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松下幸之助創業者に学んだこと~中村邦夫・パナソニック元社長

マネジメント誌『衆知』

2017年01月11日 公開 2022年11月30日 更新

 

創業者の楽しんで仕事をする姿勢に学ぶ

幸之助創業者は和歌山に生まれましたが、幼くして大阪に出て、火鉢屋から自転車屋へ、そして電灯会社で働き、独立して大阪市北区(現在は福島区)大開町で松下電気器具製作所を創業されました。困難の連続だったはずですが、なぜか創業者から「苦労」という言葉は出てきません。

配線工をしていた時代、夏の暑い日に、お寺の天井裏で配電の仕事があった時でも「暑いなあ、苦しいなあ」ではなく、「熱中して仕事をしよう」という考え方が創業者からは出てくるのです。

独立してからも苦労は続き、年を越せるかどうかさえわからない窮境にあった1917(大正6)年の年末、扇風機の碍盤の注文が入り、道がひらけます。でもその前段階で、製造に取り組んだものの、売れないソケットを、あきらめずに何軒も売り歩いていました。その中の問屋が川北電気に松下を紹介してくれて、発注をもらうことができた。「絶対に成功する」という希望に燃えて、懸命に汗をかいていたからこそ、運が飛び込んできたのでしょう。

ですから私たち凡人も、嫌な思いをしても、苦労しているなどと思わず、積極的にその仕事に取り組んでみる。そうしたら、お互いの人生が少しは明るくなるのではないかと思うのです。

とはいえ、そういう私も社長・会長時代は、自分なりに一生懸命にやりましたが、創業者のように、明るい笑顔でいることはなかなかできませんでした。業績が悪い時は特にね。

それにしても、創業者はどうして、どんな場面でも苦労と思うことなく、前向きに仕事をすることができたのでしょうか。それはやはり、子供の頃から培われたものだったと思います。同時に、少年時代から松下家の後継ぎとして「成功する義務がある」と思われていたからではないかと私は考えています。松下家の跡取りは自分しかいないのだ、だから成功するのだ、という使命感を非常に強く持っておられた。そこにわれわれ凡人との違いがあるように思えてならないのです。

中小企業の経営者には、幸之助創業者と同じような環境に身を置き、同じような思いで経営にあたっておられる方は多いのではないでしょうか。そうした方々が、幸之助創業者の行動や理念を参考にされたなら、きっとよい結果を得られるように思います。

 

※本記事はマネジメント誌『衆知』2016年11・12月号、創刊特別企画「幸之助さんの教えに学んだこと」より一部を抜粋編集したものです。

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