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「お願いが苦手な人」が「頼み上手」になるコツ

福田健(話し方研究所代表)

2011年10月25日 公開 2022年12月22日 更新

これは、話し方の「特別授業」です。授業は、講師と受講者との双方向のやり取りを通して進められます。受講者は次の4人――

・青山久美子(クミコさん)社会人になったばかり。生命保険会社の営業をしている。
・前田大輔(ダイスケさん)入社6年の29歳。旅行会社でクライアントに企画を提案する仕事を担当している。
・武田慎一(タケダ部長)45歳。中堅商社の広報部長。
・三浦志穂(シホさん)主婦から職場に復帰して1年。8年くらいのブランクがある。

本稿では、受講者それぞれが抱えている"コミュニケーションにおけるちょっとした悩み"を解決するための「話し方のコツ」を授業形式で紹介する。

※本稿は、福田健著『世界一役に立つ「話し方」の授業』より一部抜粋・編集したものです。

 

「頼み事は相手に迷惑をかける」は嘘

――みなさん、こんにちは。今回みなさんにお話ししようと思っているのは、「頼み上手になるコツ」についてです。

人に頼み事をするのが苦手という人は、結構多いですよね。そういう人は、本当は人に頼んだほうがいいことをついつい自分で背負い込んでしまいます。その結果、納期に間に合わなかったり、ムリをして体調を崩してしまうこともあります。

だから頼み下手の人は、一生懸命がんばっているし、他人に気を遣っているわりに、周りの人からはあまり評価されません。「頼み下手は、世渡り下手」なんです。みなさんの中に、頼むのが下手、苦手という人はいますか。

【ダイスケさん】僕、こう見えて結構頼み下手だと思います。口では「自分でやったほうが速いから」なんて言っていても、実は「こんな頼み事をすると、相手は嫌な気分になるんじゃないか」とか「それくらいのことは自分でやれと言われたらどうしよう」とが、そんなことが頭をよぎって人に頼れないところがあるんです。

――なるほど。頼み下手の人は「頼み事をすると、相手は嫌な気分になるんじゃないか」という意識が強いようですね。

頼み上手になるための第一歩は「頼み事は相手に迷惑をかける」という先入観を捨てることだと思います。人は必ずしも、頼み事をされて嫌な気分になるとは限りません。むしろうれしいときもあるものです。

「ほかの仕事は誰でもできるけれど、この部分を任せられるのはあなたしかいないんです。あなたにやってほしいんです」と言われたら、嫌な気分になるでしょうか?「自分は頼りにされているんだ」とうれしくなるはずです。

頼み事をするのが上手な人というのは、頼まれた相手が「よし、がんばるぞ」と喜んでしまうような頼み方ができる人です。頼んだ自分も楽になるし、相手も意気に感じてその物事に取り組んでくれる。「自分も得をするし、相手にも喜んでもらえる」という頼み方ができるわけです。

「頼み上手な人は、自分も得をするし、相手にも喜んでもらえる頼み方ができる」ここが今日最初のポイントです。

 

相手が喜ぶ頼み方とは

では、相手に喜んでもらえる頼み方をするには、どうすればいいのでしょうか。大きく2つのやり方があります。1つは、いまも述べたように、相手に「自分の力が必要とされているんだ」と感じてもらえるような頼み方をすることです。

「これをお願いできるのはあなたしかいません」
「この間題を解決できるのは誰かと考えたときに、真っ先にあなたのことが浮かびました」
「私のことを助けてください」

このようなひと言が殺し文句になります。もう1つは、その頼み事を引き受けるメリットを相手にきちんと提示することです。たとえば上司や先輩が若手に仕事を頼むときには、比較的単純作業が多いですよね。

若手社員は立場上、頼み事を引き受けざるを得ないわけですが、心の中では「俺だってほかにも仕事をたくさん抱えているのに、何でこんなつまんない仕事をやらなくちゃいけないんだよ」と不満いっぱいなものです。

みなさんも経験あると思います。けれども上司や先輩が若手に頼み事をするときに、こんなひと言を添えることができたら、若手の気持ちは大きく変わってくると思います。

「この仕事、単純作業ではあるんだけど、会社の業務の流れを把撞する上ではすごく勉強になるよ。俺も若い頃、この仕事に取り組むことで仕事の全体像をつかむことができたんだ。忙しいところ大変だろうけど、よろしく頼む」

一見つまらなく見える仕事ほど、その仕事に取り組むことのメリットを伝えることが大切になるのです。ただし「これを頼むのは、あなたのためでもあるのだから」といった恩着せがましい頼み方をすると、かえってマイナスになるので気をつけたほうがいいですね。

頼み事をするときには「誰にお願いするのか」という人選も大切になります。仕事の難易度や向き不向きなどを考えながら、「この人だったらやりがいを感じて取り組んでくれるのではないか」という人を選んで頼むことが、相手に心地よく引き受けてもらうためのカギとなるのです。

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「人の頼み方見て、我が頼み方直せ」

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