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生き方

命をかけて40万円は安いのか? 知られざる"フランス外人部隊"の待遇

野田力(フランス外人部隊パラシュート連隊・水陸両用中隊元隊員)

2018年10月01日 公開 2019年04月26日 更新

パラシュート連隊は監獄だ!

どこの連隊へ行きたいかの意思表示はできます。

カステルノダリでの基礎教育訓練は小隊単位で行われ、終盤には何度か小隊長との面談が組まれます。その際に希望が聞かれるので、そこで自分の意思を伝えます。

パラシュート連隊は精鋭部隊といえるので、人気と競争率は高くなります。

少なくとも最初のうちはそうです。私の周りでも、パラシュート連隊を希望する者は非常に多く、かなりの成績を残さなければ無理なのではないかと思っていました。ところが、途中から様相が変わってきました。

 簡単にいえば、「パラシュート連隊には行かないほうがいい」という声がしばしば聞かれるようになっていったのです。

私も直接、そういう声を聞きました。基礎教育訓練を受けているときに一緒になったフランス人がそう言っていたのです。彼は上官と揉めたことからフランス正規軍を辞めて、外人部隊に入ってきていました。フランス軍では特殊部隊にいたそうです。特殊部隊でもパラシュート降下を経験していたというのですから、当然、パラシュート連隊を希望するだろうと思っていました。それで確認してみると、「パラシュート連隊には行かない」と言うのです。理由を聞いてみると、「あそこはアルカトラズだ。監獄だ」という言い方をしました。

アルカトラズとは、脱獄不可能といわれた連邦刑務所があったアメリカの島です。アルカトラズを舞台にした映画はいくつかあります。比較的近年の作品としては、ニコラス・ケイジやショーン・コネリーが出演した『ザ・ロック』が有名です。私も観ていました。

元特殊部隊の彼がそう言っただけでなく、パラシュート連隊のあるコルシカ島はよくアルカトラズに喩えられるということはその後に知りました。他の連隊にくらべてそれだけ自由度が低いということです。

フランス本土の連隊に入れば、週末の休みや休暇の際などにパリに出かけるなど、フランスを楽しむこともできるのに、パラシュート連隊では休日を楽しむのが難しくなります。海に囲まれた島であるうえ、自由になる時間が少ないからです。限られた自由時間に許される行動も制限されます。監獄という表現は大げさだとしても、基礎教育訓練がさらにハードになりながら、駐屯地に閉じ込められているのに近いといえます。

『外人部隊125の真実』(著:合田洋樹/並木書房)では、フランスでの休日を楽しみたい人に対しては、第一外人工兵連隊や第二外人歩兵連隊が勧められています。

とくに第二外人歩兵連隊が駐屯するニームはフランス南部に位置するガール県の県庁所在地であり、円形劇場などでも知られる歴史ある都市です。駐屯地から駅までは車で十分ほどで行くことができ、駅から高速鉄道TGVを利用すればパリまで三時間ほどで行けます。

第一外人工兵連隊のあるロダンラルドワーズにしても、フランス南東部の都市アヴィニョンまで遠くなく、そこからTGVを利用できます。

このように交通の便がいいところに駐屯地があり、締め付けが厳しくない連隊であれば、週末なども楽しく過ごしやすくなります。実際に毎週末のようにパリに行ったり、フランス国内のさまざまなところを旅行して回っていた日本人の部隊兵もいました。電車に乗る際は軍人割引が使えるので、フランス国内を安く回れます。人生は一度しかないのですから、そうして楽しく生きるのもいいと思います。

五年という期間を訓練とレジャーでメリハリをつけて過ごすか、とにかく訓練に明け暮れることを覚悟するか……。どちらを選択するかが問われるところです。

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