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考える技術~自分のアタマで考え出すと成果も上がる!

小川仁志(哲学者/山口大学教授)

2014年04月08日 公開 2024年12月16日 更新

PHP文庫『自分のアタマで「深く考える」技術』より

今こそ自分のアタマを使おう!

 何をするにもインターネットの時代です。何しろ無数の情報が瞬時に手に入るわけですから、重宝されるのもよくわかります。おかげで、現代社会は常態的に情報の洪水被害に苛まれるようになってしまいました。

 そうなってくると、もはや自分で情報の取捨選択もできないので、人が勧める意見を鵜呑みにせざるを得なくなります。

 さらに厄介なのは、そうした瞬時に手に入る意見を、何も考えずに自分の意見として採用してしまうようになる点です。人間は楽なほう、楽なほうへと流れていきますから。

 ここでの弊害は、そのうち自分のアタマでものを考えることができなくなってしまうということです。人間としてこんなに危険なことはありません。本来人間と動物、あるいは機械を区別していたのは、自分のアタマで考えるという能力の有無です。

 ですから、それができなくなるということは、人間であること自体に黄信号がともるわけです。実際、ロボットやコンピューターが、従来人間の担っていた仕事までやれるようになってきたため、その危険は現実のものになりつつあります。皮肉なことに、将来はむしろ人間が「機械的な」仕事をやるはめになるかもしれないのです。

 かくいう私も、哲学を学ぶまでは、それほどアタマを使うほうではありませんでした。受験勉強の弊害で、アタマを使うイコール暗記をすることだと思っていたくらいですから。

 最初に勤めた商社でも、その次に勤めた市役所でも、とにかく仕事ができなかったのは、アタマを使っていなかったからだと思います。上司からもよく「自分のアタマで考えろ」と叱られたものです。

 それが、物事の本質を探究する学問である哲学を学び始めてからは、ガラッと変わりました。

 やはり自分のアタマで考え出すと、成果も上がるものです。今ではメディアで発言したり、毎年たくさんの本を出したりと、哲学者としてさまざまな領域で活躍できるようになりました。

 だからぜひ皆さんにも、自分のアタマで深く考えることをお勧めしたいと思います。

 とはいえ、自分のアタマで考えるって、それこそ「どうやって?」と思われる方も多いはず。かつての私かそうであったように。

 そこで、私が実際に使っている哲学的思考法の数々をご紹介したいと思います。

 こうした思考法をノウハウとして知り、技術として活用することで、今までよりも物事を深く考えることができるようになるのです。

 この「深く」という言葉の意味は、単に深いだけでなく、多角的にとらえ、かつ深く探求することを含意しています。インターネットによる広く浅い思考が全盛の時代だからこそ、自分のアタマを使った多角的で深い思考が求められるのです。

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