写真:小池彩子
テレビ番組「プレバト!!」(MBS/TBS系)の水彩画コーナーで大人気の絵の先生・野村重存さんは、「絵のセンスや才能がない」と思っている超初心者、さらにその前段階の初心者未満の人でも、「必ず上手な絵を描くことができる!」と語ります。
本稿では絵の超初心者・Iさんが、"絵の上達のいちばんの近道"について教えてもらいました。
※本稿は、野村重存著『野村重存の世界一わかりやすい絵の授業』(PHP研究所)から一部抜粋・編集したものです。
絵がうまい人、へたな人の違い
I:私、絵についてなにも知らない超初心者ですが......、今日から野村先生に弟子入りさせていただきます。どうぞよろしくお願いします。
野村:こちらこそ、よろしくお願いします。ところでIさん、なんであらためて絵の描き方を学んでみようと思ったんですか?
I:実は、私、びっくりするほど絵を描くのがへたなんです......。私の絵のレベルを知っていただくために、まずは下を見てください。
野村:あぁ〜、なるほど......。まぁ、あの、味のある猫の絵だと思いますよ。
I:......野村先生! この絵、犬です! 柴犬なんです!
野村:あっ、柴犬でしたか。ごめんなさい。のびしろに期待ですね!
I:こんなふうに、描いた絵を人に見せると微妙な反応が返ってくることが多くて、絵をうまく描けないことが昔からコンプレックスなんです......。
野村:そうでしたか......。学校の図画工作や美術の授業で絵の描き方を一から教えてくれることってないので、Iさんみたいに感じている方、多いかもしれませんね。
I:自分には絵のセンスはないと、ずっと思ってきました。でも、野村先生が講師をされているテレビ番組を観たとき、お手本で描かれた絵が本当にすばらしくて、心を奪われたんです。「こんな絵を自分も描いてみたい!」という気持ちがむくむくとわいてきて、今回、野村先生に弟子入りさせていただきました。
野村:なるほど。絵を描くことへのコンプレックスを克服するのが目標ですね。
I:はい。それと、私には趣味と呼べるものが特にないので、「絵を趣味にできたらすてきだなぁ」という思いもあります。身近なものや人、心に残った風景などを、サッサッサッと描けたらかっこいいなと。
野村:私は絵の描き方を教える講師をして35年になりますが、私の教室には90代の生徒さんもいるんです。Iさんが今日からはじめて続けていけば、絵は一生ものの趣味になると自信を持ってお伝えできますよ。
I:90代の方も! 私も負けないようにがんばります。
野村:ちなみに、Iさんは「絵がうまくなりたい」と考えていると思いますが、絵を描くのが「うまい」って、そもそもどういうことだと思いますか?
I:うーん......。野村先生の絵みたいに、見た瞬間に「お〜!!」と感動するようなリアルな絵が描けることでしょうか。
野村:でも、世の中には、リアルな絵ではないけれど、すてきな絵を描く人もたくさんいますよね?
I:たしかに......。あらためて聞かれると、うまく言葉にできないです......。
野村:私は「絵にうまい、へたはない」と思っているんです。唯一、基準があるとすれば、描き手が描きたいと思っている絵を描けているかどうか。さっきの柴犬の絵も、もしIさんが「こういう柴犬を描きたい!」と思って描いたなら、それは「うまい」と言っていいんです。
I:でも、私は、野村先生みたいなリアルな絵を描きたいんです......。
野村:そうですよね。Iさんみたいに描きたいイメージがあるのに、手が思うように動かないのは、やっぱり残念です。というわけで、この授業では、そのお悩みを解決します。現実感のあるリアルな絵を描きたいと思っている人が、その意図通りに描けるようになる。この授業での「うまくなる」とは、そういう意味です。
I:目標が明確になりました!
絵をなぞることの意外な効果
野村:絵の上達のいちばんの近道は、とにかくまねてなぞることです。本当に効果がありますよ。私も学生のころ、なぞり描きをたくさんやりました。レオナルド・ダ・ヴィンチのスケッチなどを何度も何度もなぞって、「こうやって描けば、こう見えるのか!」という感覚を身につけていったんです。なかでも、りんごは古今東西、デッサンの練習に必ず使われる題材で、私自身、今でも繰り返し描きます。そのくらい奥が深い題材なんです。それに、なぞり描きは、頭だけで考えるクセをほぐす、いい訓練になるんです。
I:頭だけで考えるクセをほぐす?
野村:お手本、つまり他人が描いた線って、自分の思考とは違いますよね。それを無心になぞることで、自分の固定観念や思考のクセがほぐれていくんです。Iさんの「りんごは、まんまるで、つるつるしている」という固定観念や、「りんごを曲線で描きたくなる」というクセもリセットされていくでしょう。
I:私、ついつい頭でっかちになるので、絵がうまくなって、しかも思考がやわらかくなるなんて最高ですね!
野村:そうですよね。なにより、絵を描くって本当に楽しいですから! 私のお手本以外にも、練習として、いろいろな絵をなぞるといいですよ。好きな絵をスマホで撮ってプリントアウトすれば、それがそのままなぞり描きのお手本になります。絵だけじゃなく、写真をなぞるのもおすすめです。
I:写真もですか! ちなみに、お手本をなぞるときのコツはありますか?
野村:「ゆっくり、ゆっくり」「とぎれ、とぎれ」になぞることです。そうすれば、お手本がどんな線で描かれているかを確認できます。
I:わかりました! 意識してみます。
野村:それと、1回だけで終わらず、お手本を何度もコピーして、繰り返し、繰り返しやってみてください。やるたびに必ず発見がありますから。
I:絵を描くって本当に地道なんですね。とにかく、まずは野村先生のお手本のなぞり描きからはじめてみます。