天使の9つの階級と「大天使に翼がある理由」
キリスト教の信者以外にとって、ガブリエルの地位を誤解する者は少なくないだろう。「大天使」という呼び名だから偉い天使なのかというと、実はそうではなく、下から二番目の地位にすぎない。
キリスト教の天使には階級制度があり、九つの階級に分けられている。上・中・下の三段階があって、さらにそれぞれ、上の上・上の中・上の下といったように細分化される。
これは仏教の九品仏や軍隊組織とも共通する。後者では、まず大将・中将・少将がいて、次に大佐・中佐・少佐、そして大尉・中尉・少尉となる。
天使では、まず、上位三隊に熾天使(してんし)・智天使(ちてんし)・座天使(ざてんし)、中位三隊には主天使(しゅてんし)・力天使(りきてんし)・能天使(のうてんし)、そして下位三隊に権天使(けんてんし)・大天使・天使がいる。要するに大天使は下の中にあたり、軍隊でいえば中尉といったところだろう。
なおキリスト教では、ガブリエルとともにミカエルとラファエルは三大天使と呼ばれ、崇敬されている。
ミカエルは戦いの天使である。アダムとエヴァを追放したのもミカエルであり、悪魔を相手に戦うこともある。ラファエルは子どもの守護聖者で、たとえばトビアスという子どもが旅する時に守ってくれた。
ガブリエルはお告げの天使である。背にふたつの翼を備える大天使は、神と人間を結ぶ役割を担になっている。
熾天使や智天使のような格の高い天使たちは絶たえず天上の神のそばにいて、地上に降りてくることはない。地上の人間とかかわり、人間に向けて神の意志の代行者を務めるのが大天使なのである。
つまり、大天使は人間と深いかかわりを持つため、人間の体に翼をつけた姿で表現されるのが通例である。
一方、セラフィムやケルビムは顔のみで体を持たない。マリアのもとにイエスの誕生を告げるため訪れたのが大天使ガブリエルだったのは、このような役割分担に基づいている。