<<外資大手コンサルティング会社で25年にわたり人事改革、人材開発を行ってきた松本利明氏。その間には、5万人ものリストラを担当し、一方で6千人のリーダーの育成も手がけた。人材の選抜のプロフェッショナルである。
その松本氏は『5秒で伝えるための頭の整理術』(宝島社刊)を上梓したが、そのなかで「話し方・伝え方の課題が現場マネジメントの課題の9割」と主張している。
話し方・伝え方の問題をどう解決するのか? 松本氏が同書で"自分の話を伝えるための話法"を様々紹介している。その一節を紹介する。>>
※本稿は松本利明 著『5秒で伝えるための頭の整理術』(宝島社刊)より一部抜粋・編集したものです
「これしかありません」は「他に何かあるだろう」の答えしか呼び込まない
「これでよろしいでしょうか?」ではなく「こうしましょう」と言えば提案は押し切れる
仕事でトラブルが発生した際には、複数の選択肢や打ち手を検討している暇はありません。効果が出て優先度が高い提案を通すことが先決です。
提案を押し切ろうとして「これしかありません」と言うのは三流です。言われた方は「確かにその通りかも」と感じていても、「これだけ」と聞くと「他に何かあるのではないのか?」という疑問がふつふつと頭に浮かぶからです。
トラブルの時は相手も不安です。ふつふつと浮かぶ相手の疑問をムゲにすると感情的に受け入れてもらえなくなります。
「他にも何かあるだろう」と言うのは簡単です。相手にその根拠がなくても、言われてしまったら、対応するしかなく、トラブルの本質的な課題の足かせになってしまいます。
「A案、B案がありまして。論点から検討した結果、こちらの方がいいです」と提案するのはセオリーですが二流です。これは緊急時には向いていません。相手は何より解決につながる答えから聞きたいからです。
お伺いを立てると、全体最適の提案も個人の主観にすり替えられてしまう
「これでよろしいでしょうか?」とお伺いをたてるのも二流です。
お伺いをたてると、相手はゼロベースで物事を考えます。人それぞれの役割や立場、性格の違いから主観(優先順・判断基準)は異なります。
せっかくあなたが全体最適で考えたストーリーも、その人の主観と論点にすり替えられ、ある意味、部分最適な指摘をされてしまいます。
当然他の部署の視点と論理とはかみ合わないところも出てくるでしょう。最悪の時は一人ひとりが思いつきでコロコロ言うことや判断を変えることもあるので恐怖です。
根回しを含め、トラブル時でも提案し、一度指摘を受けた点をなかったことにはできません。その指摘通りに提案を組み直した上で、再度その人に確認してもらうことになります。他部署と意見が違うからといって、前回の指摘はなかったことにはできないのです。
1案で押し切られるのは不安だから、複数案を出す暇があるなら速く解決してほしい。この矛盾を解くのはたった一言で可能です。