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採用は「相思相愛」~人材が集まる企業の成功法則

平田未緒(働き方研究所代表取締役)

2014年01月23日 公開 2024年12月16日 更新

《PHPビジネス新書『なぜあの会社には使える人材が集まるのか』より》

 

採用とは何か

 採用とは何でしょうか。

 それは、企業が業務を円滑に行い、永続的に成長・発展していくために、自社の仕事を行う人を、雇い入れる活動です。

 採用は、企業にとって、大変に重要な仕事です。新卒採用に、各企業がこれだけ力を入れるのも、それが極めて大切だと、認識されているからです。

 あらゆる仕事は、誰にそれを任せるかで、成果に大きな差が出ます。組織で仕事をする場合、チームワークも重要です。部下と上司といったメンバー同士の組み合わせ、また既存の組織なら新たにどんな人が入るかによっても、仕事の成果は違うでしょう。

 人を雇い入れれば、当然人件費が発生します。採用は、その人を雇用することで、自社商品の付加価値を高め、その人件費以上に売上をあげ、利益を得ることを目的とした、投資でもあります。

 採用するのが無期雇用契約の正社員であれば、その投資は退職しない限り、65歳以上まで続きます。新卒なら40年以上も継続するかもしれません。

 一方、パート・アルバイト、契約社員など有期雇用契約の社員でも、有期だからといって、これを安易に考えるべきではないでしょう。担当する業務が正社員に比べて限定的でも、その働きぶりは生産性に直結します。たとえば接客・サービス職など、パート・アル

バイトがお客さまに接し働く場合、彼らの一挙一動が売上を左右します。その場の売上だけではありません。そのお客さまが、リピート客になるか、二度と来なくなってしまうかにも、大きな影響を及ぼします。

 このように、極めて重要な「採用」に、いま、困っている企業が増えています。

 「採用したいのに、応募がない」「面接しても、『この人!』と思えるよい人材がいない」など、採用そのものができない悩み。そして、「採用してみたら、期待していた人材と違った」など採用後の働きぶり、あるいは「せっかく採用したのに、すぐ辞めてしまう」など、定着に関する悩みも、大変によく聞きます。

 これは、企業規模によりません。また、新卒正社員、中途採用正社員、契約社員、パート・アルバイトなど雇用形態を問わず生じている、というのが実状です。

 「なんでうちには使える人材が来ないんだ1」と異口同音に言われるのです。

 では、いったい、どうすればよいのでしょうか。

 私は、求人広告企業に17年間在籍し、採用の現場を見続けてきました。同時に、その求人広告企業所属の研究所が発行する、月刊・隔週刊の人事マネジメント情報誌の記者および編集長として、企業が実際に行っている採用・定着・戦力化のための各種施策や工夫について、取材し執筆してきました。

 さらに、これと並行して、企業に雇用されて働く社員側にも、個人インタビュー取材を続けてきました。個人に対しては、「なぜ、その企業を志望し、入社し、働き続けているのか」「前職を辞めた理由は何なのか」などを、じっくりと聞いています。

 こうした経験を通じ、強く感じ続けてきたこと、それは、採用・定着・戦力化に成功している企業と、そうでない企業には、明確な違いがあるということです。成功している企業には、業種や業態、企業規模のいかんを超えた、共通点があったのです。

 共通しているのは、人に関する考え方です。成功している企業では、雇う側の企業と働く側の社員との「相思相愛」を常に意識し、これを実現するためのさまざまな取り組みを、地道に実施していました。

 「相思相愛?」「なんだそれ?」と、思われたかもしれません。実際、ビジネスではほとんど使われることのない言葉でしょう。

 相思相愛とは、雇う側が「この人に働いてほしい」と思い、一方働く側も「ここで働きたい」「働き続けたい」と思っている状況です。こうした状況がつくり出せているところでは、採用がうまくいき、定着もしているのです。結果、企業業績も伸びています。もちろん、仕事に甘い「なあなあ」の関係ではありません。雇う側は、自社が望むレベルを働く側にきちんと求め、そのための教育や処遇をしていきます。

