[仕事ダイエット!] 残念な人ほど「資料・メール」に時間をかける
2013年01月29日 公開 2024年12月16日 更新
《PHPビジネス新書『仕事ダイエット』より》
仕事ダイエットのススメ
「ムダな仕事を見直したら?」こんなアドバイスをよく聞くが、慰めにすらならない。
――本当にムダなことなどやる時間がない。今やっている仕事は必要だから、やらなければならないからやっているのだ。こうなったら同じ量の仕事を短い時間でこなす以外にない――。
そのように考えているあなたにお勧めしたいのが、「仕事ダイエット」だ。
カラダのダイエットは摂取カロリーを減らすだけでは成功しない。筋肉量を増やさなければリバウンドしてしまう。また、カロリーを減らすだけでなく、よい食べ物を摂りながら適切なトレーニングをすることが必要だ。
これを仕事に置き換えよう。
仕事のダイエットはムダを省くだけでは成功しない。仕事のスキルを上げなければ、すぐに元の仕事量にリバウンドしてしまう。また、ただ仕事を減らすだけでなく、よい仕事をし、適切なトレーニングをすることが必要だ。
とはいえ、仕事の範囲は広い。どこから手を付けるべきか……。
悩めるあなたへの私の提案は、まず資料とメールのダイエットに着手することである。これからその理由を説明しよう。
なぜ今さら資料とメールなのか
書く技術の重要性が、いまだかつてないほど増している。現代のホワイトカラーの仕事の中心は文章を書く――メールを書く、資料を作る――ことであるといっても過言ではない。
あなたの1日、あるいは1週間の時間の使い方を振り返っていただきたい。いったい、どれくらいの時間をそれらに費やしているだろうか?
私の調査では、内勤の方で業務時間の8割、営業の方でも5割程度はPCの前に座っている。それらの時間のうち、半分以上はメールや資料の読み書きのはずだ。
あるいは、最近はスマホやタブレットを使って移動中でもメールを書いている方も多いだろう。さらに、プライベートの時間でもやはりメールを頻繁にやり取りされているに違いない。
いまや1億総書き手時代である。このような状況はほんの少し前には考えられないことだった。私の学生時代を振り返ってみても、文字を書くといえばレポートを書く、試験を受ける、ノートを取るといった程度。プライベートでは、せいぜい年に何回か手紙を書くくらいだった。
それが、今は「年に何回か書く程度の手紙」を「毎日何通も」書いている。
そのような環境によって、コミュニケーションのスピードは格段に増した。プライベートでもいろんな人との連絡をマメに、気軽にできるようになった。また、PCソフトの充実により以前はプロしか作れなかったカッコイイ資料も自分で作れる。
しかし、あらゆるプラスにはマイナスが伴う。それは、書き方を知らない人でもカンタンに書け、気軽に多くの人に送ることができてしまうことから生じる問題である。
文章は書いたとおりにしか伝わらない
自分の頭の中にあるイメージどおりに、自分の考えを人に伝えたいものである。ところが、適切な言葉を選んで、わかりやすい順番で組み立てるのは容易ではない。だから往々にして、作った文章は自分のイメージどおりでなかったりする。
しかし、文章は書いたとおりにしか相手に伝わらない。表情で察してもらったり、対面や電話の時のように相手に言葉を継いでもらったりするようなことはできない。
だから、まず正しく書かなければならないのだが、これがなかなか難しい。適切な言葉を見つけるのに悩むのは誰にでもあることだが、それは書き手に閉じた、書き手側の悩みである分まだましだ。
厄介なのは、自分では正しく書いたつもりでも、句読点の打ち方が不適切だったり、指示代名詞の指している内容が不明確、5W1Hが抜けていたりすることで、正しく伝わらない場合である。
さらに、内容が正しく書かれていたとしても、まだまだいくつかのハードルがある。
自分が答えを出した順番と、相手が理解する順番は異なるものである。たとえば新しいアイデアを披露する場合を考えてみよう。新しいアイデアは「飛躍」によって生まれる。しかし、それを説明する際には、相手が飛躍しなくていいよう、結論と理由のあいだをきちんと埋めてあげなければならない。
また、内容によっては、自分が対象について考えているほど、相手はそのことを重要だとは思っていないこともある。頼まれた仕事以外は、往々にしてそうである。
その場合は、内容の説明に入る前に、相手にその重要性を認識してもらうところから始めなければならない。さらに、現代のホワイトカラーは忙しい。専門用語が多い、漢字が多い、抽象的、長いといった文章は敬遠されがちだ。
このような配慮に欠けていると、せっかく時間をかけて書いたメールや資料は正しく伝わらないどころか、そもそも読んでもらえない可能性すらあるのだ。
この中で指摘しているポイントの中には、あなたが既に知っていることも含まれているだろう。「要点を簡潔に記す」「結論から書く」「ダラダラ書かない」などといったことは、おそらくあなたは何百回と耳にしている。しかし、実際に自分ができているかどうかは別の話である。