目標を立てる
売上げや利益には、競合の動向や環境の変化など、自分ではコントロールできないことも影響する。自分が頑張れば、頑張っただけの成果がきちんと出る目標を定めれば、モチベーションにつながる。

(3)短期的な目標を立てる
長期的な目標を立てると、いまやるべきことを明確にしにくい。いまやることをリストアップし、それを着実にやり続けていれば、モチベーションが高い状態を長く維持できる。

 

有本 均

(ありもと・ひとし)

〔株〕ホスピタリティ&グローイング・ジャパン代表取締役社長

1956年、愛知県生まれ。早稲田大学政治経済学部入学後、1年生からマクドナルドでアルバイトを始め、1979年に日本マクドナルド〔株〕に入社。店長、スーパーバイザー、統括マネジャーを経て、社員教育機関である「ハンバーガー大学」の学長を務める。2003年、〔株〕ファーストリテイリングの社員教育機関である「ユニクロ大学」大学部長に就任。その後、〔株〕バーガーキング・ジャパンの代表取締役などを経て、2012年より現職。サービス業界の中小企業を対象に、人材育成のノウハウを提供している。グローイング・アカデミー学長。

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