 「そんなこと、当たり前じゃないか」と、思われたでしょうか。でも、“当たり前”なことほど、徹底することは難しいと言います。たとえば職場のあいさつ1つとっても、全員が常に気持ちよく自ら率先してできている、と、胸を張って言える企業は、少ないのではないかと思います。

 「相思相愛」の効能は、実際自らも体験し、検証もしています。

 前述したように私は、長年人事マネジメント情報誌の編集長を務めてきました。この間「相思相愛」を意識して実践し、情報誌のクオリティを決めるポイントこそ、制作にかかわる全スタッフとの「相思相愛」の関係であることを、実感してきたのです。

 直接雇用のメンバーだけではありません。「相思相愛」の効能は、誰とでも同じことが言えました。著者の先生など執筆者、ライター、デザイナー、イラストレーター、DTPオベレーター、校正・校閲スタッフから、印刷会社や制作会社のスタッフに至るまで、「相思相愛」の関係は、高い成果の源でした。成果とは、読者からの反響です。相思相愛を実感するようになってから、リアルな意見や感想が、目に見えて多く寄せられるようになりました。

 ポイントは、求めるものを、キチっと伝えていくこと。その上で「この仕事は、あなたにお願いしたい」気持ちを、隠さずストレートに表現します。終了後、「お願いできてよかった」と思えば、その気持ち、敬愛の念も、そのまま素直に届けます。

 後に、研究所の所長となり、東京と大阪の2拠点を見る立場となって、「相思相愛」の関係づくりと仕事の成果との関係は、ますます強く、実感・確信できました。

 「相思相愛」の関係づくりは、仕事を誰に依頼するかという人選、直接雇用なら採用のときから始まります。

 そこで本書では、この「相思相愛」の考え方を、人材の採用・定着に焦点を合わせて、お伝えします。また、「相思相愛」を実現させ、採用・定着に成功するための、具体的なノウハウもご紹介します。

 「相思相愛」の考え方は、採用する相手の雇用形態や、年齢などに関わらず、同じです。自社で働く人は、1人残らず、自社を支えてくれる人だからです。そのすべての人と「相思相愛」になることが重要です。

 採用は、「相思相愛」になるために行うのです。

 一方、「相思相愛」を実現するための具体的ノウハウは、採用する相手によって異なります。たとえば新卒正社員・中途正社員と、パート・アルバイトなど有期契約社員とでは、留意点が違います。これについては、必要に応じて、雇用形態別に書きました。

 本書に記した「相思相愛」の考え方とノウハウにより、多くの職場でより良い採用ができること。そのことによって、幸せな「働く現場」が、1つでも増えていくことを願っています。

<書籍紹介>

なぜあの会社には使える人材が集まるのか
失敗しない採用の法則

平田未緒著

なぜあの会社は優秀な新人を採用できるのか――。優良企業だけが知る、募集広告、メディア選択、応募受付と面接方法の秘訣を大公開!

<著者紹介>

平田未緒

(ひらた・みお)

株式会社働きかた研究所代表取締役。早稲田大学卒業後、情報誌記者・編集者として勤務。その後、求人広告企業・株式会社アイデムに入社、同社の人と仕事研究所にて人事マネジメント情報誌3誌の編集長を歴任する。この間、CS、ES、人事制度、マネジメント、能力開発、パート・アルバイトの戦力化などをテーマに、数多くの企業ならびに働く個人を取材。雇用に関する現場情報に詳しい。2009年、同研究所所長に就任。2013年、同職を辞し、「企業に対するパート・アルバイトの活用支援」事業にて独立。

著書に 『パートのやる気を120%活かす法』(ダイヤモンド社)、『パート・アルバイトの活かし方・育て方~「相思相愛」を実現する10ステップマネジメント~』(PHP研究所)などがある。

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