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仕事

遅刻厳禁だった昭和企業は、どうやって自由な働き方に変わったのか

青野慶久(サイボウズ代表取締役)

2019年11月29日 公開 2022年08月09日 更新

 

金曜夕方5時に仕事を振ってくるクライアントとどう付き合うか


サイボウズのイベント「Cybozu Days」は東京、名古屋、大阪にて開催される。(東京、名古屋は終了、大阪は12/5~6開催)

【大岩】例えば「この部署のマネジャーが反対しているから働き方の変革が進んでいない」ですとか、そういう情報はどのように入手して現状を把握されたんでしょうか。

【青野】サイボウズの場合はグループウェアがありますから、それで情報共有ができるというのもありますし、後は実際に現場が悩んでいたりするんですよね。

例えば営業部がお付き合いのある、大口のVIPのお客さんがいる。そのお客さんが、例えば金曜日の夕方5時に「今日中に見積もりを出してほしい」と言ってきた時に、対応しようと思ったら絶対に残業しないといけないわけです。

そういうことで現場が悩んでいるという情報をつかんだら、「もうその対応は来週に回していいよ」と言う。もし来週に回したことでVIPのお客さんが離れていくんだったら、それはもう仕方がないんじゃないかと。

僕たちが犠牲になってまでやるのは、本末転倒です。まさに「会社は誰のために作ったんだっけ?」ということになりますよね。今年のCybozu Daysのテーマは『モンスターへの挑戦状』ですが、社員を犠牲にしてまで売り上げを上げていくのは、「会社というモンスター」に支配されているようなものです。

だから、目先の売り上げを失ってでもいいから、僕たちがやりたい働き方をやろう、ちゃんとそれをお客さんに説明しなさいと。そういうことを言いました。

そうすると、判断基準ができますよね。現場が困っているのは、2つの対立する事項のどちらを優先させようかということですから、「こっち(社員の幸せ)を優先しよう」と宣言する。この価値観の入れ替えをしていくのが、やはりトップの仕事だと思います。

【大岩】これは多少性善説に基づいた話になるんですが、意外とその相手のクライアントさんも、そう言われたことで「あ、この要望は無理難題だったな。この依頼の仕方は今の時代NGだった」と気づくかもしれないですよね。

【青野】そうなんですよ。それを無理して受けちゃうから先方も「あそこは何を言っても対応してくれる」と思ってしまうわけですよね。むしろ実はクライアント側の担当者も、断ってくれた方が嬉しいかもしれない(笑)。

「すみません、サイボウズがあんなこと言ってるんで来週になっちゃいます。サイボウズが悪いんで…」って、そしたら自分も残業せずに帰れるじゃないですか。

あと僕はよく言っているんですが、そういう無理難題をふっかけてくるお客さんは、もう去ってくれたらいいんだと。無理難題を言うお客さんがライバル会社のほうに行ってくれたら、その人がライバル会社を苦しめてくれるじゃないか、と。まあ半分笑い話なんですが。

ただやはりどちらかと言うと、今大岩さんがおっしゃったように、お客さんもそういう対応を待っている感じはしますね。それこそ「思い込み=モンスター」の話に戻りますが、「断ったらクライアントさんが逃げてしまう」というのは、僕らの思い込みに過ぎないと思います。

 

モンスターと戦うための「3種の神器」

【青野】ちなみに『会社というモンスターが、僕たちを不幸にしているのかもしれない。』の本を編集されていかがでしたか? モンスターと戦うためには、何が必要なのでしょうか?

【大岩】モンスターと戦うためには「1、力をつける 2、言葉にする 3、仲間を作る」という「3種の神器」が大切なのではないかと感じました。1つめの「力をつける」というのは、会社にとって役立つ人材になるということです。ある意味シビアなんですが、やはり会社に役立つ人でないと話を聞いてもらえないと思うので。

2つめの「言葉にする」。実は私はこれが一番大切だと思っています。例えばこういう働き方ができたらいいのにと心の中で思っていても、口に出して言わないと会社側は分からない。ただ、言語化するプロセスは結構大変ですし、慣れていないと難しかったりもすると思います。

そんな時に、サイボウズの存在はすごくありがたいんですね。「100人いれば100通りの働き方」「質問責任」など、サイボウズで言語化されてきた言葉がたくさんある。実際に、これからの働き方という話の際に、サイボウズの例を出すと理解を示してもらえることも多いです。

【青野】それは嬉しいですね。ありがとうございます。

【大岩】3つめの「仲間を作る」に関しては、不思議なもので言葉にしていくと自然にできてくるものだと思います。ですから、今後もサイボウズの働き方や組織のあり方をウォッチして、周りに伝えていければと思っています。本日はありがとうございました。

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