職場の人間関係がうまくいかないのは「スキーマ(思い込み)」のせいかもしれません。
スキーマは、成長過程で身についた「世界を捉えるフィルター」のようなもの。一旦身についたスキーマは、私たちの信念やコンプレックスとして、仕事の成果や人間関係にも影響を与え続けます。
本稿では、臨床心理士・中島美鈴さんの著書『会社でいちいち傷つかない 認知行動療法が教える、心を守り成果を出すための考え方と行動』より、このスキーマを調整するテクニックを紹介します。
※本稿は、中島美鈴著『会社でいちいち傷つかない 認知行動療法が教える、心を守り成果を出すための考え方と行動』(日経BP)より一部抜粋・編集したものです。
「わりきる」って具体的にどうするんですか?
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いわゆるポーカーフェイスができないタイプ。社会人になるとみんな本音と建前をうまく使い分けて、会社では感情的にならずにやってる。でも私はどうしても好き嫌いが顔に出てしまう。大人気ないけど。パワハラとか言われてしまったらどうしよう。
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人間関係にまつわるイライラや好き嫌いの感情は職場ではつつしむべきということは誰もがわかっていることでしょう。しかし私たちは感情を持つ生き物。なかなかコントロールできないので苦労するわけです。
現に職場におけるストレスの中でも、大部分の人が悩んでいるのが「人間関係」の問題です。対処法を知っていれば、ずいぶんとストレスを減らすことができます。具体的にどうしていけばいいのでしょう。
まず、お伝えしたいのは、職場の人間関係におけるネガティブな感情そのものは悪いものではないということです。
好き嫌いを抱いてしまうことそのものは防ぎきれないし、しょうがないものです。この好き嫌いの感情だけなら、割とシンプルな話なのです。しかし、私たちがつらくなるのは、その背景に「この人とうまくやらなければ」という思い込み(スキーマ)がある場合です。
私たちは物心ついた頃から「みんなと仲良くしましょう」と教えられてきました。揉め事を起こす人よりは上手く収める人の方が重宝されます。そのため過度に「人に対してネガティブな感情を持っていてはいけない」と自ら抑圧しているのです。嫌いな人にはそれなりの対応でよいだろう、と思えるともっとラクなのですが。ではどうしたらいいのでしょう。「みんなと仲良く」といった規範を、働く大人向けにアップデートするのです。
スキーマを職場に合わせて調整する
スキーマを現在の職場に合わせて調整するのです。具体的には、「職場は学校やプライベートの人間関係と違って、あくまで生産性を上げて利益を追求する場なのだ。人間関係がいいと円滑ではあるけれど、あくまでそれは副産物であって、最大のアウトプットは生産性なのだ」と考えるのです。簡単にいえば「仲良くできるに越したことはないけれど、重視すべきは仕事の結果」ということです。
こうしてスキーマレベルで書き換えを試みても、すぐには変われないものです。そこで、行動レベルでもう少し変化を加えます。苦手な人から不意に話しかけられたことを想定して、事前に対応を考えるのです。こういう「不意打ち」の時には、慣れ親しんだスキーマが反射的に出てきてしまいます。咄嗟に「仲良くしなくちゃ!」と思ってしまうのです。
やること、やらないことを事前に決めて、それ以外は、あくまで仕事の生産性を下げないために、最低限の交流を保つように気をつけます。
例えば、こんなふうに、すること、しないことを決めてみるのです。
【職場で苦手な人にもすることリスト】
・仕事のいわゆる「ほうれんそう」
・挨拶
・謝罪
・ランチタイムや飲み会などでの複数人での雑談
【職場で苦手な人にしないことリスト】
・その場を取り繕うための雑談
・心にもないお世辞を言う
・プライベートな旅行のお土産を渡す
・業務の範囲を超えたお願いを聞くこと
・プライベートなことへの質問の回答(代わりに「まあ、まあ、まあ......」などと濁す)
・プライベートの相談
・その人から褒められよう、好かれようと期待すること
リストアップしてもなお、「そんなことしたらどう思われるか」と心がざわついてしまう方は、スキーマが関連していないか見直してみましょう。
「みんな仲良く」「この人とうまくやらなければ」といったスキーマが発動していませんか? もう一度言いますが、職場は生産性を上げる場所で、そうしている限り文句を言われませんし、クビにもなりません。