若いリーダー層に任せて築く。「物件」ではなく「人」にフォーカスした不動産事業
2019年04月26日 公開
「リーダー会議」「誕生日カード」を通しての成長
――堀口社長は若いリーダー層に、思い切って任せることで育てている、と実感いたしました。意気に感じて頑張る皆さんの成長が楽しみです。
堀口 ただ、そうはいっても完全放任では人財育成になりませんから、リーダー層の成長を促す指導は、きちんとしています。わが社では、毎週月曜日に「リーダー会議」を開催しています。60人ほどのリーダー層の社員が集まり、それぞれの業績や、起きた出来事を確認し合うのです。
「じつは部下にこんな問題があって、こんな指導、言葉がけをしています」とか、「これから新たに事業をやるのですが、この点に悩んでいます」という感じで、発表そのものは1人3分ほどです。それに対して私は、「それはいい」「これ、違うぞ」などとコメントします。具体的な指示を出すというより、考え方や意識を向けるべきポイントについて、方向性をアドバイスする感じです。
リーマン・ショック前までは、リーダー層の人たちでも、私の意見を聞いてそのまま動くというケースが多かったと思います。しかしいまは皆が自ら考え、「社長、これでいいですか」と、確認をとるレベルになってきているので、嬉しいですね。
もちろん、不安を抱えた社員から「どうでしょう」と聞かれれば、「びしっ」と答えるときもありますが。
――ほかにされていることはありますか?
堀口 もう一つ、「誕生日カード」の作成ということを通して、リーダーの成長を促しています。創業以来20年近く、誕生日に合わせて、私が一人ひとりの社員に500~600字のメッセージを書いていたのですが、3年ほど前から、リーダーにも同じように考えてもらうようにしました。
それに際して、「褒めることが8割、残り2割は課題を指摘」とアドバイスをしたのですが、けっこう皆、四苦八苦しているようです。最終的には私が、リーダー層の皆が書いたメッセージも参考にしながら作成していますが、その内容から各リーダーの成長度合いもわかります。
リーダーに必要な資質として、「決断力が重要」とよく言われますが、その前に「観察力」がないとだめだと、私は思います。褒めたり、課題を指摘したりする上で、部下の行動や発想を細かく観察する必要があるのです。そのうえで、部下への声の掛け方や導き方を考え、実行することで、心を掴めるようになります。
――リーダーとして持たなければならない心構えや価値観と、一般社員の価値観や心構え、何か違いがあるのでしょうか?
堀口 「社員を守る」という私の姿を、代わりに体現する存在であって貰いたいです。わが社の経営理念の最初に出てくる「全従業員を守り」というメッセージを実感できるようになってほしい。そのためには、一般の社員に比べると、厳しく己を律せねばならなくなるでしょう。
また私自身もそうでしたが、「自分が成長しないと部下も成長しない」のです。リーダーは自分自身の姿をつねに顧みて、成長し続けなければなりません。
そもそもわが社は、「一生をかけてどれだけ多くの人に役立たせていただくことができたか」を価値として仕事を行っています。一般の社員のときには、仕事を通してお客様に喜んで頂くことが幸せというレベルでも構いません。
それがリーダーになると、お客様はもちろん、社会への貢献、部下や会社全体を幸せにしていくという意識を持ち、人にもっと役立とうと考えて、心を成長させる必要があるのです。
――どんどん人間性を磨き、徳を高めていかねばならないのですね。
堀口 いや、「ねばならない」ではなく、「こうしたい」「やりたい」という風になるよう、アドバイスしています。「だから、こうしなきゃならんのだぞ」と押し付けるのではなく、「こうしたいと思わないか」「それによって、もっといい世の中にならない?」と問いかけ、たきつけて、自発的に答えを導き出すようにしています。
わが社のリーダーには、内的動機で世の中を明るく照らせるような人間になってほしい、と考えているからです。