たったひとつの朝の習慣で、仕事の効率が大きく変わる
2016年04月11日 公開 2022年06月06日 更新
PHP文庫『「朝30分」を変えなさい』より
「作業興奮」をいきなり獲得する法
さあ、朝のあなたの机の上です。
そこは、どんな状態でしょうか。
チリひとつないほど、きれいに片づいているでしょうか。それとも、昨日の作業が途中のまま、乱雑に散らかっている状態ですか。
いったい「朝30分」を生かすためには、どちらが望ましいのでしょうか。
意外かもしれませんが、実は、どちらもダメなのです。
では、正解は?
朝いちばんでかかるべき仕事が、机の上に用意されていること。
ここで反論があるかもしれません。「べつに、いったん机に向かってから取り出してもいいじゃないか。10分とかかるわけでもないし……」
でも、違うのです。朝はとくに、仕事を始めるまでに、ワンクッションおいてはいけません。
机に座ったら、何はともあれ、仕事を始められる。この状態が大切なのです。
人が仕事を先延ばししたり、怠けたりするのは、仕事を始める前に「考える時間」があるからです。この間(といっても瞬間に近いのですが)に、人はいろいろなことを考えます。
「この仕事やりたくないな」とか「いや、もっと重要なことがあるぞ」とか。これらのほとんどは、その仕事をやらないための理由づけです。
その点、机の前に座ったときに、すでに仕事のお膳立てができていれば、好むと好まざるとにかかわらず、やらざるをえません。
そして、大切なことは、いったん始めると、脳の中に化学変化が起きるということです。
脳科学では、それを「作業興奮」といいます。
「作業興奮」とは、どんな種類の仕事であれ、作業をし始めると、脳の中に一種の興奮状態が起き、その仕事をするために脳が活発に働き始めるということです。
最近は、この働きと重要性が、広い範囲で確認されています。
たとえば、この「作業興奮」は、運動の世界にもあります。
『仕事ができる人はなぜ筋トレをするのか』(幻冬舎新書)の著書があるパーソナルフィットネストレーナーの山本ケイイチさんは、ある雑誌でご自身の体験をこう披露しています。
「私にも“今日はどうしても気分が乗らない”というときはあります。でも、その気持ちを脇において、トレーニングを始めてしまうのです。すると、やっているうちに、いやな気持ちはどこかにいってしまいます。これには、理由があって、運動をして心拍数が高まってくると、交感神経の働きが活性化し、自分に対してポジティブになれるのです」
「うーん、なるほど」と、うなずく方が多いのではないでしょうか。
わたしも、まさにその一人です。
わたしの唯一のシェイプアップ術は、事務所兼住まいのある東京の杉並区松庵から、30分ほど先の吉祥寺の駅まで歩くことです。しかし、仕事に疲れていたり、前夜不覚にも飲みすぎたときは、どうにもこうにも、歩きたくないときがあります。
しかし、そんなときでも、とにかく足を一歩、吉祥寺方面へ向けて踏み出すのです。
すると、300メートル、500メートルと歩いているうちに、気分がいつしかポジティブになってくるのです。
机の上の段取りなんて、ふつうは見過ごしかねません。あとから用意しても10分とかからない……。
しかし、それでは、せっかくの作業興奮の機会を逃してしまいます。実に小さな準備行為、そこにも能率を支配する大きな要因が潜んでいるのです。
机の上に、仕事始めの材料を置いて帰社する(寝る)――これが究極の段取り術です。
著者紹介 高島徹治(たかしま・てつじ)
週刊誌記者、編集プロダクション社長等を経て、現在は合格資格数91を誇る資格コンサルタント。講演、執筆、新聞等への寄稿やテレビ出演など、幅広く活動している。主な著書に『「寝る前30分」を変えなさい』(PHP文庫)、『もっと効率的に勉強する技術!』(すばる舎)、『すごい「勉強法」』(知的生きかた文庫)などがある。