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生き方

「ずるい人」に利用されても“負けない対処法”

加藤諦三(早稲田大学名誉教授、元ハーヴァード大学ライシャワー研究所客員研究員)

2019年11月25日 公開 2024年12月16日 更新

<<つらく厳しい境遇でそのまま落ち込んでしまう人と乗り越えられる人。その差を分けると注目されている能力が「レジリエンス」。アメリカで論文が多数発表されるなど注目される心理学理論で、簡約すれば「人生の挫折に対処する能力」である。

早稲田大学名誉教授の加藤諦三氏によれば、挫折や落ち込みから立ち直り、ポジティブに生きられる人は共通してこの力をもっているという。そしてそのレジリエンスを理解する上で「プロアクティブ」と「リアクティブ」が重要であるという。

加藤諦三氏の新著『どんなことからも立ち直れる人』では、実例を通してレジリエンスを理解することで、「自ら幸せを得る力」を取り戻すことを目指している。

本稿では同書から、レジリエンスの高い人が不誠実な人=ずるい人にかかわってしまった時にどう対応するかに言及した一節を紹介する。>>

※本稿は加藤諦三著『どんなことからも立ち直れる人』(PHP新書)より一部抜粋・編集したものです。

 

怒っても事態は良くならない

不誠実な人とかかわってしまった。この世の中には不誠実な人は沢山いる。自分一人がそうした不誠実な人にかかわらないで生きていかれるものではない。

そして不誠実な人に上手く利用された。こちらが誠実に対応していれば、対応しているほど腹が立つ。

「適当に利用されたな」と分かる。「舐められて、お世辞を言われて、骨までしゃぶられた」と分かる。

怒るのはもちろんである。しかしそこで腹を立てて、毎日怒りで体調を壊して寝込んでも、事態は変わらない。

相手は不誠実な人から誠実な人に変わることは絶対にない。

選択肢は二つしかない。怒り心頭に発して、心臓病になったり、ストレスから癌になったり、そこまで行かなくても体調を崩したり、その怒りの間接的な表現で惨めさを誇示して、周りの人からいやがられたり、結果として孤独になったり、何よりも残りの人生を無駄にする。

そうすると「ああ、あそこであのような言動をしなければ、事態はここまで深刻にならなかった」ということが分かるかもしれない。

あの時にあの不誠実な人に、「ああ、この人はこういう人だったか」と冷静に対応していれば、被害は最小限に食い止められていたかもしれない。

それを頭に血が上って怒りをぶつけてしまった。それはなんの事態の改善にもつながらないで、事態を悪化させただけであったと分かる。

この体験は、その人に冷静な対応の必要性を教えている。

人は騙された時に、怒りがこみ上げる。そしてその怒りに支配されて、事態を悪化させる。

目上の人にいくら「冷静な対応が必要だ」と教わっても、身につかない。やはり自分が痛い目に遭って初めて、「ああ、冷静な対応が必要なのだな」と理解できる。

しかしその被害から学ばない人は、怒りでどんどん事態を悪化させていく。それがリアクティブ(解決する意志がない)な態度ということである。

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著者紹介

加藤諦三(かとう・たいぞう)

早稲田大学名誉教授、元ハーヴァード大学ライシャワー研究所客員研究員

1938年、東京生まれ。東京大学教養学部教養学科を経て、同大学院社会学研究科修士課程を修了。1973年以来、度々、ハーヴァード大学研究員を務める。現在、早稲田大学名誉教授、日本精神衛生学会顧問、ニッポン放送系列ラジオ番組「テレフォン人生相談」は半世紀ものあいだレギュラーパーソナリティを務める。

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