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医者や大企業の役員も…館山ダルク代表が明かす「薬物依存者」の“実際”

十枝晃太郎(館山ダルク代表)

2019年11月08日 公開 2024年12月16日 更新

薬物での事件が報道されるたびにその名が伝えられる「ダルク」。民間による薬物依存症リハビリ施設であり、Drug Addiction Rehabilitation Centerの頭文字を合わせた造語で、全国各地に約70箇所ほど存在している。

現在、千葉県の館山ダルクの代表を務める十枝晃太郎氏は、自身もかつて重度の薬物依存症に苦しんだ入所者の一人だった。現在では薬物を断つことに成功し、同団体で同じ境遇に苦しむ人たちのサポートを献身的に続けている。

そんな十枝氏が自らの体験を基に薬物依存者の実態と更生について赤裸々に記した著書『私は世界中から命を狙われていました』にて、家庭環境や社会的地位とは関係なく、誰もが中毒者・依存者になる可能性があることを指摘している。その一節をここで紹介する。

※本稿は十枝晃太郎著『私は世界中から命を狙われていました  館山ダルク代表が語る薬物中毒の真実』(インプレス刊)より一部抜粋・編集したものです。

 

薬物を止められる人、止められない人

薬物は「使用者、乱用者、中毒者、依存者」に分けられます。

そして、その区分けは使用した期間の長短は関係ありません。長く使用していても、自分の意思で止められる人は止められます。そういう人は「使用者」です。僕は最初から「中毒者・依存者」でした。

もし、タイムマシーンに乗って使った後の自分に「僕はお前の未来から来た自分だ。こんな惨めな人生を送ることになるぞ。今すぐ止めろ」と言う機会があっても、当時使用中の僕は止められなかったと断定できます。

どうせ行くなら初めて大麻を吸う前の自分のところです。ここならば説明し回避できたと思います。実際に他の「使用者」から「そんな使い方をしちゃダメだ」と説教されたりもしていたのです。

普通に社会生活を営みながら薬物を続ける使用者でいられる人と、人生を棒にするほど依存してしまう人。一概には言えませんが、その差には体質が大きく関わっていると思います。

薬物依存症の更生プログラムはヨーロッパやアメリカの方が進んでいるので、入所者の皆さんにはそれに習った接し方をしています。

その研修で教えてもらった話なのですが、使用してしまった人のだいたい6~8割の人は自力でなんとか止められるそうです。

しかし、2~4割の人は止められないのです。僕はその2~4割の中に入っているというわけです。今まで非常に多くの中毒者、依存者を見てきましたが、依存してしまうのはほぼ体質によるものと考えています。

家庭環境など外的な要員はあくまでも後付けでほとんど関係がないと思います。

僕の場合は母子家庭でグレて……とわかりやすいタイプですが、ダルクに来た人の中には大手企業のエリート社員や役員の人もいますし、お医者様や公務員などの立派な職業の人、外から見るとストレスの少なそうな幸せな家庭を持つ人もいます。

環境は関係なく、逆に言えばどんな能力のある人でもきっかけさえあれば中毒者・依存者になり得るのです。だからこそ、「最初の1回をやらない」ことが何よりも大事になるのです。

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罪悪感はなぜ生まれるのか

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