にごった液は物が溶けている?
片栗粉の小さな粒はだんだん沈み、2、3日もすると、コップの水はきれいに透き通って見えるようになります。ためしに上ずみの水をスプーンにとって熱して水を蒸発させると、スプーンにはなにも残りません。片栗粉を混ぜてかき回した水は、にごっているだけで溶液ではなかったのです。
胃のレントゲン検査のときに飲む「バリウム」も白くにごっています。「バリウム」には硫酸バリウムという物質の粉末が液に散らばらせてあります。しかし、この「白いにごり」の状態は水に溶けていません。
「バリウム」が溶けた水溶液を摂取すると、小腸で体内に吸収されてしまいます。「バリウム」が吸収されると毒性を発揮します。しかし、硫酸バリウムは水に溶けない物質なので、体内で吸収されずに排泄されるのです。
ただし、「バリウム」には飲みやすいように味がついています。その味となっている物質は水に溶けているでしょう。
つまり、水の中ににごりや沈殿があったら、そのにごりや沈殿は水に溶けていないのです。溶けている物質はとても小さな分子やイオンでばらばらになっており、にごりや沈殿の粒は膨大な数の分子やイオンの集まりなのです。
コーヒーや牛乳は水溶液?
砂糖を水に溶かしたとき、溶液は完全に透明になります。それに対して、デンプンを温水に溶かしたときや少量の粘土を水に入れてかき回したときは、しばらく放置しても少しにごっていて完全な透明にはなりません。「どこも一様な濃さになった混合物である」という点では溶液といっていいでしょう。
しかし、デンプン溶液などには、砂糖水溶液とは違った性質が見られます。例えば、砂糖水溶液とデンプン溶液に、レーザー・ポインターでレーザー光線のような光を当てて横から見ると、砂糖水溶液では何も見えませんが、デンプン溶液では光の通路がくっきり見えます。この現象を「チンダル現象」といいます。
砂糖水や食塩水では、水の中に砂糖分子などが散らばっていて、溶質粒子が非常に小さいのに対して、デンプン溶液では、砂糖水溶液の溶質粒子よりもずっと大きい粒子が散らばっていて、それが光を散乱するからです。
デンプン溶液などのチンダル現象を示す溶液に散らばっている粒子のことをコロイド粒子といいます。それに対し、砂糖水や食塩水を真溶液ということがあります。
溶けて透明になる普通の溶液の溶質粒子1個には、せいぜい多くても1000個の原子が含まれますが、コロイド粒子1個には、原子が1000個~10億個含まれています。デンプン溶液のように、コロイド粒子が分散している溶液をコロイド溶液といいます。
自然界や身の回りには、コロイド溶液がたくさんあります。生物の体液、にごった河川水、石けん水、牛乳、墨汁、コーヒー、ジュースなどです。これらはコロイド粒子だけでなく普通の分子なども混ざり合っていて、真溶液とコロイド溶液の両方を含んでいます。
石けん水は、濃度が低いときは真溶液で、濃度が上がると分子が寄り集まってミセルという分子集団をつくります。このミセルはコロイド粒子の大きさなので、コロイド溶液になります。
コロイド粒子が密集したり網目状につながって、そのすきまに水を含んで、流れる性質を失い固体のようになっているものもあります。これをゲルといいます。豆腐、ゼリー、寒天、こんにゃくなどです。