親の言動がその後の人生に影響を与えていると感じる人は少なくないでしょう。良かった言動も、嫌だった言動も、思わぬ形で自分の中に刷り込まれているものです。ライフコーチの三凛さとしさんは、著書『こころの毒出しノート』にて日常的に抱えるモヤモヤを「書く」ことによってうまく付き合えるようになる方法を解説しています。本稿では同書から、子どもの頃の親の態度を振り返り、自分の中にあるわだかまりをとらえ直すワークをご紹介します。
※本稿は三凛さとし著『こころの毒出しノート』(飛鳥新社)より一部を抜粋・編集したものです。
親の「良かったこと」から受け取ったデメリットを見る
親がしてくれたこと
守ってくれたこと
支えてくれたこと
当時は「良いことだった」「ありがたかった」と受け取っていた出来事から、その後の人生にどのような影響が残っているかを見ていきます。
ここで扱うのは、感情の是非や感謝の有無ではありません。その出来事が、現在の反応や選択にどのようにつながっているかという点のみを確認します。
良い出来事は基準になりやすい
親の言動を「良かった」「正しかった」と受け取った場合、それは無意識のうちに基準として残ることがあります。基準が残ると、私たちはどうしても比べてしまうものです。
この比較は、親に対する評価ではなく、自分自身への評価として現れることが多くなります。
たとえば、親同士の関係が安定していた家庭で育った場合。大人になって自分のパートナーシップが思うようにいかないとき、次のような反応が出ることがあります。
自分はうまくやれていないのではないか
同じように築けていない気がする
何かが欠けているように感じる
これは、現在の関係性そのものよりも、過去に形成された「良い関係像」との比較から生じています。
親が努力家であった、学歴や実績があった、責任感が強かった場合も同様です。それを「良いこと」として受け取っていると、
自分はまだ足りない
同じ水準に達していない
別の道を選ぶことに後ろめたさを感じる
といった反応が残ることがあります。
尊敬の感情と、自己否定が同時に存在する状態です。
評価が残ることの影響
親の言動を「悪い」と評価した場合は、怒りや反発として残りやすくなります。
一方で、「良い」と評価した場合は、比較や罪悪感として残りやすくなります。
どちらの場合も、評価が固定されている限り、人生のどこかで反応が生じます。
今日のワークは、その評価を外すための準備です。
親の「良かった言動」から生じたデメリットを書くワーク
今日は、親の「良かった」と感じていた言動を1つ選び、そこから生じたデメリットを整理します。直接的な影響だけでなく、その後の展開を経て生じた間接的な影響も含めて書き出します。
(0)1分・ズボラ瞑想
目を閉じ、鼻呼吸を行います。
(1)親の言動を1つ選ぶ
「良かった」と感じていた言葉、態度、雰囲気を1つ選びます。
(2)デメリットを書く
その出来事から生じたデメリットを、直接・間接を問わず20個以上書き出します。
例:他人の期待を基準にしやすい/試行錯誤が苦手/完璧を求めやすい/不安を抱えたまま行動する/休むことに罪悪感がある など
親がしてくれたことは、当時必要なものであった可能性が高いものです。同時に、その環境だからこそ生じたデメリットも確かに存在します。
それらを並べて確認することで、親の言動は「良い・悪い」という評価から離れ、1つの条件として整理されていきます。
次では、親のネガティブだと感じていた言動と同じ構造を、自分自身が再生していた場面を見ていきます。
親の言動と同じ言動をしている事実を見る
親の言動が、あなたのその後の人生にどのような影響を残していたかを見てきました。
今回はさらに一段階踏み込みます。
親のネガティブだと感じていた言動と同じ構造の言動を、自分自身も誰かに対して行っていた場面を拾い出します。
良い・悪いのジャッジをせずに、ただ事実だけを確認しましょう。
親との無意識の関係
親の言動に強い感情が残っている場合、その構造は無意識のうちに繰り返されやすくなります。
「自分は親のようにはならない」
「同じことはしない」
「あんなふうにはなりたくない」
そう思っているかどうかは関係なく、人は一度身についた反応の型を立場や相手を変えて再生します。
それは、性格の問題でも、意志の弱さでもありません。慣れた反応を使っているだけです。
かたちは違っても、構造は同じ
親の言動から得た体験と言葉や立場は変わっても、自分が相手に与えている体験は似ていることがあります。
否定されたと感じていた
→自分も、相手の話を遮っていた
不安を煽あおられていた
→自分も、心配という形で制限していた
評価されなかった
→自分も、結果だけを見ていた
この一致に気づくと、親に対して抱いていた感情の一部が自然とほどけていきます。
今日は具体的に書く
今日のワークでは、「性格」「傾向」「クセ」といった抽象的な表現では書きません。
必ず、次の4つを具体的に書きます。
いつ
どこで
誰に対して
どんな言葉・態度を取ったか
実際に起きた場面を思い出しながら、「たぶんこういうことをしていたと思う」ではなく、「あの場面で、確かにそうしていた」と思い出せるかたちで書いてください。
親のネガティブな言動と同じ構造を、自分が再生していた場面を書くワーク
(0)1分・ズボラ瞑想
目を閉じ、鼻呼吸を行います。
(1)親の言動を書く
親のネガティブだと感じていた言動を1つ思い出し、具体的に書きます。
(2)自分の言動を書く(20個)
それと同じ構造を、自分が誰かに対して行っていた実際の場面を20個書き出します。
20個書き出すと、親と自分を完全に分けて見ていた境界が少し曖昧になります。親だけが特別だったわけではなく、自分も同じ構造の中で反応していたことが理解できるでしょう。
評価が弱まることで、反応も弱まります。それが、このワークの目的です。