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「ソーシャルビジネスやりたいっす!」 という君へ

駒崎弘樹 《社会起業家、NPO法人フローレンス代表》

2015年12月30日 公開 2015年12月30日 更新

沈みかけている「日本丸」という大型船

いま日本では、徐々にこれまでの仕組みが壊死し始めてきている。ところが、多くの日本人はそれに気づかず、ひたすら文句だけを言い続ける。

この状態を僕はしばしば、沈没した巨大客船「タイタニック」にたとえる。氷山にぶつかり、大勢の乗客を乗せたまま、ゆっくりと沈没していったタイタニック。いまの日本の状況は、それに似ている。

巨大な「日本丸」は、ところどころに穴が開いている。いま、そこから水がどんどん入ってきている。このまま放置したら、確実に沈む。

ところが、多くの乗客たちは「船長、何やってんだよ」「早くなんとかしてくれよ」と、寝そべりながらやいのやいの言っているだけ。

でも、これっておかしくないだろうか。船長に「あれをやれ、これもやれ」と言うだけでなく、板を持ってきてさっさと穴をふさいだほうが、生き残れる確率は高くなる。

子育て支援にしろ、貧困問題にしろ、高齢者介護の問題にしろ、行政の手が回らない部分については、そこに課題があることを大声で叫びつつ、とりあえず自分たちで手を動かして穴を埋める。でなければ、我々は沈むだろう。ゆっくりと。

いまの日本にとって、「お役所任せ」から脱し、一人ひとりが、もっと社会に参加して、行動する世の中にしていくことは急務だ。それは「行政はもう要らない」と見切りをつけようということではない。「社会を支える」という仕事を政治や行政だけに任せるのをやめ、僕たち一人ひとりも社会を支える、いってみれば「公共」の一員となる、という覚悟が必要だ、と僕はいま声を大きくして言いたいのだ。

 

NPOやソーシャルビジネスが、社会参加の受け皿となる

そうした、人々の社会への参加や、新たに「公共」をつくっていくための、受け皿のひとつとなり得るのが、NPOであり、何らかの「仕事」によって社会課題を解決するソーシャルビジネスであると僕は考えている。

例えば、「最近、道に落ちているゴミが気になる」と思い、「よし、地域のゴミ拾いをしよう!」と思いたったとする。これをひとりで黙々とやろうとすれば、じつはかなりの意志力がいる。一方、ゴミ拾いのNPOに参加して、週1回なり活動していると、これが案外続いたりする。

NPOは、これまで「社会参加っていっても難しいでしょう」と言ってきた人たちにとっての「入り口」となり得るのだ。

さて、そのとき、NPOに飛び込んできた人たちに、NPOでの仕事はエキサイティングで刺激的で、なんといっても「社会に役立っている」という実感が得られるものだ、と思ってもらえるか。

NPOの世界に新しく入ってくる人たちに、そう思ってもらえるような環境をつくるのが、彼らよりちょっとだけ長くNPOで経験を積んだ僕らの役目だろうと感じている。

そして、この分野は日本ではまだまだ新しいゆえに、ビジネスとしてきちんと成り立たせ、持続可能な経営を続けていくノウハウがまだあまり蓄積されていない。

だからこそ、僕がフローレンスをスタートさせ、10年以上続けてきた経験を、出し惜しみなくみなさんと共有していきたい。

僕の経験が少しでもNPOをたちあげたい、あるいは、社会起業を志したいという人たちの役に立ち、さらには彼らが社会を支え、と同時に社会を次のステージへと導く「ソーシャル・イノベーション」の源となってほしい。

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「ソーシャルビジネスやりたいけど、何を解決したいか分からないっす!」という君へ

著者紹介

駒崎弘樹(こまざき・ひろき)

社会起業家、NPO法人フローレンス代表

1979年生まれ。認定NPO法人フローレンス代表理事、(財)日本病児保育協会理事長、NPO法
人全国小規模保育協議会理事長の他、全国医療的ケア児者支援協議会事務局長。慶應大学
総合政策学部卒業後、2004年NPO法人フローレンスを設立。日本初の「共済型・訪問型病児保
育」サービスを首都圏で開始。10年、待機児童問題解決のため「おうち保育園」を創設。後に「小
規模認可保育所」として国策に採用。14年、日本初の障害児専門保育所「障害児保育園ヘレン」
を創設。07年ニューズウィーク「世界を変える社会起業家100人」に選出。10年より内閣府政策調査員、厚労省イクメンプロジェクト推進委員会座長等を歴任。著書に『「社会を変える」を仕事にする 社会起業家という生き方』(英治出版)、『働き方革命』(ちくま新書)等多数。

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