左から白木凛さん、水登マヤさん、窪美澄さん
第25回「女による女のためのR-18文学賞」の授賞式が、2026年6月1日に開催されました。
本賞は、これまでに窪美澄さん、町田そのこさん、宮島未奈さんなど、現在の文芸界を牽引する多くの人気作家を輩出してきたことで知られています。
第25回となる今回は、1052作品にのぼる応募が寄せられました。厳正な選考の結果、大賞には水登マヤ(みと・まや)さんの「水を得にゆく魚」、友近賞には白木凛(しろき・りん)さんの「曇る母へ」が選出されました。
選考は、新潮社の女性社員による一次〜三次選考を経た後、選考委員を務める窪美澄さんと東村アキコさんが最終候補作品の中から受賞作を決定。また、タレントの友近さんが単独で選考する「友近賞」も設けられています。
本稿では、大賞・友近賞を受賞したお二人のスピーチを紹介します。
受賞作品のあらすじ
大賞を受賞した水登マヤさんの「水を得にゆく魚」は、市役所で働く女性・真由子と、二人の外国籍女性との関わりが描かれます。住民税滞納で口座を差し押さえられ、市役所で真由子に窮状を訴える女性・ラン。真由子の叔父の妻で、フィリピンへの帰省を間近に控えるリカ。二人の行き場のない苦悩に触れた真由子は――。
友近賞を受賞した白木凛さんの「曇る母へ」は、28歳の皐月と母の物語です。母は、離婚や別れた父の死去、パート先の退職を経て、徐々に心身ともに衰弱してゆきます。明るく、太陽のようだった母の変化は、皐月には抱えきれないほど重く......。「母と娘」という永遠のテーマに真正面から対峙しています。
(出典:株式会社新潮社プレスリリースより)
水登マヤさん「覚悟を持って書かなきゃいけない」
水登さんはまず、授賞式のスピーチを準備していた際のエピソードを披露。「スピーチで面白いことを言った方がいいですか」と担当編集者に聞くと、「そういうのは大丈夫です」と食い気味に返されたといい、「今日は落ち着いて、厳かにお話したいと思います」と語って、会場を笑わせました。
本賞への応募に至るまでの経緯については、幼い頃から小説家になることを「なぜか疑っていなかった」と振り返りつつ、本気で小説を書き始めたのは約4年前だと明かしました。以来、本賞に応募を続け「こうして今年拾っていただけて、本当にありがとうございます」と感謝を述べました。
小説に対する思いについては、「あらゆる表現方法の中で一番、人間の肉体に近いもので、その分ごまかしの効かないものだと思っています」と語りました。受賞によって書き続ける場を得たことへの責任と怖さを感じながらも、「どんどん書きたいことが出てきている状態なので、覚悟を持って書かなければいけないと思っています」と力強く述べました。
白木凛さん「この年齢でも夢を叶えられる、夢がある世界」
続いて登壇した白木凛さんは、現在37歳で、小説家を志したのは35歳頃だったと明かしました。今回の受賞については、「この年になってもまだ夢を叶えることができるんだ」と驚きを語るとともに、「すごく夢がある世界だなと思いました」と喜びをにじませました。
また、受賞作「曇る母へ」が実体験を下敷きにした作品であることにも触れ、「見たことのない景色を母とも一緒に見ることができて、感無量です」と思いを語りました。
白木さんは終始穏やかな表情を浮かべながら、「感謝の気持ちを忘れず、いい作品を紡いでいけるように精進してまいります」と締めくくりました。
受賞作、受賞のことば、ならびに選考委員による選評は、「小説新潮」5月号に掲載されています。